動物農場 (角川文庫) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • なんとも、もうしわけございません。
    (最初からそう思ってしまいました)

    (どうぶつたちが)最初に掲げた目ざすところはとてもよかった。
    でも、そのなかから権力者が生まれ、力を握ってしまう。

    動物も人間と同じエゴの塊になってしまうという風刺。
    視点が斬新であって、面白い。

    リボンをつけたい(マスクをつける、と重なってしまった)と思う心理は洗脳。
    馬が病気になり、農場外の病院で治療することになった。
    乗せられた馬車の側面には「廃馬屠殺・にかわ製造業者。皮革、骨紛商」。
    「あの箱馬車は以前には榛葉屠殺業者の持ち物だった、それを獣医が買い取ったが、この獣医は古い名をまだ塗り消していなかった」
    と、指導者である豚はいう。まったく今の自民党と変わらない。糞(=うんこ)みたいないいわけだ。
    少しずつ動物たち(下級労働者)の労働時間が増え、配給が減っていく。引退年齢を定めたものの、それを迎えても誰も引退せず労働し続けることがあたりまえ(美徳)とされる(引退を楽しみにしていたのにね)。だれも文句を言わない。
    動物たちは奴隷のように働いた。)
    ふと見ると住宅では権力者がビールを飲んで宴会している。
    社会保険料の負担が増え、年金納付期間が延びる中、政治家たちはのうのうと宴会、私腹を肥やしている。何も変わらないではないか。

    つぎつぎと見え透いた嘘をいい(報道し)、庶民はいつまでも、そしてこれからも働かされることになってしまうのだ。(今も昔も、なんもかわらんっ、というかもっと悪くなってる)

    +++

    第一章
    6ページ · 位置No. 71
    人間 は 生産 せ ず し て 消費 する 唯一 の 動物 だ。 乳 も 出さ ない、 卵 も 生ま ない、 力 が 弱く て 鋤 も 曳け ない、 野兎 を つかまえる ほど 速く も 走れ ない。 しかも 人間 は 動物 の 王 だ。 動物 を 働かせ、 動物 には 餓死 を 免 かれる 最小限度 の 食物 を 返し、 残余 は 自分 の もの に する。

    8ページ · 位置No. 115
    人間 の 悪習 を まね ては いけ ない。 いかなる 動物 も 決して 家 に 棲む な、 寝床 で 眠る な、 衣服 を つける な、 酒 を 飲む な、 煙草 を 喫 う な、 お金 に 触る な、 商売 を する な。 人間 の 習慣 は すべて 悪 なの だ。

    8ページ · 位置No. 118
    弱き も 強き も、 賢き も 愚か なる も、 われわれ は すべて 兄弟 で ある。 いかなる 動物 も 他 の 動物 を 殺し ては なら ない。 すべて の 動物 は 平等 で ある の だ。

    第二章
    13ページ · 位置No. 181
    だ」「 それから、 わたし の たて 髪 に リボン を つける こと は 許さ れる の?」 と モリー は 尋ね た。「 同志 よ、 あんた が それほど 大事 と 思っ て いる リボン は 奴隷 の 印 なの だ。 自由 は リボン よりも 価値 が ある こと が あんた には 解ら ない のか」

    第三章
    23ページ · 位置No. 305
    役 にも 立た ぬ、 寄生 的 人間 が い なく なっ た ので、 めいめい の 食べる 分 が 多く なっ た。

    第五章
    37ページ · 位置No. 501
    クローヴァー に 思いあたる こと が あっ た。 他 の もの には 何 も 言わ ず に モリー の 厩 に 行っ て 蹄 で 藁 を ひっくり返し た。 藁 の 下 に 角砂糖 の 小さい 山 と 雑多 な 色 の リボン が 幾 束 か 隠さ れ て あっ た。

    第七章
    66ページ
    私たちが数年前に人間の転覆の仕事にとりかかかった時に目標としたものは、こんなことではなかったのだ。このような恐怖と殺戮の場面は、老メジャーが初めて反逆を唆したあの晩に私たちが予期したものではなかったのだ。もし私たちに未来の絵姿があったとするならば、動物は飢えと鞭から解放され、すべて平等で、各自その能力に応じて働き、メージャーの演説の晩に自分が前足で親なしの家鴨の子どもを保護したように強いものが弱いものを護ってやる、そういう動物の社会だったのだ。ところがそれと反対に......何故だかわたしには解らないが......わたし達は、誰も自分の思うことが言えず、獰猛な、唸る犬どもがどこでも悪きまわり、同志たちが驚くばかりの犯罪を告白した後でばらばらに咲かれるのを目撃せねばならい、こんな時勢に遭遇してしまったのだ。

  • 【読書理由】
    小説を読みたくてKindle unlimitedを漁ってやっと見つけた小説。

    【感想】
    ⚫︎動物農場
    話の中心が種ごとにキャラクターのある動物達であるからこそ、暴力のない平等な社会を目指すほど考える能力を持つ者が自然と力を持つことがわかりやすく描かれていたように思う。
    人間からの支配を逃れるために動物達が一致団結して革命を起こし、動物達にとって平等な社会を作った。この人間の支配という恐怖があったからこそ、動物達は新たな支配への誘導に気がつかず、自ら支配下へ足を踏み入れる行動をする。この徐々に支配されていく描写が、支配とはされる側は抵抗しながら力に屈するものだと思い込んでいた自分にとっては、驚く点だった。支配される側の動物たちは自由を得たからこそ生まれた、支配下に戻る恐怖と運命共同体を守る責任感を利用されたように思う。それにより、この支配は支配者にとって介入せずとも自動的に生産する理想的な支配となった点も恐ろしい。
    このような社会では、なにも考えず真実を知ろうとしない者や真実を知りつつも行動しない者は支配下におかれ、考え行動できた者は暴力的な力により消される。考えられる者が生きる術は、積極的に支配者側につくしかないのかもしれない。
    支配者である豚は物理的な力を持たない点でも人間によく似ていたように思う。
    スノーボールとナポレオンが意見を対等に戦わせることができた段階では社会は平和に保たれていたのだろうか。しかし、二つの派閥に分かれた段階で戦争が始まっていたのかもしれない。ただ、ベンジャミンがいうにはどちらが勝っても同じといっていたが、これはその後の支配を予期していたのだろうか。それとも塞翁が馬(ロバ)なのだろうか。

    秩序ある社会では思考が力であり思考停止し間違った方向に進んでいると気がつけない者が支配を加速してしまうように思う。もしより多くの動物に考える力があったならば、反乱を起こし、嘗て人間からしたように独立できたたかもしれない。

    ナポレオンの主張がどこまでが嘘でどこまでが本当なのかも最後まで明かされない。これにより独裁者のいる社会では演説の演出と周りの対応により、嘘でも真実にしてしまう力があることが恐ろしく感じた。

  • 古典だけど、とても読みやすかった。
    スターリン独裁政権への批判を寓話にしたお話。
    本書の後半にある解説から著者の生涯や当時の背景も分かり、作品の理解が進むとともにとても勉強になった。

    最初は一丸となって人間を追い出し、動物だけの楽園を築けたのに、やがて頭のいい豚が自分たちの良いように他の動物たちを本人たちはそうされているとは気づかないように支配し搾取していく。動物たちがおかしいな、と思うと、口のたつ豚のスクィーキーがすかさず皆んなを言いくるめてしまう。
    もし自分が動物の一員だったとして、果たして嘘に気づいたり、自分の置かれた状況をおかしいと思うことは出来るんだろうかと思うと、恐ろしくなった。現代でも、自分の頭で考えられないと、こうした情報操作や誤った教えを間に受けてしまうことは充分にあり得ると思ったからだ。
    作品は全体的に明るい印象で、読んでて暗くなることはなかった。

    続編とも言われる大作1984年もいつか読んでみたい。

  • その時の政治を知っていたらもっと楽しめたかも知れない。
    文学の力は計り知れない。

  • ジョージオーウェルは
    1903(明治36)年生まれ

    夏目漱石が英国から帰国
    日比谷公園開園の年

    1945年発表 動物農場

    農場の動物達が人間を追い出し
    ユートピアを築こうとするも
    指導者の豚は独裁者と化し
    いつの間にか戒律を書き換えてゆく

    独裁者のモデルとされるのは
    「スターリン」

  • 動物農場
    革命が失敗したあと、口のうまいリーダーの言葉に違和感を覚えつつも流されてしまう様子がリアルで恐ろしかった。動物たちはみな一生懸命で、自分が出来る限りを尽くして頑張っているのだけど、いつのまにかゴールが変わってしまっている。声が大きい集団に流されて自分の違和感を声高に言うことができない。最初はまっとうなルールだったはずが、少しずつ形骸化させられてしまう。
    現実の政治の様子とも重なって、より怖く感じた。

  • かなり面白かった。

    馬や羊、豚やアヒルなど、農場で働く動物たちが、消費するばかりで何も生産しない人間からの支配を逃れ、自分達の力で農場経営を試みる話。

    力持ちで頑張り屋の馬や、寡黙なロバ、頭の良い豚や、ずる賢い猫など、たくさんの個性的な動物が登場するが、おそらくこの話の主役は「農場経営」だ。

    それぞれに、いろいろな意見や立場の動物が共同体を維持していくためには、どうするべきか、また、「みんな」が幸せになれる仕組みはあるのか。それはどう行動するべきなのか。
    動物たちによる農場経営は、手探りで進んでいく。

    ホラーや恐怖小説ではないが、変化や改革に対して「無知」や「無関心」な態度をとっていると、このような結末に至るということを痛感させられる、すこし切ない終末になっている。

    同調圧力への弱さ、自分で考える力のなさ、自助努力の欠如など、この本を読むことで、日常生活での反省すべき点も浮き彫りになる。

    ここ何年か、感染する病でいろいろと騒がしい日本人に、今だからぜひ読んで欲しい本。

  •  人の飼われ殺されていく動物が人間に反旗をひるがえすところからはじまる。
     動物達だけで楽園をつくっていこうとするが、結局は支配者と被支配者ができ、支配者の言葉に従わない人は粛正され……と。ソビエト社会主義の皮肉のような話になっていく。
     エンターテイメント的な面白さは正直いまいち。
     後半3分の1は解説になっている。オーウェルがどんな人生をおくって、どんな思考形成をしていったかの考察が面白い。オーウェルは自分の選択の意味をこう言っているが、ならばこうすれば良かった、理由になっていないなどのつっこみが入りつつ、理路整然とした正しさがないのが魅力のひとつなのだという解説が印象に残った。

  • 恐ろしい。読み進めることが怖いほどだった。クライマックスの、ひつじを1週間別行動させた理由が出てくるあの瞬間凄かった。クローバーの叫び声が聞こえてくるかのようだった。

  • 本作品もテーマが著者オーウェルの代表作「1984年」の中で描かれる「ニュースピーク」に重なる。

    それは「全体主義の恐怖政治」において、法(作中では7つの掟)や歴史の解釈(作中では追放された元リーダーのスノーボールが活躍した事実)がこっそり政治の中枢で改訂され、それが知識人らによって流布され、大衆が簡略化されたスローガンを連呼して全体主義が浸透していくという流れ。

    資本家の象徴として描かれる元荘園主を追い出して動物による動物のための農場を作ったリーダーのナポレオンだったが、最後は隣接する農園主の人間と密会を重ねるうちに豚のナポレオンが2本足で歩くようになり、服を着るようになり、人間と見分けがつかなくなっていく。
    これは労働者のリーダーのはずのスターリンが資本主義国家の英国や米国首脳と会談を重ねて彼らに同化していく様子を風刺している。

    オーウェルは言う。
    【現代の戦争】とは、支配集団が自国民に対して仕掛けるものであり、戦争の目的は領土の征服やその阻止ではなく『支配構造の保持』にある、と。

    そして法や歴史的解釈、ニュースの真相といった政治的教養は、いかにマスコミやフェイクニュース、プラットフォームのアルゴリズムによって自在にプロパガンダに変貌しうるのかを示している。

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著者プロフィール

1903-50 インド・ベンガル生まれ。インド高等文官である父は、アヘンの栽培と販売に従事していた。1歳のときにイギリスに帰国。18歳で今度はビルマに渡る。37年、スペイン内戦に義勇兵として参加。その体験を基に『カタロニア讃歌』を記す。45年『動物農場』を発表。その後、全体主義的ディストピアの世界を描いた『1984年』の執筆に取り掛かる。50年、ロンドンにて死去。

「2018年 『アニマル・ファーム』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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