夜のピクニック(新潮文庫) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • 歩行祭。80kmもの距離をひたすら歩き続けてゴールを目指す。
    そんな行事過酷すぎる!しかも高校生に!…と思ったり。

    24時間マラソンを大人が走ってもヘトヘトになるのに、なんの鍛錬もしていない高校生が完走するなんてすごい世界だ。

    なんとなく遠足気分で楽しそうにお喋りしてた子達も、バテて喋るのが億劫になる。
    会話がままならなくなる。
    それでも道が続く限り、歩き続けなければならない。

    その逃げられない過酷さや、彼らの疲れが読み手にもズッシリと伝わってくるのだ。

    彼らの高校生らしい恋愛話や秘密ごとには、なんとなく懐かしさを思い出す。
    それぞれの青春の仕方が青臭くて、懐かしさの向こうにあるほろ苦さも感じることができた。

    —————-


    クラスメイトには異母兄弟であるとこを秘密にしてきた、融と貴子。
    お互いずっと触れられないように振舞ってきたのに、「どこか似ている」と言われたり、行動が裏目に出たり。

    歩行祭を終えて、色々なしがらみを振り切った2人の関係が今後いい方に向かいますように。
    読者が祈っても仕方ないが、今まで辛かった分、どんな形でも幸せが訪れてほしいなと思った。

  • そうきたか~
    第一印象とまったく違う展開。
    確かに、人生にはいろいろなイベントが多い。敢えてつらいこと、厳しいことにチャレンジすることは、それだけ大きなものが返ってくる、ということなのでしょうね。とってもうまいです。こういう本を読み続ければ、もっと人間大きくなれるだろうか?そう信じたい。

  • まさに青春。
    ストーリー展開的にも高校生ならではの様々な葛藤があり、年を重ねた今この作品を呼んで当時の思い出が甦る。
    名作だと思います。

  • 関東沿岸部の某県の進学校である北高には、全校生徒が朝八時から翌朝八時まで仮眠と休憩を挟んで80kmの距離を歩き通す年一回の恒例イベント『歩行祭』があり、本作はこの『歩行祭』の一日を通し、受験や卒業、大学進学を控える高校三年生たちにスポットを当てています。

    物語は同じクラスに所属する、甲田貴子と西脇融の男女の高校生によって語られ、この二人の視点が章ごとに交互に入れ替わる構成を取っています。そしてこの二人には実はある特殊な関係性があり、この関係性を最も重要な軸として、他校の女子生徒を妊娠・中絶に追いやった生徒の存在、在籍しないはずの謎の少年の登場などを変数として浮上させながら、高校生の恋愛模様や友情関係を描くことを通して、長い一日を辿ります。

    語り手となる二人を除く主要な人物としてはそれぞれ、貴子の親友の遊佐美和子と融の親友として戸田忍が挙げられます。そして、貴子と美和子の親友であり、今は海外に暮らす榊杏奈も回想のみでありながらも重要な役割を担います。このほかに十名ほどの人物が登場して脇を固めますが、貴子と融の一部の親族がやはり回想で現れることをを除けば全て高校生であり、教師を含めて名前を持つ大人が一切現れないことも特徴のひとつです。

    進学校を舞台に、一部は無自覚ながらも異性から好意を持たれるような魅力と容姿を備える少年少女をメインに据えた本作は、学園の主役となりうる高校生たちを対象として描くことが主眼となっています。彼ら高校生たちの人物造形は一般的な少女漫画のそれに近く、主要人物たちにはトボけた味は出しながらも人格としては何の問題もなく理想的に描き、道化役や性格に難のある生徒などは、あくまで引き立て役としてその役割に留め置かれ、深みや人間関係の陰影を追及するような意図は特にありません。

    これらから簡単にまとめれば、ささやかな悩みはありながらも基本的には順風満帆な"リア充"高校生たちの学生生活の輝ける一日を、軽くて爽やかな少女漫画寄りのタッチで『歩行祭』というイベントを使って切り取ってみせたエンタメ作品とみて良さそうです。それだけに本作を楽しめるか否かは、憧れも含め、読み手にとって学校生活がどのような意味を持つかに左右されそうです。

    佐藤優さんの推薦から読みました。予想とは違う内容でした。

  • まさに、青春の一番いい時を描いてるなぁと。
    自分もあの頃に戻りたい。
    なんだかんだ、この時期が一番楽しいんですよね。
    歩行際というイベントはメチャクチャハードでしょ。
    でも実際にやってる学校あるみたいですね。

  • 昔にも読んだけど改めて。多分この本にインスパイアされたイベントが通っていた大学であって、夜のピクニックみたいと思った覚えがあるので思い出深い作品です。ちなみにその時一緒に歩いたのがきっかけで交際した人が今の夫です。ただ歩いただけだけど、夜歩くととても思い出に残ります。作品は、高校生の心情を細やかに表現したもので、名作です。そのうちこどもにも読ませたいです。

  • 2005年本屋大賞受賞作。24時間かけて80kmを歩く高校行事「歩行祭」=夜のピクニック。淡々と歩いているだけなのに、そこでのやりとりから「青春の揺らぎ、煌めき、若さの影」を的確に描いている本。ノスタルジックな描写に、高校時代自の甘酸っぱさが加わり、何とも言えない気持ちになる。昔の自分にタイムスリップできる作品。
    貴子・美和子・融・忍をはじめとする人物描写や伏線の回収の仕方がさすが。青春小説の名作と呼ばれるだけあり、読後の清涼感も高い。
    高校時代に読みたかったなと思った。

  • 精神的にも未熟な思春期の高校生の感情が、丁寧かつ濃やかに描写されている。

    そのためか、「自分も当時同じことを感じてたなぁ」と共感できる部分も多かった。
    さらに、ぼんやりと感じていて上手く表現できないことを、この小説ではそれを代弁してくれているように感じ、自分の気持ちに対する解像度が上がったように思った。(大袈裟かも 笑)

  • 朝から出発して夜間を通し総計80kmを歩くという高校行事「歩行祭」で、各々が想いを胸に完走を目指す。

    青春してますなぁ…遠い日のあの頃に戻りたくなった(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)もっと若い頃に読みたかったな。

    序盤で続々と人物が出てくるので、覚えるのが苦手な私には少々キツかった。しかしながら、誰が誰だか分からなくなってしまったまま読了したけれども、特に大きな問題も無かった。

    家族問題、恋愛事情、友人関係、学業の悩み…多様な事柄について歩行しながら仲間と共有したり共感したりと、なんだか羨ましいシンプルな行事だなぁと思った。

    感想としては、様々な事情により悩み耽る彼らの思考に終始付き合わされるのが内容の殆どで、端的に言えば「飽き」てしまう。ゴールを目指し歩く中で、幾つものわだかまりが解決していくのだろうと、結末がずいぶん前から見えてしまっていたし、結局その通りになってしまったので読了後は物足りなさを感じた。

    青春を想うにはいい内容だと思ったが、オジサンである私には少し物足りなかったかな〜と…。

  • 吉川英治文学新人賞
    2005年第2回本屋大賞

    ひたすら話しながら歩いているだけで、大きな事件もなく、単調に進んでいくだけの小説なのに、こんなに心が満たされて青春を肌で感じられる作品なことに驚いた。
    時間の流れとともに変わっていく情景と登場人物たちの気持ちの変化を描くのが天才的だと思った。
    どこにも無理がなく、すごく自然にスッと入ってくる感じが心地よく、退屈にならずに一緒に歩行祭を進んでいる感覚になる。
    イベントならではの独特な空気感がすごく伝わってきます。
    解説の方も書かれていましたが、今ではまるで自分が歩行祭を経験したことがあるような感触を覚えています(笑)
    やっと2人が話すシーンでは息を呑んで緊張を感じ、歩行祭の終盤は胸がいっぱいになり目頭が熱くなりました。

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著者プロフィール

1964年宮城県生まれ。92年『六番目の小夜子』で、「日本ファンタジーノベル大賞」の最終候補作となり、デビュー。2005年『夜のピクニック』で「吉川英治文学新人賞」および「本屋大賞」、06年『ユージニア』で「日本推理作家協会賞」、07年『中庭の出来事』で「山本周五郎賞」、17年『蜜蜂と遠雷』で「直木賞」「本屋大賞」を受賞する。その他著書に、『ブラック・ベルベット』『なんとかしなくちゃ。青雲編』『鈍色幻視行』等がある。

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