半身 (創元推理文庫) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • つらい。

  • 救いがない物語、最後の方は少し展開が読めてしまった。

  • 孤独な未婚女性が、慰問に訪れた刑務所で出会う美しい女霊媒師。霊媒師に惹きつけられていく彼女の気持ちが丁寧に描かれているが、彼女が知らない霊媒師の過去も同時に語られるので、彼女の気持ちが高まっていくほど、逆に読者は破滅の予感を感じずにはいられない。

  • ①19世紀半ばのイギリス。ミルバンク刑務所の女監獄を舞台に、受刑者たちを慰問するひとりの貴婦人と、薄幸の天才霊媒師にして美しき女囚との心の交流を描く。
    ミルバンク刑務所は、ロンドンに実在した巨大な刑務所。横並びに十部屋ほどの独房を持つ3階建ての獄舎があり、それが5棟、上から見ると五角形をなすように配置され、さらにそんな五角形ひと組の建物群が六つ、中心の塔の周りを取り囲むように形作られている。本書は、そんなミルバンク刑務所の威容の描写から入るので、「なるほど、このお話は史実に基づいた歴史ロマンなんだろうな。ケン・フォレット『大聖堂』みたいな。」ということがすぐにわかる。

    ②主人公マーガレットが紹介される。彼女は上流階級の貴婦人で、最愛の父を亡くしたばかりである。家族には口やかましい母、新婚の弟とその妻(ヘレン)、婚約中の実の妹がいるが、長女である自分だけはまだ嫁に行けずにいる。そんなマーガレットはなにか……曰く言い難い過去を持っているような、賢いけど内向的で傷つきやすいような、そんなsensitiveな女性として描かれる。だから、「うん。歴史ロマンというよりは、家にとらわれた上流婦人の心の葛藤がメインの物語、『チャタレー夫人の恋人』みたいな。」ということがわかってくる。

    ③マーガレットの過去が描かれる。彼女の傷心の原因は、最愛の女性ヘレンが自分の元を去り、弟と結婚してしまったことだった。彼女はその時自殺未遂事件までひきおこしている。その瞳はいまだに自然ヘレンを追ってしまうし、弟とヘレンがキスをしそうな場面では思わず目を伏せる。いつも身に着けているペンダントのロケットには、ヘレンがくれた彼女の髪の毛が大切にしまわれている。そんな彼女だったが、今回の慰問でたまたま出会ったひとりの受刑者から強い印象を受ける。シライナ・アン・ドーズ。刑務所の劣悪な環境の中でもなお彼女は美しい。その口から出る言葉は謎めいておりいつまでも心に残る。超然としたたたずまいには内から漏れでる輝きが感じられる。マーガレットは慰問をするというよりも、シライナに会いに行かずにいられなくなる。そこで、「いや、これは上流婦人の心の葛藤なんかでなくって、百合もののプラトニック・ラブロマンスじゃん。竹宮ジンの『憎らしいほど愛してる』みたいな。」ということが初めてわかる。

    ④シライナ・アン・ドーズが描かれる。彼女は正真正銘本物の霊媒師であり、その力は歴史に名をとどめるほど強大である。彼女は傷害罪により収監されているのだが、実際は彼女が手を出したワケではなく、交霊会の場に呼び出され実体化した彼女の守護霊ピーター・クイック(かなりクセがある)がシライナの制止をふりきって暴れだし、結果不幸にも死傷者がでてしまったのだった。裁判では霊の存在が証明できず、シライナが一方的に悪者あつかいされ有罪となってしまっていた。……しかしシライナは、マーガレットにはその力をまざまざと見せつける。マーガレットの実家の寝室では、例のヘレンの髪の毛が入ったロケットが精霊によって持ち去られ、そのかわり季節外れのオレンジの花、そしてシライナの髪の毛のひと房などが実体化する。それを目の当たりにしたマーガレットはますます深くシライナにのめりこんでいく。読者はここにきてようやく、「結局この小説、百合ものというより、守護霊全開ものやん。つのだじろう『うしろの百太郎』みたいな。」ということが明らかになる。

    ⑤マーガレットとシライナはおたがい、この世にふたりといない運命の人であり、ひとつになるべく宿命づけられた「半身」であったことがわかる。シライナはマーガレットに提案する。自分は霊となって脱獄するから、お金と服と旅券を用意して家で待っていてほしい、ふたりでイタリアに行って幸せに暮らそうと。シライナの無茶な提案に一度は首を横に振るマーガレットであったが、ついに決意のほぞを固めて………。 いやちょっと待て。マーガレットは家族全員裏切って金持って逃げるの? シライナは霊になったら脱獄できんの? てか、この物語、ジャンルはいったい何なの? これから先このふたり、どうなんの?!

    ………そして衝撃のラストがおとずれる!!!

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