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感想・レビュー・書評
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https://shimirubon.jp/reviews/1677331 より
・生きるのが痛い人に
・O.ヘンリー賞受賞
・畳み掛けるように饒舌で、叩きつけるような一人称の文体は、舞城王太郎を思い出す詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ちょうど映画『野火』を観たばかりの8月15日にPartⅠを読み始めたので、戦地での描写が生々しく胸に迫り、そのせいか表題作を含む1部が最も強烈な印象を残した。著者の自伝的連作集なのかなと思いつつPartⅡに進み、や、意外にバラエティに富んでいるから、そういうわけでもないのかな、と考え直しながら最後まで読んで、訳者あとがきでやはり自伝的だったことを知る。アマチュアボクサー時代、試合で受けた外傷による癲癇に苦しみ、コピーライターや用務員の職に就き、哲学書や古典を読み漁る。そうした著者の人生の様々な側面がそれぞれの短篇に生きているという点では、持ち味は違えど、先日読んだルシア・ベルリンとも共通するような。あと、ERの外科医が登場する『蚊』と『七月六日以降、当方自らの…』がめっちゃ『煙か土か食い物』なので驚いたら、こちらが元ネタだったとかなんとか。なんだ、「舞城は理Ⅲ卒の脳外科医」という私のプロファイリングは間違ってたのか。ラストの『ロケット・マン』はじめボクシングが出て来る作品も多く、普通なら「生の実感」的比喩としてぐっとくるんだろうけれども、身内にボクシングを始めた若者がおりまして、どうしても余計なことを考えてしまい、フラットに読めなかったのが惜しまれる。そんなことよりもっと惜しまれるのは、著者が2016年に亡くなっていること。執筆中だったとおぼしき長編も読んでみたかった。