日本史が好きですが、第二次世界大戦後から高度経済成長のころまでの歴史が空白です。
何冊か本を読んでいますが、保守だろうと左派だろうとどうにも感情的で懲罰的なので、本当のところどうであったのかがよく分からないのです。
だから、実はこの辺りについての本を読むのは、正直辟易しているのですが、空白部分を少しでも埋めるため、性懲りもなく読むわけです。
この本は終戦なるかならぬかの頃のソ連侵攻から全共闘時代について書かれています。
かなりの反共の立場であることは、読み始めてすぐわかりました。
私自身、父親が樺太引揚者で、それまでは片言であいさつするくらいの隣人であったロシア人に攻め込まれた恐怖と屈辱は、何度も話に聞かされました。
だからソ連を絶対視する文化人の言い分にはいまだに納得はいかないのですが、それでも反共のヒステリックな文体にはうんざりです。
”このロシアを支配するには、尊大なまでの自信、猜疑に近い警戒心、過酷なまでの意思――そうした強烈な個性を重要な資格とするのではないかと思われる”
スターリンについて書かれた文章ですが、プーチンについてと言っても通じるのではないでしょうか。
変わってないのね。
でも、ヨーロッパの田舎者とさげすまれていたことが、頑なな自尊心になったのかなと思います。
”侵略国は「国際世論」を怖れない”
これもまたプーチンの顔が浮かんでしまいますが、思い返せば国際連盟を脱退した日本だってそうです。
数々の国際紛争のあれこれを思い出してみても、国際世論など気にせず侵略行為をする国ばかりのような気がします。
”しかし、いまや資本社会のなかでも、能率主義中心の競争社会への批判がはじまっている。”
最近よく思うのは、能率主義を極めたら選択の自由ってなくなるんだなということ。
新商品が出たら、古い商品は作らなくなる。
そうすると、古い商品に愛着があっても、選択の余地なく新しい商品を買わなければならなくなる。
ファッションも、流行のデザインばかりが店頭に並ぶので、流行関係なく好きなデザインというのはほとんど入手できなくなる。
結局横並び。
”アメリカは戦場では負けなかったが、銃後で敗れたのである。言い換えれば、心理戦争に敗れたのである。”
一番興味があり、一番よくわからなかったのがベトナム戦争。
北ベトナム(ソ連、中国が支援)対南ベトナム(アメリカが支援)とだけ知っていたけど、北ベトナムの兵士が殺した南ベトナムの戦闘員より、アメリカが殺した南ベトナムの非戦闘員の方が何十倍も多かったって、最近知りました。
ゲリラ戦に不慣れなアメリカ軍は、結局「動くものは何でも殺せ!」ということになって、女子ども年寄りしか残っていない村で全員を殺し、その死体の傍らでようやく安心して食事をとった、と。
そして、南ベトナムを救うという大義名分のもと、宣戦布告をせず、マスコミにすべてをオープンにした結果、自分たちの行為もすべて世界中に知れ渡ってしまった。
だから、ベトナム帰還兵のトラウマが深刻なのか。
民族解放のヒーローになるはずだったのに、ゲリラに怯えて一般人を虐殺してしまった。
”米軍の方は、(中略)記事の事前検閲もなく何をどう書こうと基本的には自由であった。それはアメリカ側が言論の自由の原則に忠実であろうとした結果である。(中略)宣戦布告なき平時体制下の戦争という矛盾した状況から、軍事機密の概念や規定もあやふやであった”
だから情報は相手に筒抜けであった。
”自由な社会とは、個人の責任において価値観、人生観、さらに生き方に至るまで、できるだけ広範囲で多様な選択の自由を許容する社会である”
だから日本はまだまだ自由じゃないと思うのね。
いや、せっかくの自由を国に返納しようとしている社会というか。
制服絶対主義、同調圧力、異分子排除。
自分の頭で考えようとしないで、周りに合わせて安心する人々。うんざり。
”通常戦争型の軍隊がゲリラ相手に戦うと、必然的に敵性とみなした住民に対する無差別攻撃に走ることになる”
あまりにもベトナム戦争がわからな過ぎて、途中でベトナムの歴史を調べてしまいました。
でも、わからん。
それから学生運動へと流れていくのですが、どうしてあんなに過激になったのかがどうしてもわからない。
そもそも、共産主義ってただの経済システムの話でしょう?
反対語は資本主義。
民主主義の反対が全体主義?独裁主義?
それなのに民主主義の反対が共産主義ってなってるから、変に捻じれてくるんじゃないの?
共産主義の悲劇はマルクスの論に食いついたのがレーニンとかスターリンのようなテロリストであり独裁者だったこと。
純粋に経済システムとして読まれてこなかったことじゃないのかな。
右翼と左翼のちがいは、ざっくり言うと天皇絶対主義か、天皇否定主義かということだそうです。
天皇の下でみんな平等を目指すのが本当の右翼。
天皇性など無くして全員で平等を目指すのが左翼。
と、若いころ読んだビギナーのための右翼の本に書いてありました。
とすると、資本主義が鬼子のような気がします。
余談ですが、私が一番納得いったのは、右翼の親玉として死刑になった北一輝の「日本改造法案大綱」
一定の私有財産は認める。(戦前で100万なら、今だと1000万?1億?)
土地はすべて国有地とする。
これなら働き甲斐もあるし、貧富の極端な差はなくなりそうじゃない?
それにしても、もう少し冷静に中立的に戦後の日本史を書いてくれる人はいないものか。
「悪魔祓い」の「悪魔」って、戦前の日本の群舞のことだと思ったら、進歩的文化人のことなんだよ。
進歩的文化人って言葉がすでに揶揄してるよね。ああ、うんざり。