水鏡推理2 インパクトファクター (講談社文庫) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • 水鏡シリーズ第2弾。STAP細胞騒動の小保方さんを彷彿とさせるリケジョを中心とした話。難しいテーマをわかりやすくストーリーにするところはさすが松岡さん。本作も、主人公・水鏡瑞希を中心に流れるような展開でとても楽しめた。
    ただ前回の登場人物がほとんど出てこなかったのは残念。単発モノとして楽しんだ方が良いかもしれない

  •  研究の世界ということは日常生活の中であまり考えることがない。研究をする人は、ぼくの頭の中では、鉄腕アトムや鉄人28号を作り出したり、ゴジラを退治する方法を考えついたり、タイムマシンを発明したり、ハエ人間になってしまったりする、というようなコミック・映画の世界、つまり異世界の住人でしかあり得ない。

     日頃、研究者の生活が頭に浮かばないのは、彼ら/彼女らが、陽の当たらない研究室に閉じ籠っているからなのだろう。テレビやニュースに登場するのは、そのごくごく一部だけの極めて幸運な人々で、これまで名も知られなかった彼らは、いきなりノーベル賞を受賞したり、星や微生物などを新しく発見したりしてぼくたちの日常に唐突に出現する存在である。

     だからこそスタップ細胞の発見とその後のセンセーショナル展開についてのニュースが日本中を沸き立たせたあの日々は、ぼくらの日常に普段あまりピンと来ることのない研究室の裏側を想像させたり邪推させたりする特別なきっかけになった。

     本書は「研究における不正行為・研究費の不正使用に関するタスクフォース」に所属する水鏡瑞希の第二弾。一作目『水鏡推理』では、新しく個性的なミステリジャンルへの作者の挑戦意欲を課せられた水鏡瑞希という新キャラクターのシャーロック・ホームズ張りの推理力に焦点を当て、胸のすく活躍ぶりを読ませてくれたが、本書ではついに、あのスタップ細胞事件の相似形のような構図を作者は作り出し、水鏡の推理力を持って真相に迫ってゆく。インパクトファクターという研究誌掲載による得点稼ぎが、研究者にとって有利となる状況などは、本書で初めて知るところだった。いわば俗世間の金銭欲や色欲とはまるで違った、ラボラトリーにのみ存在する欲望がここに存在するのである。

     水鏡瑞希の幼馴染の如月智美が渦中に巻き込まれることになるのだが、小保方さんをモデルにしたとしか思えない役柄を割り当てられた智美の人生劇にスポットが当てられ、彼女を過去親友だった一人として救い出そうとするヒロイン瑞希の活躍と、彼女が向けた怒りの行方が相変わらず頼もしい。タスクフォースの官僚たちではなく、ただの事務員として様々な差別を受けつつも反逆してゆく姿勢とその推理能力の高さが魅力であるが、今作は、智美との絡みが錯綜してどこへ行き着くのかという要素が、物語の肝となっている。

     印象的なラストシーンで終わる本書、切れ味も後味も極上。題材はセンセーショナルながら、あくまで人間らしさにこだわる作者のペンの流れが頼もしい限りだ。

  • 面白かった。
    が、内容はよく覚えていない。

  • 今回はあのSTAP細胞問題を彷彿とさせる、大学院生がFOV人工血管というものを発明し、科学誌に論文掲載が決まったが捏造疑惑をかけられてしまう。その大学院生如月智美は、主人公瑞希の幼馴染であり、過去のある出来事から音信不通になっていた。果たして智美は本当に捏造をしていたのか?
    例え仲が良かったのが過去のことであろうと、友人を疑うのは何よりも辛いことだと思う。
    そんな瑞希の苦悩も共感できたし、真相がどこにあるのかも分からず気になって一気読み。
    登場人物も前回とは一新し、少し寂しさはあったが、色々な人と瑞希が関わって周りを巻き込んでいくところはやっぱり楽しい。終わり方も嫌な感じがないところがいい。
    また、次回作も楽しみだ。

  • ・・・水鏡推理は、すぐに感想を書かないと内容を忘れるのです。

  • 現実に起きている事象に落とし込んでこの作品を読むと非常に感情移入し易く、また興味深く楽しむ事ができる。また本作は単純に勝ち負けの構図で組み上げられた話しではないところも非常に好感が持てて、最後はあったかい気持ちで読み終える事ができる。

  • 松岡さんの小説のこの読み始めてからのワクワク感はなんなんでしょうか。
    私が大ファンだからでしょうが、何が起こるのか、どういう謎が隠されてるのか、きっとただ事ではないという期待と信頼が半端ないんです。
    期待通り、読み始めたら止まらないのはいつも通り。
    美人大学院生がノーベル賞級の人工血管の実験に成功したというあの件をはっきり意識させる物語は、あの件の真相の謎もまた思い出されて、色々な意味で楽しめました。
    そして、松岡さんの小説のラストは、いつも心に爽やかな風が吹き抜けるような感じで、清涼感に溢れていると思います。

  • 美人国家公務員(一般職・女性)・水鏡瑞希が活躍す
    る推理モノ第二弾。ノーベル賞モノの論文を科学誌に
    発表し、一躍時の人となった女性研究者は、瑞希のか
    つての幼なじみ・如月智美。智美のやや暗い過去を知
    っている瑞希は、どうしても世紀の大発見を懐疑的に
    しか見られない。そして、世間も捏造を疑いだし、つ
    いに瑞希の所属する「研究における不正行為・研究費
    の不正使用に関するタスクフォース」も動き出す・・・
    という内容。

    ハッキリ言おう。
    この物語が生まれたきっかけは、リケジョの星と一瞬
    だけ世間にもてはやされるも、すぐさま奈落の底にた
    たき落とされ、未だに踏みつけられている
    “STAP PRINCESS”こと、小保方晴子の存在で間違い
    ない。研究者・智美を取り巻く環境やディティールも
    あの事件に凄く近いモノを感じるし、徐々に孤独を強
    いられて行く様もあの時の晴子を彷彿とさせる。
    全くのフィクションなのに、ノンフィクションである
    かのような臨場感。これでおもしろくないワケが無い。

    副題の「インパクトファクター」という耳慣れない
    言葉も重要なポイント。現在の科学が置かれている
    リアルな現状が、なんとなく解ってくる。

    そういうワケで今回も読み応えたっぷりなのだが、前作
    を全く引きずっていないのはちょっと問題(^^;)。初回
    の登場人物で出番があったのは主人公のみ。あの魅力的
    なキャラたちが一切出てこない、というのは、ちょっと
    寂しい気がする。

    まぁ、シリーズが進むに従い、過去キャラとの邂逅も
    あるんだろうなぁ、と。
    とにかく3巻にも大いに期待します!

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著者プロフィール

1968年、愛知県生まれ。デビュー作『催眠』がミリオンセラーに。大藪春彦賞候補作「千里眼」シリーズは累計628万部超。「万能鑑定士Q」シリーズは2014年に映画化、ブックウォーカー大賞2014文芸賞を受賞。『シャーロック・ホームズ対伊藤博文』は19年に全米翻訳出版。NYヴァーティカル社編集者ヤニ・メンザスは「世界に誇るべき才能」と評する。その他の作品に『ミッキーマウスの憂鬱』、『ジェームズ・ボンドは来ない』、『黄砂の籠城』、『ヒトラーの試写室』、「グアムの探偵」「高校事変」シリーズなど。

「2023年 『高校事変 16』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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