自伝 鈴木茂のワインディング・ロード はっぴいえんど、BAND WAGONそれから (ギター・マガジン) [Kindle]

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  • リットーミュージック
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感想・レビュー・書評

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  • はっぴいえんどのギタリストの自叙伝。
    わずか数年の活動ながら大きな印象を残したはっぴいえんど。活動期間か短いということは、その後の人生は長い訳で、色々なバンドやソロ歌手、アレンジャーとして活躍されている。

  • 『#自伝 鈴木茂のワインディング・ロード』

    ほぼ日書評 Day405

    著者の名を知らない方が多数派だろう。
    では、次の人たちは?
    松本隆
    大瀧詠一
    細野晴臣
    松任谷正隆

    初めの3人とは「はっぴいえんど」、松任谷らと「ティンパンアレイ」等といったグループで、その後の日本語ポップスをリードしてきた、ギタリストでありアレンジャーである。

    楽器や音楽アレンジに興味のない方には、数秒の価値も感じられない本だろうが、高校生時分の自分なら、貪るように読んだこと請け合い。

    ただ、初版が2016年という割には、2021年現在にして文体がかなり古臭く、ひじょうに読みづらいのは減点だ。

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  • 元はっぴいえんどの4人(ほかに細野晴臣、大瀧詠一、松本隆)の中では、いちばん地味で目立たない存在であろう鈴木茂。
    てゆーか、あとの3人が大物すぎるんだけどな(笑)。

    目立たないけど、私は鈴木茂が好きだ。ギタリストとしても、ソロアーティストとしても、なんならヴォーカリストとしても(彼のヴォーカルは「ヘタウマ」扱いされることも多いが、味があってとてもよいと思う)。

    その鈴木茂が、アーティストとしての来し方を語り下ろした自伝本。構成は音楽ライターの近藤正義が担当している。

    本としてのハイライトは当然、はっぴいえんどの内幕を明かした部分ということになるだろう。

    はっぴいえんど時代はじつに4章にわたって語られており、日本のロック史上屈指の名盤(第1位に挙げる人も多い)『風街ろまん』については一章丸ごと割いて振り返っている。

    この4つの章だけでも、日本のロックの資料/歴史的証言として高い価値を持つ。
    一節を引いてみよう。

    《ようするに、バンドとしてしっかり機能していたんだね。レコーディングの現場でも、曲が仕上がる一歩手前までお互いの意見のやり取りがあったんだ。各自がメンバーのアイデアを受け入れるおおらかな姿勢を持っていたんだね。これは、全員が対等なバンドとしての理想的な形だったんじゃないかな。
     絶対的なリーダーはいなくて、ビートルズみたいな絶妙なパワー・バランスが保たれていた。敢えて言うなら精神的なリーダーは細野さんで、サウンド面における多様性は大滝さん、歌詞は松本さん、そしてぼくは曲にギターのフレーズを提供する。だれがまとめ役というのではなく、共同作業だった。それが出来たのがこの『風街ろまん』まで。こういうバンド仲間って素晴らしい。いまだにはっぴいえんど以降、そういう体験はないね》

    本書は『ギター・マガジン』の関連書籍だから、ギタリストとしての技術的側面(エフェクターなどの機材面も含め)にもかなりウェートが置かれており、ギターを弾く人なら興味深く読めるだろう。

    はっぴいえんどのラスト・アルバムのレコーディングで渡米した際、リトル・フィートのレコーディングを見学してローウェル・ジョージのスライド・ギターに度肝を抜かれた……などというエピソードはスリリングである。

    《その当時はまだぼくも細野さんもリトル・フィートのことを知らなくてね。キャシーから 「スライド・ギターの上手いのがいるよ」 とか言われて、紹介された。それがローウェル・ジョージだった。
     観に行くと「トゥー・トレインズ」をやっていて、いやいや、そこではバンドのエネルギーの凄さに圧倒されたね。
     そんな経緯で、なんとローウェル・ジョージとビル・ペインがぼくたちのレコーディングにも参加してくれることになった。なにしろローウェル・ジョージが至近距離でスライド・ギターを弾くのをこの目で観たんだから、そりゃあ衝撃的だったね。この瞬間にスライド・ギターに目覚めたと言っても過言ではないよ。スライド・ギターにはもともと興味があって、ライ・クーダーがきっかけでチャレンジしたことはあったんだ。でもなかなか自分なりに消化できなくて、深くは追求しなかった》

    はっぴいえんど以降のソロアルバムなどについても振り返っており、とくに名盤『バンドワゴン』については一章を割いて詳細に語っている。

    80年代以降、アレンジャー、スタジオ・ミュージシャンとしての活動も増えていった鈴木茂。その舞台裏を綴った章も、地味といえば地味だが、音楽好きなら楽しく読める。
    印象的な箇所を引いてみよう。

    《スタジオ・ミュージシャンとしての報酬は、ミュージシャンを手配するインペグ屋さんがその場で手渡しでくれる。一時間いくらという時間給で現金を茶封筒に入れてね。だから当時、売れっ子のスタジオ・ミュージシャンの中には財布の中にお金がうなっていた人もいる。忙しくて銀行に預けに行くヒマもないんだよ》

    《アレンジには加えていく方法と、削ぎ落とす方法の二通りがある。あとは、どこで完成とするかだね。世の中の流行りモノの研究も必要。やはり、イヤでも影響されるから、アレンジに関しては分からないように拝借することはある。気をつけなくてはならないことは、自分の感性の中できちんと咀嚼出来ていれば拝借しても自然な形になるけど、未消化のまま使うと元ネタがバレてみっともないことになる》

    《音を加えていく作業は、弦、ホーン、コーラスなど、アカデミックに勉強したことや現場で吸収したノウハウを活かすわけだから、ある程度は良いサウンドを作りあげることは出来る。でも、アマチュア・バンドが持っているような荒削りなパワーというものは欠けていってしまうんだ。だから、仕事をしていて担当している楽曲にそういうパワーが欲しいと感じたときは、逆に音を削っていくこともある》

    私は85年のソロアルバム『SEI DO YA(星導夜)』が『バンドワゴン』の次くらいに好きなのだが、その舞台裏も語られている。

    《ぼく個人的にはイギリスの尖ったロックのほうに興味があった。自分が仕事で求められる弦やブラスをふんだんに使った過剰なアレンジにちょっと疲れていたこともあるしね。一種の反動だよね。アレンジとは曲やメロディの説明みたいなモノで、アメリカや日本の音楽は説明が多すぎるんだよ。この当時のロンドンの音楽はそれが少なくてシャープだった。だから久々のソロ・アルバム『SEI DO YA』(八五年)はイギリスで作ることにしたんだ》

  • はっぴいえんどからティンパンアレー、ソロの時代の考えが記述してある。はっぴいえんどでのアルバムの各曲解説が面白かった。

  • AmazonUnlimitedで発見。インタビューをベースにデビュー前から現在までを振り返る。音源がAppleMusicにないものが多くてちょっと悲しかった(笑。凝り性のところが垣間見えて面白かった。エフェクタを作ったりしているんだね。

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著者プロフィール

 東京外国語大学大学院総合国際学研究院教授。一橋大学大学院社会学研究科博士課程中退。専攻は歴史学(ブラジル史)。
 主な著書に『〈南〉から見た世界05 ラテンアメリカ―統合と拡散のエネルギー』(共著、大月書店、1999年)、『ラテンアメリカからの問いかけ―ラス・カサス、植民地支配からグローバリゼーションまで』(共著、人文書院、2000年)、『史料から考える 世界史二〇講』(共著、岩波書店、2014年)、訳書にシッコ・アレンカール他『世界の教科書シリーズ7 ブラジルの歴史―ブラジル高校歴史教科書』(共訳、明石書店、2003年)、ジルベルト・フレイレ『大邸宅と奴隷小屋―ブラジルにおける家父長制家族の形成(上・下)』(日本経済評論社、2005年)、ルシア・ナジブ編『ニュー・ブラジリアン・シネマ―知られざるブラジル映画の全貌』(監訳、プチグラパブリッシング、2006年)、ボリス・ファウスト『ブラジル史』(明石書店、2008年)など。

「2016年 『ブラジルのアジア・中東系移民と国民性の構築』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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