暗幕のゲルニカ [Kindle]

著者 :
  • 新潮社
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感想・レビュー・書評

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  • 初めて読んだ原田マハさんの小説。好きな作家さんが新たに加わりました。

    1937年にピカソが描いた畢昇の傑作「ゲルニカ」。本書は「ピカソの戦争」という特別展を企画した日本女性キュレーターが「ゲルニカ」を追う姿を中心に描きます。小説の構成、小説に仕掛けられた多くの伏線、仕掛けが素晴らしく、結局、寝るのも惜しんで読んでしまいました。

    本書は1937年と2001年に始まるふたつの物語が交互にゆっくりと展開します。もちろん、ふたつの物語は収斂に向って行くと、読者は経験則から信じていると思いますが、これ以上は書けません(笑)。

    何度も読み返した箇所があったので、引用します。

    幾百もの眠れない夜 、白い鳩はいつも傍らで瑤子を見守ってくれた 。元気を出して 、負けないで 、などと絵の中の鳩が語ってくれるはずもない 。それでも 、鳩は 、ただ羽ばたいて 、静かに主張していた 。 ─ ─私は飛ぶのだ 、と 。

    終盤、ちょっと個人的には合わない展開もありますが、それでも★★★★★。ピカソの描いた「鳩」を眺めた後、一気に読まれることをお勧めします。

  • "Guernica undercover"

    2001年の9月11日のあの日、なぜあんなことが起こっているのか知りたかった。「世界」に目覚めたあの日、私は国際関係を志した。それはこの小説の投げかける問いにも通じる。2003年の2月5日のあの日、国連本部にあるゲルニカ(のタペストリー)を隠したのは、なぜだったのか?
    そしてまた、『本日は、お日柄もよく』でもそうだったが、原田マハの作品には「女の戦い」が描かれている。戦う女性はたまらなく魅力的だ。そんな女性に私は惹かれる。
    まっ、今はそれに見合う価値のある男ではないが、「世界」にファイティングポーズだけは取り続ける男でいたいな。

  • この本を読んで、パリと南フランスへ旅行に行ってしまったくらい!…と言うのは言い過ぎだけど、旅行先でのピカソ関連の美術館を巡るくらい、私には心に残る本でした。

    フィクションではあるけれど、史実を基にしているから
    物語で楽しませてもらい、
    さらに時代の背景やピカソの人生などの大まかな事柄(脚色があったとしても)を知ることができます。

    歴史や文化、美術などに興味を持つとっかかりになるような本だと思います。もちろんそれに関して深く知りたい場合は、専門書を読む必要はありますが☻

  • 小学生の頃だったかな、教科書か画集か忘れたけれどピカソの「ゲルニカ」を観て、釘付けになったのを憶えている。
    「泣く女」も衝撃的で、いわゆるキュビスムのスタイルでヘンテコな絵なんだけれど、ホントに「泣くっ」て、こういうことかも知れない、と何か真実に迫っているような気がして、自分の中でピカソへのリスペクトはかなり幼少期に確立していたと思う。
    そんな個人的な気持ちもなぞりながら、この小説ではゲルニカが描かれた当時と、9.11を体験した現代とがクロスオーバーする構成になっており、スリリングな展開で、これまた一気に読了しました。
    改めて現代社会における「ゲルニカ」の存在意義について考えされられました。

  • 話が進むほど物語の続きが気になり、どんどん読み進めました。
    舞台が近代と現代に分かりやすく分けられている点も、興味を誘った一因であると読了後に考えました。読み途中でありながら、googleでゲルニカは今どこにあるのだろうと調べてしまいました。
    あくまで小説であり、フィクションを多分に含んでいるとは理解していたつもりですが、予備知識を持っていなかった分、余計に物語に感化されたのだと思います。
    一点だけ、どう評価するべきか悩む点があります。クライマックスとも言うべき終章に関する感想を、未だに綴ることが出来ません。「えっ」と口に出したか、あるいは思い浮かべたのは事実ですが、驚きなのか、落胆なのか、どちらとも判じがたいです。
    ですが、とても楽しませて頂いたので、星4つは維持です。

  • 好き嫌いや好みを超越した"特別"な芸術家であるピカソの、その中でも"特別"な作品『ゲルニカ』がテーマということで、ピカソフリークの僕としては思い入れが強すぎてこの小説自体も好きか嫌いか、面白いか面白くないかの判断ができなかった。
    とにかく、ピカソという人物のあらゆる言動に心が動かされてしまう。

    やはりスペインに行かなければ!という気持ちを固めるきっかけになった。スペインに行こう。

  • 今も昔も芸術を武器として戦ったピカソの最大の作品ゲルニカをキーワードに、ピカソが活躍していた時代である1930年代と2011年の現代を交互に描いた作品。スペインでゲルニカを観てピカソの凄さを感じてからピカソ作品に興味を持っていたので、ゲルニカにまつわるエピソードが深く描かれており面白かった。
    現代の拉致のところから最後は、もっと凝って欲しかった。途中まで面白かったのに最後が非常に残念。

    ー芸術は、飾りではない。敵に立ち向かうための武器なのだ。ー ゲルニカを見ると本当にそう思う。過去はほぼノンフィクションと書いてあったがどこまでがフィクションなのか分からないくらいドラマ性があった。むしろ過去だけだったら5つ星にしたと思う。

    登場人物がモダンとかぶっていたので、モダンももう一回読んでみよう。

  • 芸術の力、芸術が動かす人の力。

    最初は入りにくいがすぐに、まるで史実を追うような躍動感で描かれる大戦前後のパリ。

    ゲルニカを観に行きたくなる。

  • 流石に面白い。ストーリーの妙よりも、史実の紹介として印象に残る。ゲルニカ愛ピカソ愛がスゴイ。連載の都合なのか、繰り返しが多いのが残念だし、20世紀パートと21世紀パートの繋がりが弱くて、別々の話が進んでる感じで中々つながらないので未だか未だかと感じてくる。ストーリーが陳腐でドキドキする描写が少ない。でも面白い。読んでみないとわからない面白さ。

  • 「ゲルニカ」をめぐるストーリーは、過去と現代、フィクションとノンフィクションを行き来して進み、ハラハラドキドキあり、強い戦争反対にメッセージあり、一人の女性の生きざまあり・・・と飽きさせない。連載だったからか、同じような描写がたびたび登場するのがちょっとつらかったけど、原田マハらしい力強さがみなぎっていて、ぐいぐい引き込まれる。また行きたいところができてしまった。レイナ・ソフィア@マドリッド。ピカソのメッセージを直に受け止めてみたい。

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著者プロフィール

1962年東京都生まれ。関西学院大学文学部、早稲田大学第二文学部卒業。森美術館設立準備室勤務、MoMAへの派遣を経て独立。フリーのキュレーター、カルチャーライターとして活躍する。2005年『カフーを待ちわびて』で、「日本ラブストーリー大賞」を受賞し、小説家デビュー。12年『楽園のカンヴァス』で、「山本周五郎賞」を受賞。17年『リーチ先生』で、「新田次郎文学賞」を受賞する。その他著書に、『本日は、お日柄もよく』『キネマの神様』『常設展示室』『リボルバー』『黒い絵』等がある。

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