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感想・レビュー・書評
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谷崎潤一郎は、学生時代に『痴人の愛』から入ってしまって、「変…態…!!」と思ったところで止まっていた。
本書もフェティシズム全開で『痴人の愛』を彷彿とさせる物語。最近読んだ短編の中でもドキドキして引き込まれ度は随一。女性目線だと「それはダメじゃない…」って中盤思ってしまうが、物語には続きがある。
冒頭の文脈設定がやっぱりポイントなのかな。
「それはまだ人々が「愚」と云う貴い徳を持って居て、世の中が今のように激しく軋み合わない時分であった。(...)すべて美しい者は強者であり、醜い者は弱者であった。誰も彼も挙って美しからんと努めた揚句は、天稟の体へ絵の具を注ぎ込む迄になった。」
その上での、女郎蜘蛛という存在感(女郎蜘蛛はメスはオスの倍以上の体格、メスがオスを食べることもある)。 -
「其れはまだ人々が、『愚(おろか)』と云ふ貴い徳を持つて居て、世の中が今のやうに激しく軋み合はない時分であつた。」
そんな一文で始まる、自分の思い描く理想美の虜になった若い刺青師(ほりものし)と、彼に見出されたことで密かに隠し持っていた魔性を一夜にして開花させる少女の物語です。
刺青師の清吉の長年の宿願は、光輝ある美女の肌を得て、それへ己の魂を刺しこむ事。
長い間、彼の理想に見合う女性は見つかりませんでしたが、ある晩春、一人の少女が目の前に現れたことで、とうとう夢が叶い・・・。
選び抜かれた言葉で表現される、無心に眠る少女の白く美しい背中に全身全霊で針を刺し続ける清吉の様子と、二人を包み込む晩春の夜の精緻な描写。
そして、男のサディズムと女のマゾヒズムが、一晩がかりで男の手が少女の背中に刺り込んだ女郎蜘蛛の刺青一つで、女のサディズムと男のマゾヒズムへと変貌していく様は、実に見事です。
卓越した言語感覚に裏打ちされた官能美と情景美の絶妙な均衡がもたらす、倒錯的な世界です。 -
短編ではあるが極上の美を余すところなく濃縮したような美文は谷崎の真骨頂のように思える。
刻一刻と時間が過ぎていき、少女から谷崎文学に登場するような魔性の魅力を持つ女性に変化していく様子にはページをめくる手が止まらない。何度読んでも唸らせられる -
女郎蜘蛛……
フェティシズムの極地、美しい、素晴らしい!思った以上に短い。 -
最高と思う女の背中に彫った女郎蜘蛛の刺青か…。美術品という意味では、刺青だけは美術館では見れない、保存もできない芸術だなと思い至った。
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「美しい者は強者であり、醜い者は弱者であった。」
皮膚や脚に対する執着心やフェティシズムが強烈。女郎蜘蛛のメスはオスよりも大きく、オスを捕食することもあるとのこと。彫られた後の少女の変わり様に鳥肌 -
湧き出づる絢爛怪異な數多の言葉に目が眩む。
どうせなら、麻酔に眠れるまゝの刺青(ほりもの)でなく、意識明らかなときに清吉の「飛び切り痛てえ針」を娘の背なに彫り込んで慾しかつた -
谷崎潤一郎が持つ、女性に対するフェティシズムや独特の美学が豊富に書かれていました。
美しくも妖しい、そんな描写が魅力的な作品です。