宇宙創成(下)(新潮文庫) [Kindle]

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  • 紀元前の神話からビックバン理論へ辿り着くまでの人間の叡智の軌跡。

    誰もが一度は抱いたことがあるであろう疑問、宇宙はどうやって出来たのか?に対する人間が考えうる限り最高の科学で裏付けされた答えががビックバン理論である。だがその理論に辿り着くまでは一筋縄ではいかなかった。モデルをつくあげ、検証し、改訂し、証明し、また新たな観測により覆され、幾度とも実験と観測を重ねて今日のビックバン理論はようやく宇宙の始まりを説明する科学的に裏付けされた理論となったのだ。これにはアインシュタインを始め、何人もの物理学者、宇宙論者、観測者などの叡智が積み重なっている。

    ビックバン理論を知れば知るほど、私たちが住む地球のなんとちっぽけな事か思い知らされる。そしてそのちっぽけな地球に住むちっぽけな生物である人間が、百億年以上前の宇宙の誕生について論理的に考え、検証する方法を見出し、実際に観測できるまでの技術を発展させるというのも、感銘を受ける。

    ただ、本書でも幾度となく触れられているが、科学というのは必ずしも大勢派が正解とは限らない。かのアインシュタインでさえ、大勢の意見に合わせるために自分の理論にでっちあげを付け加えたーそれがのちに誤りだったことがわかり静的宇宙の前提から宇宙は進化しているというパラダイムシフトが起こる。今最善を尽くして裏付けされているビックバン理論ですら、解明できていないなぞは数多にあり、それが今後解明されていくにつれ、理論が覆るということもあろう。本書はビックバン理論に辿り着くまでの人間の軌跡としてだけでなく科学とはなにか?真実とは何か?という点でも考えさせられる。人間は必ずミスをするものであり、無意識のうちに大勢の意見に流されやすい。だがそれは長い時間をかけて何人もの検証に耐え、ようやく確立された理論として認められていく、それが科学である。

    エピローグで触れられている、六つの数字はとても興味深い。宇宙を特徴づけている六つの数字が生命が栄えるような特殊値となっていることは、たまたま幸運なのか、それともなにか意味があるのか?科学を突き詰めれば突き詰めるほど、宗教を連想してしまうのは皮肉なものである。科学はこれまで長い時間をかけてようやく宗教と切り離して考えられるようになったというのに。

  • 相変わらず最高におもしろかった

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著者プロフィール

イラストレーター

「2021年 『世界じゅうの女の子のための日』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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