欲望の資本主義―ルールが変わる時 [Kindle]

  • 東洋経済新報社
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感想・レビュー・書評

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  • 3人の対談を読んで、東ヨーロッパのセドラチェクさんが一番心に残るということは、そういうことなんだろうと思う。

  • 印象に残ったところメモ。
    - 古い理論のほころびを隠すための試みは、実は根本的な間違いから目を背けさせる。
    - 低成長の要因の1つは、量の経済から、質の経済への移行。
    - 現在の市場経済は歪んでいる。銀行を救済すること、損失を社会に転嫁すること、利益を私有化すること、これは真の資本主義ではない。
    - 産業革命によって、変化は不可能だと考えていた人々は啓蒙され、変化は可能だと考えるようになった。
    - 地球温暖化対策、インフラ、教育、テクノロジー等に対する膨大な投資ニーズがある一方で、我々の懐には過剰貯蓄がある。だがその2つの間にあるのが短期主義の金融市場だ。
    - 世界にとって必要なのは総需要の拡大。人、インフラ、テクノロジーへの投資、そして地球温暖化対策に伴う構造転換への投資。
    - マーケティングとは、人々の趣向を変えようと試みること。
    - 新しいテクノロジーによって、ある場所から別の場所へ利益が移行する。全体のパイが増えるわけではない。
    - リーマンショックは、フルスピードで走っていて壁にぶつかったようなもの。スピードを上げたければ、スピード落とすことも必要だ。
    - 人生では絶対に値段の付けられない価値もある。美や愛、友情、精神性。数字は大事だが、数字は自分たちが思っているものを正確には表していない。
    - 私たちが作った社会は、甘い前提で作られている。経済は当然ながら失速したり停滞したりするのに、私たちの社会モデルや年金モデル、そして銀行業務すら、経済成長を前提にしている。でも経済は成長しない時もある。
    - 本物の成長と言うのは、誰もが待ち望んでいた新しい電池が発明されたような場合に起こる。既存の技術では解決できない問題を解決する技術の開発。
    - 豊かな人がより豊かになっても、それによって貧しい人の受ける恩恵は多くはない。
    - 貿易は確かに双方に利益があるが、豊かな国のほうがずっと得をする。
    - 何が労働で何か娯楽かは非常にランダムだ。その境界は曖昧。
    - 人間の欲望の本質は、欲望の太一を手に入れることではなく、手に入れた後、新たにもっと良いものを発すること。
    - 生命の歴史を見ると、データであるDNAがプラットフォーム(である生物)からプラットフォームへと移動しているだけ。藻から始まった生命が生殖やランダムな転換や結合、変形によって生き残り、生命の連鎖となり、現時点では当然のことですが、そのデータが人間と言うプラットフォームにも存在しているだけ。
    - 欲望の三角形。人の欲望と言うものは主体的なものではなく、往々にして他者の模倣であり、人が欲しいものを欲してしまう。
    - 時代の無意識とも言うべき、社会の潜在的な欲望をどう解き明かすかと言う問題意識。
    - 羨望、その本質は、良いものほど壊そうとすること。人間が最も深いところに抱え込んでいる感情が羨望。ネットが大衆消費社会では羨望が強化される。

  • ハイライト(黄) | 位置No. 128
    世界的な総需要の不足が世界経済を押し下げ、減速させているのが現在の状態です。それにはいくつかの要因があります。 一つは中国経済の減速です。〝量の経済〟から〝質の経済〟への移行は世界経済に大きな影響を与えました。ユーロ圏も多くの問題を抱えています。通貨の統合がユーロ圏の経済成長を妨げてきたと私は捉えています。 さらに根本要因がいくつかあります。まず 不平等 の拡大・拡散です。おカネが貧困層から富裕層へと吸い上げられているのです。所得の大半を消費に費やす貧困層に比べ、富裕層は所得に占める消費の割合が小さくなります。その富裕層が貧困層のおカネを吸い上げているために、消費に費やされるおカネが減り、総需要が不足する。それが現在の状況です。

    ハイライト(黄) | 位置No. 179
    GDPは経済パフォーマンスを測るのに適した指標とは言えないということです。GDPには、環境の悪化や資源の枯渇、富の分配方法、その持続性などを考慮に入れていないなど、多くの問題点があるからです。

    ハイライト(黄) | 位置No. 192
    成長」が物質主義的な成長を意味するのだとすれば、経済成長を続けなければならないという考えは間違っています。 しかし、成長を物質主義的な成長に限定しないのであれば、所得の大幅な増加の見込みなしに、力強く、活力のある経済を保つことは、市場経済、資本主義の中で可能だと思います。

    ハイライト(黄) | 位置No. 247
    資本主義は科学と技術を両輪としています。

    ハイライト(黄) | 位置No. 264
    見えざる手〟が見えないのは、存在しないからだということがわかりました。市場は独力では効率的に社会を良い方向には導くことができないので、政府がインセンティブを正しい方向に導く必要があります。

    ハイライト(黄) | 位置No. 540
    スティグリッツ 人並みの生活ができれば十分です。それでも私が一生懸命に働き、学生たちと多くの時間を過ごし、本を書くのは、社会を変革するには、皆がおカネを追うと資本主義や市場経済が機能しなくなるということを多くの人に理解してもらうことが重要だと思うからです。執筆するのは大変ですが、不平等や分断、市場経済の国際的格差、不平等の対価について何冊も書いています。それが、社会を機能させるために必要なことだと信じているのです。

    ハイライト(黄) | 位置No. 778
    私たちが作った社会は、甘い前提で作られている。経済は当然ながら失速したり停滞したりするのに、私たちの社会モデルや年金モデル、そして銀行業務すら、経済成長を前提にしている。でも、経済は成長しないときもあります。 「成長が必要だ」という言葉を常に耳にします。私は「その通り。でも成長していないのです」と答えます。「晴れの日が必要だ。晴れの日が必要だ」とお題目を唱えるのと同じです。「ええ。でも今、外は雨です」──。

  • スティグリッツ、セドラチェク、スタンフォードへのインタビュー。セドラチェクと小林喜光の対談。 セドラチェクが過労死に言及する箇所がとても印象的。

  • 資本主義の根底に流れる「欲望」をテーマにして、経済界の巨人と対話するシリーズの第1作。”見えざる手”なんて存在しない、として市場に任せることの危険性を訴えるスティグリッツ、現在の資本主義は成長至上主義だが、成長はマストではないとするセドラチェク、イノベーションと投資に未来を見るスタンフォード、三者三様の視点からの現状の評価と未来への提言です。

  • ■著者が扱っているメインテーマ
    資本主義の本質とは?

    ■筆者が最も伝えたかったメッセージ
    先進国は自国の成長から外部の貧困に苦しむ人の生活レベル引き上げに
    エネルギーを使うべき。

    ■学んだことは何か
    先進国に住む人は、心のゆとり、今という瞬間、自然の豊かさを犠牲にしてまで
    成長を追いもてとめてしまうのか。
    現状に満足しさえすれば、満たされることない欲望から逃れることが
    出来るのに、いつになったら資本主義のパラダイムシフトが起きるのか?

  • 様々な立場から、資本主義について語ってもらう対談。

    スティグリッツ氏:アダム・スミスは間違っていた。「見えざる手」は存在しない。彼の時代には、まだ製造業の大企業は無かった。市場を良い方向に導くには、政府の介入が必要。皆がおカネを追うと資本主義や市場経済が機能しなくなる。

    セドラチェク氏:経済は躁鬱病。両極はどちらも危険で治療が必要。低金利政策に効果が無いのは明らか。経済は成長し続けるという考えにとらわれすぎてはいけない。経済が成長しないのは、これ以上成長する必要がないから。成長よりも債務を減らすことが重要。

    スタンフォード氏:資本主義は株主に利益を還元するもの。オンデマンドが需要を変える。ビッグデータはインフラ、持っている企業が有利に。テクノロジーが進化して、人間が働かなくてもよくなる世界のことを、話し合っておくべき。成功を示す指標として、雇用率や生産性を見ていては駄目。

  • スティグリッツはオーソドックスな内容だが一番良かった。セドラチェックは面白いが分かりにくい。スタンフォードのインタビューはかみ合ってないし共感できない。

  • やはりセドラチェック氏が一番面白い。例えが適切で非常にわかりやすい。ナビゲータの安田氏の質問も優れていると思う。
    資本主義は成長のためではなく自由のためにあると喝破し、十分な成長のあったが、2007年には信用危機があったなど。
    面白かった。

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著者プロフィール

丸山 俊一(マルヤマ シュンイチ)
NHKエンタープライズ エグゼクティブ・プロデューサー
1962年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業後、NHK入局。「欲望の資本主義」「欲望の時代の哲学」などの「欲望」シリーズをはじめ「世界サブカルチャー史 欲望の系譜」「人間ってナンだ?超AI入門」「ネコメンタリー 猫も、杓子も。」「地球タクシー」他、異色の教養番組を企画・制作。
著書『14歳からの資本主義』『14歳からの個人主義』『結論は出さなくていい』他。制作班などとの共著に『欲望の資本主義』『欲望の資本主義2~5』『岩井克人「欲望の貨幣論」を語る』『欲望の民主主義』『マルクス・ガブリエル 欲望の時代を哲学する』『マルクス・ガブリエル 欲望の時代を哲学するⅡ』『マルクス・ガブリエル 危機の時代を語る』『マルクス・ガブリエル 新時代に生きる「道徳哲学」』『AI以後』『世界サブカルチャー史 欲望の系譜 アメリカ70~90s「超大国」の憂鬱』他。東京藝術大学客員教授を兼務。

「2022年 『脱成長と欲望の資本主義』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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