ヒカルの卵 (徳間文庫) [Kindle]

著者 :
  • 徳間書店
4.06
  • (23)
  • (29)
  • (14)
  • (1)
  • (1)
本棚登録 : 173
感想 : 25
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・電子書籍 (390ページ)

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 山奥の限界集落「蛍原集落」を舞台とした「産みたての卵のようにほっこりとした小説」(あとがき)。

    主人公の村田二郎は、ムーミンみたいな容貌で性格もおっとりほんわか。あだ名はムーさん。「とにかく、ひたすら無欲で無垢で……損得ではなく、善悪で動いてしまう。しかも、それが毎回、思い立ったら吉日だから、周囲を驚かせてしまう」人。「冗談みたいなお人好しで、それでいて、どこかつかみどころがな」く、「とんでもない大失敗を喫してもなお、自分のことを「ツイてる」と信じ込む、まさに「おめでたい」」性格。要するに、「モノの考え方が人とちょっとズレていて、しかも、それがいつもハッピーな方にズレているのだ」。

    そんなムーさんが無謀にも、「俺、近いうちに、卵かけご飯の専門店を出すぞ」と宣言してしまったから、さあ大変。親友の大吉にも相談せず、親から受け継いだ養鶏場を担保に銀行から借金までしてしまった。激怒する大吉。さて事の顛末は…。

    物語は、関係者が順繰りに独白する形で進んでいく。ムーさんの語りは最初だけ。

    タイトルの「ヒカル」は、ムーさんが直子にあげた鶏の名前。尻突つきで片目を失い、傷ついた鶏だったが、直子の世話で元気になり、やっと卵を産めるようになった直後にイタチに殺られてしまう。

    ピュアなムーさんをほっとけない親友や村人達が、卵かけご飯専門店「ヒカルの卵」や直売店「蛍原百笑館」をあれこれとサポートしていく姿が、読んでいて心地よい。うまく行きすぎ、という気もするが(唯一のピンチは、ムーさんの養鶏場がイタチに襲われた事くらいかな)、安心して読める癒され系の小説だった。

    二郎の母親の「努力をした結果、それが実る人と実らない人がいるんではなくて、実るまで努力を続けた人と、実る前に努力を止めた人がいるだけなんだって。そう思ったの」というセリフがいい。

    「兵庫県豊岡市にある「但熊」という卵かけご飯専門店」「東京都青梅市にある「たまご俱楽部」」をモデルにしているという。この卵かけご飯専門店、「脱サラ就農、九条ねぎで年商10億円」でも紹介されてたな。

  • 安心安定な森沢作品です♪幸せの本質とは?とのテーマを追って綴られたユーモラスな小説なので、肩の凝らないほっこりさせて貰える仕上がり。幼馴染みのムーさん 大吉 直子3人を軸に自然の豊かな でも過疎化の激しい田舎を舞台に奮闘奔走する様子がなんともほっこり出来ました。タイトル見た時は囲碁の話かいな?と思ったけど全く違っていました(笑) 当地にも名高い「卵かけご飯専用醤油」を売りの醸造醤油老舗があるし、卵が売りの養鶏所も幾つもあるので頷きながら読み終わりました。でも私はちょっと卵かけご飯が苦手です(笑)

  • やはりモデルがありましたね。
    聞いたことのあるお話でしたが、感動です。うるうるしてしまいます。

    私は首都圏で働いて地元に戻ったのですが、そこで改めて感動したのは、食のおいしさでした。魚貝が、肉が~、…とグルメレポでは話題になるものですが、私が感動したのは野菜でした。野菜は実はごちそうです。皮付きジャガイモだった午房だってそんな身近なものがほんとうにごちそう。ミニトマトなんて止まらなくなります。こちらのスープカレーは野菜が主役なんですよ~実は。

    話がそれましたけれど、地方が元気を失って存続の危機であるいま、農家の方々が生き生きとできる、そんなきっかけを与えてくれるお話(実話)です。お金儲けではなくて、みんなに喜んでほしい、どうすれば喜んでくれるか。みんなで工夫することが楽しいし、みんなが喜んでくれる。その喜びが、たまたまお金になって帰ってきているだけ(お金は喜びの対価でもあるのです)なんですね。

    ほんとにいいお話でした。

  • 限界集落で養鶏農家を営むムーさんが、村起こしのため至高の卵かけご飯専門店「ヒカルの卵」を立ち上げる。

    村起こしは成功するのか?

    人の善意のリレーが素敵な作品だった。

  • KindleUnlimitedでジャケ買い。
    優しい物語でした。読んでいて楽しかった。

    過疎のすすむ限界集落で養鶏業を営むムーさんが、「たまごかけごはん専門店」を開いて町おこしをする、という物語。

    中心人物はムーさんなんだけど、ムーさん視点は最初だけ、その後は、ムーさんの幼馴染や、村に移住してきた若い陶芸家や、村の人たちの視点から物語が描かれるのが面白い。ムーさんのお人好しっぷりがたっぷり描かれているんだけど、それは、外から観察するからこそ。その描き方がとても好きでした。



    この作品はフィクションの小説として書かれているけれど、実際に卵かけご飯専門店を開いた方を取材して書かれたとか。

    村おこし、町おこしは、この物語のように成功する例ばかりではないだろけれど、そういう地域がたくさんあるんだろうなとか思いながら読みました。

    KindleUnlimitedに入っていなければ読まなかった本だと思うので、KindleUnlimitedさんに感謝。

  • 人の良い登場人物で、都合良すぎと思わないでもないが、疲れた週末には、これくらいがちょうど良い。

  • ほんわか、にっこりできる話。やりたいと思ったことは実行して、できるまで諦めないか。きっとうまくいく。

  • TKGの但熊のレジに置いてあったので読んでみました

    森沢明夫さんは、はじめてですが
    高倉健最後の主演作品「あなたへ」の作者さんです

    限界集落に暮らす養鶏場のムーさんは、父から受け継いだ養鶏場を担保に入れてまである計画を実行しようとするそれは、みんな幸せになるための日本初の卵かけご飯のお店
    そして、その先の夢も
    無謀な計画は、村のみんなの意外な協力で前に進んで行く

    とっても魅力的なキャラクター達が出て来る心温まるお話
    とっても良かったです

    森沢明夫さんの他の本も読んでみたくなりました

    そして、TKGも食べたくなりました
    但熊にも行きたくなります(^o^)

  • 故郷の同級生に会いたくなった本。
    どんでん返しがあるにしても、悪いものではなかった。

    卵かけご飯のように、シンプルでも変わりないものを持っている集落の暖かさにほっこりした。

  • 心に染みるような暖かい言葉がたくさんあって、読んでてほっこりしました。田舎の風景も想像しながら読めて、楽しめました^_^

全25件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1969年千葉県生まれ、早稲田大学卒業。2007年『海を抱いたビー玉』で小説家デビュー。『虹の岬の喫茶店』『夏美のホタル』『癒し屋キリコの約束』『きらきら眼鏡』『大事なことほど小声でささやく』等、映像化された作品多数。他の著書に『ヒカルの卵』『エミリの小さな包丁』『おいしくて泣くとき』『ぷくぷく』『本が紡いだ五つの奇跡』等がある。

「2023年 『ロールキャベツ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

森沢明夫の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
原田マハ
ことわ荒太
近藤 史恵
三浦 しをん
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×