花の命はノー・フューチャー ──DELUXE EDITION (ちくま文庫) [Kindle]
- 筑摩書房 (2017年6月10日発売)
- Amazon.co.jp ・電子書籍 (257ページ)
感想・レビュー・書評
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著者のベストセラーノンフィクション『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』から興味を持ちました。2005年に出版された単行本エッセイ集ですが、もとの収録文が105P、追加分が180Pとなっていて元のバージョンとはなかば別物といって良さそうです。
イギリス・ブライトンの、著者が言うところの「貧民街」でイギリス人の夫と暮らす日本人女性の目を通して、ワーキングクラスを中心としたイギリス社会を垣間見せてくれます。旅行者や留学生ではなく、そこに根付いて生活する一市民だからこそ見えてくる現地のひとびとの素顔に触れ、異国生活を疑似体験できます。短い第2章だけは若干、毛色が異なっておりジョン・ライドンを主としてイギリスのロック文化にまつわるエッセイがまとめられています。
現在に比べれば粗さはあるものの、2005年の時点で文章としての基本的なスタイルはすで確立されていたように見受けられます。『ぼくはイエロー~』を補完する一冊としても読むことができる本書は、「それでもやっぱり生きて行け」のメッセージを基調として著者の人柄がにじみ出た一冊です。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
最近いろいろなところでこの著者の名前を見るようになって評判いいので読んでみたら、評判どおりすごくおもしろかった!
イギリスに渡ってイギリス人と結婚、ワーキングクラスの町に暮らしている50代の著者の、2004年ごろのエッセイなどを集めたもの。
そう確かに、イギリスに暮らすエッセイとかいうと、お庭とかアフタヌーンティとかハイクラスのしゃれた暮らしの話が多い気がするけど、ワーキングクラスの暮らしが描かれていて興味深い。アイルランドとかロンドンの下町とかの雰囲気、映画でいうなら「シングストリート」とか「ブラス!」とか「キンキーブーツ」とか「フルモンティ」とかの雰囲気。書かれている著者のご主人や、家族、その友人、近所の人々の話は、短編小説や映画になりそうなエピソードみたいで。とはいえ、文章は飾りがなくて笑えて言葉遣いなんか乱暴なんだけど、そこがまたいい。全体的に、暗くないネガティブ、というか。著者がすぐ憂鬱になってお酒飲んだりしてるんだけど、その憂鬱な気分にすごく共感した。なにしろ「ノーフューチャー」、未来に夢も希望もない、ってはっきり言うところが好き。
「人生はクソ」ってよくいうけど、わたしはいままで、それは生まれながらにどうしても境遇に恵まれないとか理不尽な目にあっているとかの場合で、普通の暮らしを送れているわたしなんかに言う資格がないんじゃないか、みたいなことも思ったりしていたけど、著者は、クソな人生から抜け出す努力ができない自分が悪いと自分でわかっているからこそ情けなく人生がクソなのだ、というようなことをいっていて、個人的にすごく共感したというか、そうだ!と目からウロコ的だった。 -
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