ゴッホ 最期の手紙 [DVD]

監督 : ドロタ・コビエラ  ヒュー・ウェルチマン 
出演 : ダグラス・ブース(山田孝之)  ジェローム・フリン(村治 学)  ロベルト・グラチーク(三宅健太)  ヘレン・マックロリー(幸田直子)  クリス・オダウド(イッセー尾形)  シアーシャ・ローナン(伊藤かな恵)  ジョン・セッションズ(鈴木清信)  エレノア・トムリンソン(冬馬由美)  エイダン・ターナー(丸山壮史) 
  • Happinet
4.03
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感想 : 15
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  • Amazon.co.jp ・映画
  • / ISBN・EAN: 4907953071353

感想・レビュー・書評

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  • アヌシー国際アニメーション映画祭2017で、湯浅正明「夜明け告げるルーのうた」長編部門グランプリ、「この世界の片隅に」審査員賞、に並んで観客賞を受賞した作品。
    一言でいえば、油絵が動く! ゴッホの作品に入り込める! 嬉しい!(たとえば、あ、タンギー爺さんってこんなふうに喋るんだ! とか、医師ガシェの肖像が本当に動いている! とか)

    「アプリでゴッホ風に加工」ではない、実際に125人が参加して、1秒あたり12枚、合計62,450枚を描いてCG合成したんだとか。どうかしとる。
    (参考:「風の谷のナウシカ」56,078枚、「魔女の宅急便」67,317枚、「もののけ姫」144,043枚。)
    なんでもあらかじめ役者が演じた映像をロトスコープした……略図にすれば、映像→油絵→CGアニメーション、と仕立てたということだ。
    ワーカホリック宮崎駿のオーバーワークの原因は、アニメ制作=集団作業だから、本来なら多くを部下に任せて不出来を諦めざるを得ないところ(押井守の割り切り方が対照的)、
    アニメーター出身監督して、「この動きは許せん! リテイク!」と言ったり、「もういい! ここは俺が描く!」と直したりすることにあるのだと思うが、
    そういうリスクを本作がどうあらかじめ回避したのかなど、集団制作のシステム構築を調べると面白そう。

    話としては芥川龍之介「藪の中」式探偵モノ。
    自殺という定説に対してここ数十年他殺説が支持されつつある状況を受けての制作なのだろう。
    関係者に聞き込みに行く郵便配達人の息子、という視点人物の設定が、結構いい距離感になっている。
    そもそもゴッホ伝説を作り上げた、膨大な兄弟間の手紙のやりとりに対して、絡みついていくなら配達人の子、という設定は巧みだ。
    また絵作りにおいて、回想シーンはモノクロ、という思い切った割り切りも、メリハリになっていて判りやすい。
    と話もよくできている。

    思えばフィンセント、人好きと人嫌いの狭間に落ち込んだ人物なんだろうな。
    厭世観の強さと同じくらい人が好きで好きで、だからこそ郵便配達人、その息子、画商の爺さん、主治医、その娘がピアノを弾くところ、定宿の娘、などなど本作の「ノンフィクションな」登場人物が導かれたわけだ。
    また「生きたモデルを見て描くべき」、だから眼の前の人物にイエス・キリスト性が備わっていく……仏性を見出す……。
    そんな宗教観、絵画観、人生観を、現代の映画にアップデートするために、この手法が必要だったのかな、と思ったり。
    原題の「Loving Vincent」は「愛を込めて」という手紙の結びの常套句だが、常套句を越えて「生ける者への愛」という意味合いも備わっているのではないか。

    個人的に嬉しかったのは、証言者として大役を果たすマルグリット・ガシェの演技と声を宛てたのがシアーシャ・ローナンだということ。
    うっかり忘れていたから、出会って恋に落ちたような気持ちになった。

  • この映画の特異性は予告編だけでも先に見てもらうとよくわかると思いますが、「動く油絵」
    <<http://www.gogh-movie.jp/>>
    アニメーションぽくもなくCGぽくもなく、ゴッホの濃密なタッチで映画が展開して行く。1秒で12枚、合計62450枚の絵を使ったという壮大なスケール。

    ストーリーのテーマは「ゴッホは本当に自殺したのか?」という話。
    ゴッホの有名な絵がたくさん出てきて、かつそのモデルになった人々がたくさん出てきて。役者はいかに絵のモデルに似ているか、も含めて選ばれたとのこと。

    油絵という決して新しくないものを使いながら、斬新さを感じる映画です。ストーリーもすごく意表をつかれるようわけではないけど、サスペンスっぽい感じで楽しめたし、誰かを無理に悪者にするわけでもなく、ゴッホという人間が愛され、狭いコミュニティの中であっても認められていた、と思えるストーリー。弟テオとの絆も強調されていますね、テオとヴィンセントは強く繋がっていたと。才能が認められないまま若くして狂気の中で死んだ、と思われがちなゴッホですけど、そういうあまり幸福的でない先入観も多少覆るかも。
    ちょっと目は疲れますが笑、見応えのある映画ですし、(ゴッホの絵の知識をちょっと増やしたあとで!)いろんな人に見て欲しいです。

  • ゴッホの死の真相を探る「アート・サスペンス」なのだが、実写映画を125名の画家たちが〝油絵アニメ〟化するという凝った作りになっている。
    ゴッホの油絵が動き出すような不思議なアニメ映像は、一見の価値あり。

    「豪華キャスト陣の名演と、それを元に描かれた62,450枚もの油絵が、ゴッホの世界に新たな生命を吹き込んだ」……すごい!
    さりとて、かりに普通の実写映画として作られていたとしても、十分優れた映画になっただろう。全編を貫くゴッホの深い孤独が心に刺さる。

  • ~なんてったってゴッホの絵が動くのだ!
    始まりが死後からだが、足跡をたどるうちゴッホの人となり、絵を描く様子が、動くゴッホのアニメーションから立ち上ってくる。このゴッホの絵で動かす、という発想に脱帽。素晴らしい体験をした。アルマンがだんだんゴッホに心を開く様子が、ゴッホの絵が死後世間に受け入れられてゆく過程とも重なってくる。

    2017.11.6劇場で

  • 「妄想と芸術」

    神に選ばれた者たちがいることは何となくわかってました
    当然彼もその中の一人
    ただ才能を与えただけでそれを使う方法までは授けなかったのだろう
    苦難し模索してたどり着いてその先に神の力が発揮されるからではないだろうか
    『MIB』的に言えば彼らは全てエイリアンである
    そう、普通ではないのだ
    じゃ何故神は人間に芸術を与えたのだろうか
    『マトリックス』の仮想現実的な事に似ているのかな?
    そもそも人間のような危ういものを作った理由は?

    始めたことを終わらせるのに加速させるためなのだとしたら納得ができる

    だからこそ今を生きて今を楽しまなければ
    苦悩している暇など微塵もないのだから

  • 学生の頃美術部で油絵をよく描いていたのもあって、正直動くゴッホ作品を観てみたかったのが動機。
    登場人物の表情が本当に豊かで、一体どれほどの油絵を描いたのだろうと思いを馳せていたら、原画を模写したのではなく、俳優が演じた動きをキャンバスに落とし込んでひたすら絵にしていたと。100人以上の画家が描いた数万点の絵の集大成。
    ゴッホ作品は数えるくらいしか知らず、エンディグでわかったのだけど、ゴッホ本人を含む登場人物は彼の肖像画に出てくる実在の人物たち。ゴッホと交流のあった郵便配達の息子がゴッホの死の謎を解いて行く、というストーリー。
    ゴッホは生前は1枚しか絵が売れなかった。それでも、彼は描き続きた。素人同然から始まったのにたった8年であれほどの才能を発揮していた。彼は、認められたいから描いていたのではなく、彼の想いをひたすら表現し続けていたんだよね。
    ゴッホの人物像をもっと深く知っていたらより楽しめると思う。

    2018.2.8

  • 世界中で愛される画家となったゴッホ、そんな彼が残した手紙を真摯に受け止めた制作陣、どちらが欠けても映像にこんなにも説得力をもって観客を感動させることはできなかったはず。

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