知の体力(新潮新書) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • 「知の体力」とは、答えがない事を前提に自分なりの答えを見つけようとする意志であり、想定外の問題について自分なりに対処する考え方の訓練でもある。まずは、自分の頭でよく考えると言うことだ。

    みんなが正しいと言い出したら1回は疑ってみる。
    それらしい言葉への警戒心を持つ。
    など、考えるスタートとして疑問を持つことが重要など、考える癖をつけるヒントがたくさん書かれている良書です。

  • 歌人として有名な著者。
    知力を高める教育のあり方,そもそも知力を高める理由は何か,知力を高めるための大学の役割,など共感する部分も多い。

    分からないことを探して取り組むことが大学の役割,そこで圧倒的な知の世界に触れる教育的価値。多くの人にとっての最後の教育機関で,知に対してどう向き合うのか。

    自他の違いに気づき,自分を守りつつ変えていく。学びを細胞のメタファーで捉える。

  • (audibleで聴く)
    中学入試でよく出る文章という事なので、塾の仕事している関係で聞いてみました。
    答えのない問題など日々考えるためにはどうすればいいのかを述べている。
    内容は刺激的ですが、一部、「知」の鍛錬とは関係あるのかて感じです。

  • 大学というところは、自分に何も教えてくれない。この一言は衝撃であった。これまで、手取り足取り、先生たちから教えられてきた高校までの教育、それらとは全く違った世界に今自分は足を踏み入れようとしている。それはまた、心が震えるような興奮であり、感動でもあった。

    研究者に向いているか否かの判断の基準は、他人の研究が面白いと思えるかどうか。

    能動的に聞くとは、話された内容を、自らのこれまでの知の体系の中に位置づけることであり、位置づけるためには、聞きつつ、常に自分の知の体系を確認し、照合する作業を伴う。

    大学の教師は、教科書にはまだ書かれていない、自分にもまだ充分にはわかっていない。ギリギリのところを学生に伝えようとするところに、その本来の使命があると思っている。

    私たちのこれからの時間、将来の人生に起こる事は、全て想定外の事なのである。想定外の事態を、何とか自分だけの力で乗り越えていかなければならない。生きるとはそういうこと。

    私たちは「自己」をいろいろな角度から見るため、複数の視線を得るために、勉強し、読書をする。それを欠くと、独りよがりの自分を抜け出すことができない。「他者」との関係を築くことができない。

    アウトプットの方法を持たない情報は、知識としての価値を持たないという以外はない。

    知識と言うものは、それが役に立つことだけを前提として、学ばれるものではない。役に立つから学ぶものではなく、大野晋の言うように、1年に1度どころか、一生にいちど使えれば上、ひょっとしたら、一生使えない情報もあるかもしれない。
    しかし、それを前提とした上で、情報をため込むことが、自分の自信になる。

    小学校から数えて10数年、どの学生も、一方的に教えられることに慣れすぎているように思う。

    必要な知識と言うものは、現場で必要になったときに、調べて知るのが最も身に付く。

    学習指導要領が、中学ではここまで、高校では、ここまでと細かく規定して、それ以上の情報の入った教科書を作ってはならないことに、使ってはならないことになっている。

    常に安全な方、安全な方と選び、続けていく人生は、どんどんその人間の人生を小さなものにしていくだろう。それは、私には、耐え難く、退屈なものに思えてしまうのである。

    孟子に「君子は引きて、発(ハナタ)ず」と言う格言がある。
     
    「ちゃらんぽらんのすすめ」という本。

    「あの湯川さんを、とにかく生で見てきたしな」と言う思いが、自分の中にあり、これはとても大切なことだと思っている。

    私が深く尊敬している先生に、木村敏先生がおられる。

    本を出版し、それを読者が購入して読む。これは、今や当然の社会的行為であるが、そのような流通の考えの中で、抜け落ちてきたものが、書かれている内容に対するリスペクトではなかったか。

    「らしく」を教条として、敷衍していった先には、個々の存在の多様性を排除しようとする全体主義的な心証への傾きが形作られるはずである。

    最善手を得られるかどうかが重要ではなく、それを自分で模索するというところに意味がある。

    いつも手を差し伸べてなされる成功体験は、成功体験でもないものでもなく、逆に困った時は、誰かが助けてくれるという安易な依存体質を形成させるだけのことであって、易するところは何もない。

    評価と言うものは、それが良ければ自信を持ってさらに励み、悪ければ、それを分析して克服できるように対策を練る、そういう使われ方をした場合にのみ意味を持つ。

    研究者と言うのは、制限時間なしの職種である。もちろん、大学は1つの職場であり、勤務時間と言うものは決まっている。しかし、研究者と言う観点からは、どこまでが研究の時間でどこからがそれ以外の私的な時間と言う区別が極めて難しい。

    基本的に生命は、保守的である。できるだけ「変わらない」という戦略を優先させることによって、自己の同一性を確保している。しかし、変わらなければ自己の子孫を残すこと、すなわち、自己拡大(自己複製)が達成できない。

    デジタルはディジット、つまり指に由来する言葉である。アナログは連続量と訳されることが多いが、もともとはanna (類似の)とログ(論理)に由来する言葉である。

    真のコミニケーションとは、ついに相手が言語化しきれなかった「間」を読み取る努力以外のものでは無いはずである。それが、デジタル表現のアナログ化であり、別名、「思いやり」とも呼ばれるところのもの。

    肉筆で手紙を書いていた頃、書くという行為の中で、自分の考えが徐々に整理されていくのを実感できた。

    自分だけが感じたことを伝えるために、万人の共通感覚の表象である形容詞に頼らない事は、基本中の基本。

  • ややいかついタイトルおよび前半ではあるものの、最終的には人生に対する優しいエールだなあというのが率直な感情です。大学生の間に読んでおきたかった、出会っておきたかったなあと思う一方、まさに本書に書いてあったような迷いとか挫折とかを(今思えば)味わってきたのをまるっと肯定してもらえた、と言うより肯定的に自分を認めることをさせてもらえたような思いでじんと来てしまいました。これから人生が進んで自分よりも若い人が周りに増えたときに、本書は振り返っておきたいです。人生を貫いて大切な本!

  • ・質問がでないのは何も聞いていないのと同じ
    ・それを知るとは、「それを知らなかった自分」を知ること
    ・安全な方を取るか?面白い方を取るか?
    面白い方取りて〜

  • 大学の講義を受けているかのような内容でした。
    人間の全細胞の長さは地球15周の話と読書の話が印象的でした。
    なんだかまた読みたくなる一冊だと思います。

  • 筆者のこれまでの著書や功績は十分知り得ていない立場ではあるが、本著はまるで新聞の連載コラムを読んでいるような、"新書"として纏める必要があったのか非常に疑問が残る一作だったと思う。

    ・ 終始、抽象論が過ぎる。
      知の体力の説明のひとつに、下記を記していたが、これらは本作中にも幾度となく引用される。著者が所属する大学機関からの視点が主であり、今の教育制度に対する批評にしか聞こえなかった。
    「学ぼうとする知識を役に立つか立たないかという軸でのみ見ようとすると、あらかじめ想定した場面においてしか、その知識は威力を発揮しないものである。大切なことは、何か現実世界で問題が起きたときに、自分が持っている知識、情報の総体を動員して、その場面にどうしたら対処できるのか」

    ・ 著者なりの解が全くない。
      上記と重複するが、大学機関が社会に求められていることが、著者の思うところとズレていることに言及したり、質問が少ない学生を例にあげ、探求心が足りないのであると言う。本作は一貫して、このような著者の愚痴に付き合わされているような構成・論調であり、著作として出版されるほどのものかと思う。

    「知の体力」というそもそもが抽象的なタイトルではあったが、先日ある方が本作を紹介されていたため、購入に至った。これほどまでに本のタイトルと内容がかけ離れているものがあろうか。編集者ももう少し考えようがあっただろうと、ツッコまずにはいられない本だった。

  • 知の体力とは「想定外の問題について自分になりに対処するために」要求される体力のこと。教科書には、”まだわかっていないこと”は書かれていない。
    自分で考える力が生きていく上では必要だと思った。

  • はじめは、学生向けに意識して書かれているようだったが、後半になるに従い、著者の思いが深まり学生でなくても大変勉強になった。特に、「みんなが正しいと言いはじめたら 、一回はそれを疑ってみること」は印象に残った。読むなら最後まで読むのが良いかと思った。

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著者プロフィール

永田和宏(ながた・かずひろ)京都大学名誉教授、京都産業大学名誉教授。歌人・細胞生物学。

「2021年 『学問の自由が危ない』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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