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- / ISBN・EAN: 4995155211332
感想・レビュー・書評
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2018年、韓国。チャン・ジュナン監督。
1987年のソウル大法学部学生朴鐘哲、延世大学生李韓烈の拷問死、デモ鎮圧部隊による殺害をモチーフに描かれた、1987年韓国民主化闘争のナショナル・メモリーを刻んだ作品。ナチスのチェコ総督・ハインリヒ暗殺事件を描いた『死刑執行人もまた死す』もそうだったが、その場所でその現場で「これはいくらなんでも許せない」という良心に動かされた少しずつの行為が積み重なって、時代を動かす大きなうねりが生まれていく。特定の主人公を置かず、群像劇ふうに物語を構成した監督のねらいもおそらくそこにある。
こうした「民主化」と抵抗の記憶が色濃く残る社会だからこそ、「ろうそくデモ」も起こるし、街頭の民主主義が大切にされるのだ。民主主義の形は一つではないし、議会や選挙だけが民主主義の表現ではない。そのことが理解できない「日本人」がいかに多いことか!詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
すさまじい作品。これほどの政変が、1987年にあったのだと、そんな最近であったのだと、衝撃を受けた。韓国に関する様々なことが腑に落ちた作品であった。そして本当に民主主義に忠実な政治を体現しているのは、韓国かもしれないとも感じた。日本ではあんなことは起き得ない。良くも悪くも。
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朝鮮戦争後の韓国では
共産党狩りのために組織された保安警察
通称「南営洞」がおおいに幅を利かせていたという
共産主義ってのは、一口に言えば「貧乏人に優しい思想」
なんだけど
資本家には危害を加えてよいと暴走しがちな危険思想でもあって
しかも恐ろしいことには、労働者の権利を盾に
企業乗っ取りを画策したりとか
…なんて小説を読んだことがあるんだけどね
いずれにせよ民主主義社会を混乱させ
最終的には、経済の一極集中に至らしめる
そんな本末転倒が、まあ容易に予測できるものだから
敵であるはずの共産国家・北朝鮮と
地政的にも血縁的にも非常に近い韓国では
思想防衛のため、これを厳しく規制する必要があったのだ
ところが80年代
目に見えてエスカレートする南営洞の非合法活動と
拷問による魔女狩りにも似た自白強要が
ソウル大学の学生を死なせてしまったことで
その横暴に対する国民の怒りが爆発した
これにより、反共を口実に言論統制を布いていた全斗煥政権は倒れ
国民の直接大統領選挙が実現する運びとなったわけだ
この映画では
ヤメ検のリークと、刑務所の看守によって集められた情報が
隠蔽されようとした拷問の事実を暴き出し
結果、南営洞の主要メンバーが逮捕・起訴されるまでを描いている
しかしながら、非合法組織の横暴を打倒するために
やはり非合法な手段を用いるしかなかった
その正義…否、必要悪の苦さについては
まったく総括がなされていない
ごまかしたと言ってもよいだろう
非合法的に収集された…ねつ造の可能性も疑える証拠物件を
キリスト教会の承認があるからといって
まったく無批判に信用し、まさに「炎上」へと導いた彼らは
「正義は我にあり」で何をやってもよいという
致命的な思想の陥穽にはまりこんでしまっているわけだ
民主主義の観点から、とうてい素直に容認できるものではあるまい -
制作年:2017年
監 督:チャン・ジュナン
主 演:キム・ユンソク、ハ・ジョンウ、ユ・ヘジン、キム・テリ、カン・ドンウォン、ヨ・ジング、イ・ヒジュン、パク・ヒスン、ソル・ギョング
時 間:129分
音 声:韓:ドルビーデジタル5.1ch、日:ドルビーデジタル5.1ch
1987年1月、全斗煥大統領による軍事政権下の韓国。
南営洞警察のパク所長は、徹底した北分子の排除を目的に、取り調べを日に日に激化させてゆく。
そんなある日、ソウル大学の学生が取り調べ中に死亡する事故が発生。
行き過ぎた取り調べが原因だった。
隠ぺいを目論む警察は、親にも遺体を見せないまま火葬を申請。
ところが、その成り行きを不審に思ったチェ検事は、検死解剖を命じる。
これにより、学生は拷問致死であったことが判明。
だが、政府は取り調べを担当した刑事2人の逮捕で事件の幕引きを図ろうとする。
これに気付いた新聞記者や刑務所看守たちは、事件を白日の下に晒そうと奔走。
これに対して、警察の妨害もエスカレート。
その一方で、拷問で仲間を失った大学生たちも、立ち上がろうとする。
1人の大学生の死が、やがて韓国全土を巻き込む民主化闘争へと発展してゆくことに…。