日本人の勝算―人口減少×高齢化×資本主義 [Kindle]

  • 東洋経済新報社
3.86
  • (25)
  • (31)
  • (19)
  • (6)
  • (2)
本棚登録 : 324
感想 : 38
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・電子書籍 (319ページ)

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 日本の状況への切り込み方が実にうまい。データも多く掲載され、シンプルで、わかりやすくしてある。読みながら、これは、「アトキンソンの勝算」かもしれないなと思った。
    学者的でなく、実践的な処方が書いてある。それでもって、引用文を明確にしてロジカルに論じている。菅義偉首相の肝いり会議「成長戦略会議」のメンバーに入るのだ。
    よく調べたら、イギリスの生まれ。オックスフォード大学日本学科を卒業。ゴールドマン・サックス日本のアナリスト。1990年代に日本の不良債権の実態を暴くリポートを発表。現在創業300年超、神社仏閣や文化財などの美術工芸工事を請け負う小西美術工藝社社長。2015年に『新・観光立国論』を出版することで、注目を浴びる。菅官房長官は、アトキンソンと『週刊東洋経済』(19年9月)に対談、「感銘を受け、すぐに面会を申し込んだ」と言う。それから、菅義偉のブレーンとなったのだった。日本政府観光局(JNTO)特別顧問に就任。アトキンソンは、「情報発信より外客受入環境整備」一人当たりの旅行消費額が大きい欧米豪市場を攻めるべきと主張。観光庁が日本版DMO(地域まちづくり法人)の推進も、アドバイザーとなりコントロールする。「勝算」の意味を知っている。
    「日本の生産性悪化の一番の原因が中小企業だから、今の半分以下にする」と言う大胆なことを言っていたので、真意はどこにあるのか?と思って「日本の勝算」を読み始めた。
    バブル崩壊後の金融危機を経て、「失われた10年」が今や「失われた30年」になってる。過去にない大規模な金融緩和(黒田バズーカ)が実行されて5年たつがデフレは脱出できない。
    ①少子化;1950年に全人口の55%もいた24歳以下の人口は、2030年には18%になる。世界全体では2060年までには人口が36.1%増加。アメリカは25.2%増える。日本は32.1%減る。これは、日本の特殊性である。人口減少はそれだけで、デフレ要因。②高齢化もデフレ要因。2020年に65歳以上は3617万人・総人口の28.7%。2060年に人口は8674万人で、65歳以上3460万人で総人口の39.9%となる。65歳以上は資産があっても収入がないのでデフレを好む傾向がある。
    人口の増減は、不動産価格を通じてインフレ率に影響を与える。そのため、人口減少と高齢化は明らかに不動産価格を下げる要因となる。人口増加は不動産価格を上げることとなりインフレになる。
    人口減少によるデフレ圧力は、人口増加によるインフレ圧力より強い。
    人口減少と高齢化が大きな問題であるが、日本のさらに問題は、最低賃金が低すぎることにある。
    低賃金の外国労働者を迎えることで、さらにデフレ圧力が高まる。
    「金融政策で低金利、量的緩和となればインフレ誘導できる」と言っていたが、実はならなかった。金融政策が聞かなくなる時代を迎えている。人口の増減の方が、インフレ率に関与している。
    つまり、個人消費を増やすためには、継続的な賃上げが必要なのである。
    (おぉ。ここまでは、かなりスッキリしている。結局菅義偉首相が、携帯料金を下げることに必死になっているが、そうではなくて、最低賃金をあげればいいのである。また、デービットアトキンソンは、正規と非正規、派遣職員、アルバイトの問題は全く論議しないのが面白い。最高裁の1時金を認めない判決などは、アトキンソンはどう考えているのだろうか)
    そこで、生産性向上のための意識改革をいうのだが、どうも最初にパラダイムを変えることが必要だと言って、GDPにこだわっていることに、意識変化ができていないのだ。
    今までの世界の経済成長は、人口増加モデルであり、日本の高度経済成長は人口増加によって起こった。アメリカの現在の繁栄も人口増加であり、引き続きアメリカは人口増加の傾向にある。
    GDPを人口増加と生産性の向上で考えると、人口減少すれば、GDPは下がっていく。
    アトキンソンは「単純なGDP総額やGDP成長率の目標の設定の考え方を改めるべきだ」という。
    アメリカのように「雇用規制の緩和」「シリコンバレーを作れ(いつの話?)」「起業文化を強化」などという表面的なやり方ではダメだ。GDPの総額では世界3位、問題は日本の生産性は28位にあるという。「経済は縮小してもいい」は妄想と言い切ってしまうのです。やはり、アトキンソンは、GDPに固執するのですね。アトキンソンは、「いいものをより安く」は人口増加モデルだという。日本の労働者の質は世界第4位で、労働者が優秀だけど、経営者がバカという風に暴走していくのである。(基本は、政府が賃金の抑制に全力をあげ、派遣社員制度を作り、パートタイム方式を導入した。結果として、「失われた30年」で給料がどんどんと下がって言ったと言う事実である。)それで、日本の企業数のうち99.7%は中小企業が占め、国民の雇用の7割を担っている。零細企業の比率が高いほど、国全体の生産性は低くなる傾向にある。「日本は、2060年までに中小企業の数を現在(の約360万社ある企業の半分以下、160万社程度まで減らすべきである」というのである。あーぁ。なんでそこにいくかなぁ。「よりいいものをより高く」するために、中小企業を淘汰せよ。日本人の底力は大企業でこそ生きる、企業規模を拡大せよ。と言う。ふにゃ。
    輸出を増やせ。観光客を呼び込め。という発想に突き進んでいくのだ。
    それで、最低賃金を引き上げよと叫ぶ。実に、漫画的なのだ。そう中で、菅義偉首相は中小企業基本法の定義を変えて、再編し、合併で中堅企業化したり、大企業に吸収させ規模の拡大することで問題解決を図ると言うことだ。アトキンソンの勝算はこんなところにも影響してくるのである。それに、竹中平蔵が絡んで、「月7万円のベーシックインカム」などと言う。アトキンソンは、コロナ騒動で会社が倒産し、閉鎖していく様を自分の言っていることが正しいとほくそ笑んでいることだろう。
    アトキンソンは「日本は、賃上げショックで生まれ変わり、日本人が欲が足りないのを変えるべきだ」と言う。「頑張りましょう」で買われるほど甘くはないと言うのだ。人手不足とは、人を安く使おうと言う経済システムを維持したいと言う考えがダメなのである。こう言う経営者を帰るためには、政府が動き出すしかないと言う。これだけ、人口が減少すれば、大学も成り立たない。大学が、若者ばかりを対象にしているからだ。もっと、日本人の人材育成に目を開いて、教育し、そして経営者を教育しろと言う。日本の再教育改革が必要だと言う。
    原因の組み立て方と、目指すべき方向性が、GDPの呪縛から逃れられないアトキンソンのアドバイスに基づいて、盲信して、猛進する菅義偉総理は、かなり危険な道に進むだろうね。

  • ・「最低賃金を引き上げろ→生産性を上げろ」が日本経済を立て直す唯一の戦略
    ・極端に人口減少、少子高齢化が進む日本において上記の結論に至るロジックが様々な文献をもとに書かれている

  • 最低賃金を上げる。
    企業を統合する。
    生涯学習を推進する。
    経営者の質を上げる必要がある。

  • オーディブル。
    経済学に関する論文に基づいて執筆されているが、内容をかいつまんでいるため「それって因果関係なの?相関関係ではなく?」という疑問がたびたび湧いてくる。かと言っていくつも原論文を読みたいわけもなく、難しいところ。
    一冊聞いて、今政府が増税するのは企業に生産性と賃金の向上を迫るためなのでは?国民が企業にそれを求めるよう仕向けているのでは?と勘ぐったりなどした。

  • 1.資産錯覚
     ストック資産が巨大化 vsフローの所得GDP横這い
     皆が大金持ち気分 必至さがない
     政治のポピュリズム 国民の資産を食い潰す
     国債は空証文
    2.本書のテーマは陳腐

  • 人工減少と高齢化によりかつてないほどにピンチと言われている日本。しかしながら何をもってピンチなのかを語れる人は非常に少なく、当書籍を読み込むことで定量的、定性的にこれから何を為すべきなのかを知ることが出来る。
    ・そもそも少子高齢化云々の前に世界全体の人口増加36.1%に対して日本は-32.1%
    ・日本のGDP総額が世界第三位なのは実は人口が多いから。つまりこれからは生産性を高めなければいけない
    ┗現時点の生産性は世界第28位
    ・企業規模は超大事。企業規模は持続性に直結し給与投資に繋がりやすい第一因子
    ・国内企業戦略は持久戦になる。人口減→需要を競争獲得し最後の1社になるしかない
    ・これから大事なのは企業統合による規模の拡大、そして海外市場
    ・企業規模拡大には社員教育によるスキルアップと経営者のスキルアップが初手になる
    ・スキルアップ→規模拡大→給与アップ→海外戦略をもつことが日本の勝算

  • 2015年に刊行された本書。いかに鉄道を存続させるか、新幹線と地方の関係、来日観光客と地方在来線の関係は?などなど。しかし、新型コロナウイルスが流行したことによって、ますます鉄道の在り方、利用客の動向が変わってくる。すこし、楽観的なところもあり、また、東京目線の論じ方もあり、気になった。

  • 筆者は「様々な問題解決のためには、日本企業は最低賃金を上げるべき」の主張を論理的に展開。完膚なきまでにノックアウトされました。その他頷きまくる内容ばかり。参りました!

  • ★3.89(29)
    【筆者】
    デービッド・アトキンソン(イギリス出身。Ox⇒McK⇒政府脳)

    【最初の目的】
    日本人の強みを知るため

    【三つの疑問】
    ①強みとは
    ②勝算の根拠
    ③人口減少の利用法は

    【三つの答え】




    【単語】



    …………………………………………

    ////////////////////////////////////
    【感想】
    根拠が明確だった。

  • 分かりやすくて専門が経済ではない理系大学生でもサクサク読むことができました。

全38件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

デービッド・アトキンソン
小西美術工藝社社長
1965年イギリス生まれ。日本在住33年。オックスフォード大学「日本学」専攻。裏千家茶名「宗真」拝受。
1992年ゴールドマン・サックス入社。金融調査室長として日本の不良債権の実態を暴くレポートを発表し、注目を集める。2006年に共同出資者となるが、マネーゲームを達観するに至り2007年に退社。2009年創立300年余りの国宝・重要文化財の補修を手掛ける小西美術工藝社に入社、2011年同社会長兼社長に就任。2017年から日本政府観光局特別顧問、2020年から政府の「成長戦略会議」委員などを歴任。
『日本人の勝算』『デービッド・アトキンソン 新・観光立国論』(山本七平賞、不動産協会賞受賞)『新・生産性立国論』(いずれも東洋経済新報社)など著書多数。2016年に『財界』「経営者賞」、2017年に「日英協会賞」受賞。

「2023年 『給料の上げ方 日本人みんなで豊かになる』 で使われていた紹介文から引用しています。」

デービッド・アトキンソンの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×