父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。 [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • 父が娘に語る経済の話、読了。後半、すごくいい。遠くからみること、そうやなぁ。

  • 内容は、ホントそのままタイトルの通り。

    他の経済に関する話が、浅く、子供騙しに思えてくるほど壮大で深く、そして「娘に語る」とあるように、著者の愛と慈しみを感じる。

    「なぜ格差があるのか?」「なぜ、人間は地球を破壊するのか?」その問題は経済が関わっていると著者は語る。
    環境問題と経済がどう繋がるのか疑問を持つ人もいるかも知れない。しかし、とても丁寧に、分かりやすく話しが進んでいき、素直に納得できる、とてもよく筋が通った説明であった。

    経済とはお金の発明とともに始まったものと思っていたが、実はそれ以前からのものであり、本書はその経済発祥の由来から説明が始まる。人類が農耕を始めた頃の話しである。

    そして経済の視点から、これまでの宗教や支配階級の話し、これからの環境問題や仕事の自動化などの話しについて言及されているのが面白い。

    語られる全てが、"目から鱗"で、合点のいく話しばかりであった。

    経済というものの"本質"、そして"人類の経済活動の変遷"についてしっかりと学ぶことができる。

    無人島生活をしない限り社会経済に関わって生きていくことになるため、是非本書を読んで、経済の本当の姿を知って欲しい。

  • 金利と物価の関係がわかりやすかった。経済を考えるときは開放系で考えがちだが、じつは閉鎖系で考えるほうがわかりやすいと感じた。

  • 人類の誕生から現在に至るまでの「経済」の大きな流れを、専門用語を用いず、題名にある通り「語るように綴った」一冊です。産業革命はなぜ起きて、それが当時の人々の意識やポジションをどのように変えるものであったのか...など、各時代のキーとなる事象を様々な例えを用いながら取り上げていきます。
    16世紀の劇作家・マーロウの『フォースタス博士の悲劇』と、18世紀から19世紀にかけて活躍したゲーテの『ファウスト』の作品比較において、なぜフォースタス博士は地獄に落ち、なぜファウストは「贖罪(リデンプション)」が許されたのかについて、当時の経済観・宗教観から解説した箇所が特に面白く感じました。
    また、原著のギリシャ語版タイトルは『Μιλώντας στην κόρη μου για την οικονομία』、英語版タイトルは『Talking to My Daughter About the Economy』であるのに対して、日本語版は『父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。』となっています。翻訳者の関美和さんのアイデアだと思いますが、タイトル以外の本文の表現も適切でかつ美しいので読み応えがありました

  • 単に経済学でよく知られた定理や公式を述べるのではなく、歴史的に経済がどのように成り立ってきたかをとてもわかりやすく説明している本。

    経済というのは実体があるようでなかなか掴みづらく経済ってなんだろうとよく思っていたが、この本を読んでなんとなくわかった気になった。

  • 読もうと思った理由
    経済格差について書かれていると思ったから

    気づき
    ・農作物の生産によってはじめて本物の経済の基本にな
     る要素「余剰」が生まれた
    ・じつはオーストラリアでもアメリカでも、先住民は侵
     略者から殺されるよりもウイルスに感染して死ぬ方が
     多かった。侵略者がわざとウイルスを武器代わりに使
     うケースすらあった
    ・市場社会ではすべての富が借金によって生まれる。過
     去3世紀のあいだにありえないほど金持ちになった人た
     ちはみな、借金のおかげでそうなった
    ・循環不能の原因は「金融機関」である
    ・公的債務があまりに増えすぎると大問題が起きること
     もあるが、少なすぎても問題なのだ。市場社会におい
     て銀行は公的債務がなければ生きられないからだ。公
     的債務がなければ市場社会は回らない
    ・機械が生み出す利益の一定割合を共通のファンドに入
     れてすべての人に等しく分配してはどうだろう
    ・中央銀行が本当に独立すると、中立的な存在になら
     ず、選挙で選ばれていない政治的かつ経済的な力をも
     つひとにぎりの権力者の恣意で動かされるようになる
    ・民主主義はとんでもなくまずい統治形態だ。欠陥だら
     けで間違いやすく非効率で腐敗しやすい。だが、他の
     どんな形態よりましだ
    ・市場社会は見事な機械や膨大な富をつくりだすと同時
     に信じられないほどの貧困と山ほどの借金を生み出
     す。それだけではなく、人間の欲望を永遠に生み出し
     続ける

    ギリシャの元財務大臣である著者の記述は説得力があり、格差、借金、民主主義などについての内容はわかりやすかった。格差解消についての提言も勉強させられた。読んでよかったです。

  • 格差が何で存在するのか、銀行は何をしているのか、なぜ経済が破綻するのか、少し理解できた。

    ---------------------------
    ・格差→余剰がすべてのはじまり
    ・通貨が価値を持つためには国家が通貨の価値を信頼できるものにする必要がある→天からの授かりものだと思わせてしまえばいい→権力を維持するために宗教ができた
    ・銀行は存在しないお金を「どこからともなくパッと出す」→そのパッと出したお金が回収できないと銀行、経済が破綻する
    ・交換価値を全てに優先させる社会は、環境保護をとんでもなく軽視するようになる
    ・「節度のあるものは詩人になり、節度のないものはイディオテスになる」。市場社会は人間の欲望を永遠に生み出し続ける。市場経済は人間をイディオテスにしてしまう。
    ・本物の幸福を味わえる可能性のある人生とは、何者かになるプロセスだ
    ・制約は自分の動機を自問させてくれる。満足と不満の両方がなければ、本物の幸福を得ることはできない。
    ・世界と衝突し、葛藤を経験することで、人は成長する
    ・「幸福になるには、それを求めないことだ。追えば追うほど逃げていく。しかし別のことに気をとられていると、そっと肩に止まっている」
    ・遠くから俯瞰して見る視点を持っている限り、君は現実と関わりを持ち続けられる。一方、すっかり内側に入ってしまうと、アルキメデスの視点でものを見られなくなってしまう。
    ・市場経済は、我々人間に幻想を吹き込む。人間はその幻想に押されて行動し、創造性や人との絆や人間性や地球の未来を犠牲にしてしまう。
    ・世界のありのままの姿をはっきりと見るために、精神的にはるか遠くの場所まで旅をしてほしい。それによって、君は自由を得る機会を手にできる。

  • 皮肉屋とは、すべてのものの値段を知っているが、どんなものの価値も知らない人間(オスカーワイルド)

    ときに自嘲気味に触れられるワイルドの箴言と映画マトリックスの世界。著者は最後に経済こそ現代の宗教であると嘯いてみせる。

    彼らニヒリストを産んだ近代経済学の基礎は200年くらい前に生まれた。経験価値から交換価値への大転換。300年で家庭の法則=エコノミーは市場の法則=アゴラノミーに変わった。キーワードは囲い込み。名前だけしか知らなかったのでメモしておく。

    60p
    市場社会は、生産活動のほとんどが市場を通して行われるようになったときにはじまった。そのとき、生産の3要素は商品となり、交換価値を持つようになった。「労働者」は自由の身となり、新しい労働市場でおカネと引き換えに労働力を提供するようになった。「生産手段」の道具は専門の職人によってつくられ、販売されるようになった。そしてもちろん、「土地」も不動産市場で売買されたり、貸し出されたりするようになり、交換価値がここに生まれた。では、この大転換はどのように起きたのだろう

    大航海時代以降、英ポ蘭西各国は羊毛の価値に気づく。イギリスで羊毛を積んだ船は、中国で絹に、日本で刀に、インドで香辛料に交換し、再び英国に戻り羊毛を買う。以降繰り返し、莫大なとみをきずく。彼ら商人の活躍を見た領主たちは、農奴に土地を耕させるのをやめ、土地を柵で囲って農奴をおいだし羊を飼った。世にいう囲い込み。
    こうして放り出された農奴たちは自分の労働力を売る必要にかられる。一度は追い出された領主のもとに再び就職した。18世紀末技術革新が起こって工場産業が興り、農奴たちは今度は工場労働者になった。
    著者はこの300年の間におこった変化を、ファウストの物語の異なる2つの版マーロウ版ゲーテ版に見出している。すなわち借金は宗教的な問題であった。

    たとえ話や寓話など使って説明していてわかりやすい。ジレンマの話(皆で鹿をとるか各人がうさぎをとるか)、オイディプスの予言の自己成就、収容所のたばこがマネーのかわりになると同時にそれが実際のマネーとどう違うのか、など。

    すべてのひとに恩恵をもたらす機械の使い方として、企業が所有する機械の一部をすべての人で共有する世界について書いているが、もうすでにある程度実現できているのでは。
    最後の方で経済学の基本概念を補填する様々な理論への批判を加えている。行動経済学についてはどのように考えているのだるう。

  • ギリシャの元財務大臣によって10代の娘に向けて書かれた経済とは何かという本。簡単な言葉で書かれているため、経済や貨幣について詳しくない人でも簡単に読むことができる。

    貨幣の歴史について語る本を評価する際に、俺は「ソフトマネー」について言及しているかを一つの指標としている。この本は「ソフトマネー」という単語こそ出てこなかったけど、その本質は解説されるので合格。特に銀行は金を貸し出す際に、貸し出す金を実際に持っている必要はないというところから始めるのは偉い。お金は信用なので、こういうことができる。

    他にも「共有地の悲劇」の問題と解決方法、ビットコインの課題など、古今東西の経済にまつわる話をここまで網羅し、コンパクトにまとめているのは簡単なことではない。本当に経済について詳しいのだと思わされる。高校生や大学生にお勧めの本といえる。

  • 経済の仕組みを、分かりやすく説明してくれる。そして、パンドラの箱は開けられ、希望が残された。それは、君だと言われた、そんな気分。確実なのは、選挙で一票を入れて、4年間観察し、次の選挙で誰に入れるか、また悩む。そうやって、真っ正直に選挙に取り組めば、5回目の選挙くらいには、幾らかまともになっていて欲しい。これを、国民全員でやるのだ。歴史の目撃者になりたい。

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著者プロフィール

ヤニス・バルファキス(著) 1961年ギリシャ生まれ。経済学者、政治家、現ギリシャ国会議員。英国、オーストラリア、米国などの大学で教鞭をとった後、2015年1月に成立したギリシャ急進左派連合政権(シリザ)のチプラス政権時において財務大臣を務める。その際の国際債権団(トロイカ)との債務減免交渉の過程は、邦訳『黒い匣――密室の権力者たちが狂わせる世界の運命』(明石書店)に詳しい。財務大臣職を辞した後は、2016年から欧州草の根政治運動のDiEM25(Democracy in Europe Movement)のリーダーを務め、2018年には米国上院議員バーニー・サンダースらと共にプログレッシブ・インターナショナル(Progressive International)を立ち上げた。『黒い匣』以外の邦訳書に『父が娘に語る美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話』(ダイヤモンド社)『わたしたちを救う経済学――破綻したからこそ見える世界の真実』(Pヴァイン)、また、論文に「ヨーロッパを救うひとつのニューディール」(『「反緊縮!」宣言』<亜紀書房>)がある。ウェブサイト:www.yanisvaroufakis.eu/
  

「2021年 『世界牛魔人ーグローバル・ミノタウロス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

ヤニス・バルファキスの作品

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