蜜蜂と遠雷(下) (幻冬舎文庫) [Kindle]

著者 :
  • 幻冬舎
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感想・レビュー・書評

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  • 最高に良かった!

    恩田陸さんの個人的には最高傑作かと(まだたくさん読んだわけではありませんが…)

    プロのピアニストを目指す青年たちの物語。コンクールでのライバルがお互いに切磋琢磨して成長していく姿をイキイキと表現しています。

    まったくピアノを弾けない私でもホールで演奏を聴いているかのような感覚に陥り、一緒に過ごしているかのようです。

    近年の読書人生の中でも指折りの作品です。
    改めて読書って、時間と空間を超えて旅ができるステキなものだと再認識しました。

    超オススメ!

  • コンテストの舞台裏をこんなにも丁寧な描写で、心情や葛藤を読者に伝えられる筆者は凄いなと感じた。みんながそれぞれのピアノを聴くことで、自らの人生を前向きに考えて行けるようになって、やっぱり仲間は大事だなと思う。

  • 第156回直木三十五賞
    第14回本屋大賞

    一気読みをするほど面白かったです。
    音楽の知識が全くないので、目次の次にずらりと書かれた課題曲一覧とプログラムを見て気後れしましたが、音楽用語がわからなくても読みやすくて一観客として一緒に緊張したり興奮する体験ができました。
    ピアノに限らず、天才達が競争し合い、成長して成功していくストーリーは何故か面白い。
    天才にしか見れない景色や解釈を共有できるし、完全に身内目線で応援してしまいます。
    見事な演奏を表現した文章を読みながら一緒に気持ちが盛り上がり感動します。
    審査員が結果発表をする時には本当に緊張しました。どうか風間塵が呼ばれますように!と。
    第三次予選までのボリュームに比べて、本選はややあっさり感じて、本選はおまけのように感じました。
    できれば本選のオーケストラを交えた演奏についての、三枝子やナサニエルの感想も読みながら最後まで一緒に衝撃を受けたかった。
    知識のない私でも音楽を感じて楽しめた幸福感を感じる一冊でした。 

  • 音楽をモチーフに小説を書くのはとても難しそうな気がするのだけれど、この本はとても自然に、とても美しくそれおやってのけている名作なんだと思う。
    恩田陸のイメージが本作で大分変わった。

    僕はいわゆる初期の彼女の作品のファンで、それこそ六番目の小夜子とか、麦の海に沈む果実とか、月の裏側とか、熱中して読んだ人間なので彼女のリーダビリティに関しては信頼していて、ストーリーテリングの力とか、文章を読むだけで抽象的なものを伝える力とか、目に見えないものを頭のなかに再現する力とか、そういったところはものすごく尊敬している。

    ところがある一時期から作品をあまり読まなくなった。
    いつ頃からだろう。ネクロポリスあたりからかもしれない。
    何度か大きく膨らんだ期待感が、肩透かしで物語が終わることが続いて、僕はなんだか、それに裏切られたような気がしたからだと思う。当時高校生くらいの僕はいつも違う世界にぐいぐい連れて行かれて、それでその世界に置き去りにされてしまうような寂しさを感じることが多かった。当時から売れっ子作家だった恩田陸さんが作品のなかでやりたかったこと、でもやれそうでやれてないのではないかと感じること、年端も行かないイチファンが何を言っているのかと自分でも思うが、そういうのを目の当たりにしたくなかった。
    だから恩田陸さんの本を読むのは本作が久しぶりだ。

    受賞作だし、映画化もしたし、ということで読み始めてみたが、読み始めてみると本当におもしろかった。

    ぐいぐい物語の世界に連れて行ってくれるその筆力は健在だし、目に見えないものを僕の脳に描き出してくれる文章力はさすがだし、人物はみんな愛すべきキャラだし、なにより音楽への深い造詣。音楽については門外漢だが、それでも頭のなかに優雅で格調高いピアノの調べがずっと鳴り響いている。情熱的に、あるいは物悲しげに、感動的に、でもどこか儚く。
    終盤に向けてスピードは衰えず、でも決して性急に筆を運ぶことはない。
    きっと登場人物がこの幸せな音楽体験が終わってしまうことを惜しむように、この幸せな読書体験が終わることを惜しむ気持ちにさせてくれる。

    いわゆる神の視点で書かれているので、映画的で、マンガ的。そして語りかけてくる言葉に恩田陸がいる。
    恩田陸が、この素敵な物語を届けてくれていることを感じる。でも、決して嫌味でなく、ドキュメンタリー番組のナレーションみたいに、自然にそこにいる。

    以前からある意味少女趣味的な世界観を醸し出すのはうまかったと思うのだ、長身のイケメン、天才性、甘酸っぱい恋。でもそれが、本作はいい塩梅になっている。
    現実的で、嫌味がなく、愛すべき人物描写と、世界観がそこにはある。

    見えないものを音楽を通して聴衆の脳に再現する登場人物たちと、文字を通して実際にはない世界を頭に再現する作家と。
    きっと彼らはどちらも天才だし、でもきっと驚くべき努力をしているし、華やかだけれども人間臭く生きているのだろう。

    作家の力量と、書きたいものがマッチした、間違いなく良作だなあ。
    ピアノが弾けないことをこんなにもったいないなと思った作品はまたとない。

  • ピアノコンクールだけで上下巻一気に読ませるのはすごいな。クラシックじゃなくても音楽好きにはたまらなく面白い。

  • 初めて読んだ時も今回3回目読んだ時も鳥肌が立つ。このように読んでいて鳥肌が立つ小説はなかなか他にはないと思う。

  • めっちゃ面白くて一気読みしてしまいました!!
    風間君のギフトとしての役割や栄伝さんの復活劇、明石さんの覚悟など、感慨深いものも多く何より展開が面白かった!解説にも書いてありましたが、ピアノコンクールという市場としてはマイナーなトピックでこんな面白いなんて…浜コン行ってみたくなりました…
    音楽とは何か?というのを考えさせられましたね…クラシックとは?歌謡曲とは?僕にとって、私にとって、あなたにとって音楽とは?など、今一度考える機会をいただき感謝です!音楽に与えられるだけ、神々の技…うーむ…

  • 面白かったです、途中まで……。

    2次予選くらいまではコンクールのドキドキ感とか音楽の表現の仕方とかとても楽しく読んでいたのですが、明石くんが落ちたあたりから天才どもの見ている世界の次元が違いすぎて、凡人全く感情移入できず……。天才は天才なりに色々考えて葛藤しているんだけど、影響を受けるのも比較するのも天才同士でやってるので疎外感がね、すごかったね。
    お話自体も最高に盛り上がるのは予選最終日でして、この辺りでキャラの成長度合いがマックスになり、お話の伏線も回収されるので、本選がなっげーエピローグになってしまった感がすごかった。作中でコンクールの緊張が緩んでしまったように、読んでるこっちの緊張感もだるっだるに……。
    本選の結果も文庫のラストにぺろっと一枚順位結果が入るだけ。コンクールの予選からずっとコンテスタントたちを追いかけてきたというのに!結果発表ないってどういうことだってばよ?!
    おかげで長い話を読んだ~~~という満足感もカタルシスも得られないままなんとな~く終わってしまって残念だった。

    苦手意識は払拭できたけど、スピンオフとかはもう良いかな、という感じです。

  • 音楽というコンテンツを文字でどう表すか気になっていたが、読み終えてみればむしろ文学の良さが出た作品だと感じた。
    登場人物それぞれの葛藤は、天才たちの悩みでなはなく自身に重なるところもありより心情理解ができた。

  • ただただ素晴らしく星5つでは足りない。音楽とコンクールの心象風景をこんなに上手に言葉で表現することができるのかと舌を巻いた。1次予選から本選までのコンクールを、出場者、審査員、指揮者、ステージマネージャー、調律師、様々な視点から体験できた。聴いたことのない作品は、それこそ読書の幕間にYoutubeでチェックしなが読む、というなんとも今風な楽しみもあった。著者の他作品も読みたい。

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著者プロフィール

1964年宮城県生まれ。92年『六番目の小夜子』で、「日本ファンタジーノベル大賞」の最終候補作となり、デビュー。2005年『夜のピクニック』で「吉川英治文学新人賞」および「本屋大賞」、06年『ユージニア』で「日本推理作家協会賞」、07年『中庭の出来事』で「山本周五郎賞」、17年『蜜蜂と遠雷』で「直木賞」「本屋大賞」を受賞する。その他著書に、『ブラック・ベルベット』『なんとかしなくちゃ。青雲編』『鈍色幻視行』等がある。

恩田陸の作品

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