ジェリーフィッシュは凍らない 〈マリア&漣〉シリーズ (創元推理文庫) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • ①事件の真相を追う刑事のマリアとレン
    ②不時着したジェリーフィッシュの乗組員
    の2つの時間軸でストーリーが進んで行く。

    ①のキャラはわかりやすかったが、②の人たちの関係性が弱く、
    もう一つの事件を引き起こした理由というか説明があっさりしていた。

  • 再読。初読時は本格ミステリとしての情報の出し方が気になってしまったが、余計な先入観なしに楽しめば非常に面白いミステリだった。ジェリーフィッシュという架空の技術がワクワクするし、舞台としても秀逸だ。『十角館の殺人』を意識して書かれていることも踏まえても展開の仕方は自然、少々動機が揶揄されているようだがそれも含めて「らしい」ではないかと思う。その動機にしても、個人的には「十分すぎる」と感じた。この複雑に過ぎる事件の首謀者がそれだけの行動に想いを乗せるならば、動機に込められた感情もそれだけのものであるはずだ。

  • しっかりとしたミステリーなのに、犯人への道筋があやふやな感じがした。そこ、言い逃れられたらどうしようもなくない?…とは言え、犯人の立場に驚きもあったし、面白かった。
    謎につぐ謎。推理するほどに生まれる矛盾。こういうの大好き。
    最初は会話内の1つの台詞が長いのに多少戸惑った。
    船内、捜査、独白という構成での進行はとても楽しめた。 このシリーズ、また読もうと思う。

  • トリックが浮かび、それを可能にするため、惹き立てる設定を組み上げ、魅力的な舞台を作ってキャラクターを配置してと、本格作りは逆算だと思う。
    ラストのネタバラシを印象強くするため、読者をそのアッと驚くラストまで引っ張っていかなければいけない。
    そのための設定は架空でいいわけだし、現実離れして構わない。
    とんでもSF大いに結構。
    ただ、ありえない舞台を作るなら、それでも読者を納得させる筆力が必要だろう。
    全体的に弱いんだよなあ。
    トリックも犯人そう驚くものじゃない。
    無理して「そして誰もいなくなった」に似せなくてよかった。
    探偵もキャラは濃いいが、大した仕事していない。
    全体的にぼやけちゃったって思うのは私だけ?
    それでも破綻してないし、面白いと思うし、今後に期待。
    仰天のトリック、意外な犯人、鮮やかに謎を解くエロいマリアを読みたい。

  • 本書の宣伝で『そして誰もいなくなった』が使われ、あちらこちらで見聞きしていた表紙だったので久しぶりに密室もの系でも読んでみようと手にとった。

    読みだして真っ先に思ったのは、あれ、これ翻訳本じゃないよね? 日本人が書いてるんだよね? と再確認してしまったことだ。これはきっと多くの人に当てはまるのではなかろうか。
    私はそれが良いとも悪いとも思わない。ただ、登場人物が一人を除いて全員西洋人名で、それも殺される人物たちのキャラ造形がほぼないに等しく、だれがだれかさっぱり馴染めなかったことは最後まで大きなマイナスだった。

    本書は著者のデビュー作だということだし、著者さんは東大卒の理系ばりばりの方なのかなと勝手に推測して、物理と科学落ちこぼれの私はよくもこれだけの空想科学ネタを舞台にミステリなんて書いたものだなあとひたすら感心するのだけれど、いかんせん、このキャラの薄さ=事件のモチベーションの薄さ=説得力の薄さに最後までつながってしまったのが残念だった。

    最終的な私の評価は『そして誰もいなくなった』を宣伝文句に使ったのが良くも悪くも…というので★3つ。

    たしかに閉鎖状況で次々死体が見つかるとあれば『そして誰もいなくなった』を彷彿とさせるのかもしれない。
    が、あの本のすごさは「意味不明の童謡に乗せて次の殺人が起こるのが必然である」という不気味さだ。あの心理的圧迫はみごとだ。本のなかの人物たちも、そしてそれを読んでいるこっちもぜったいに逃れられない。

    本書も私的にはたしかに途中まではおもしろかった。が、後半からは大きくトーンダウンしてしまった。いちばんの見せ場であるはずの犯人独白シーンで緊張感が続かないというのは、私はミステリではけっこう稀な経験だ。

    ただそのつまらなかった最終シーンで、この本のなかで唯一といっていい心に訴えてきた手ごたえのある描写があった。

    P370
    あんたが馬鹿だっていうのはね――レベッカに対するあんたの凄まじい思い違いよ。
    レベッカとあんたが他人同士? んなことあるわけないでしょ。
    あんた、レベッカからノートをどうやって手に入れたの。力ずくで奪ったの? 違うでしょ? 彼女からノートを託されたんでしょ、どういう状況か知らないけど。
    あんたの知ってるレベッカは、世界を変えるほどの研究成果が書かれた大事な実験ノートを、どうでもいい他人にほいほい渡すような娘だったの?」
     青年の顔に、初めて――呆然としたような表情が浮かんだ。

    ここで「呆然」なんて言葉で逃げず、もっとほかの彼の心理描写を的確に表す描写をしてほしかったところだけど、なによりそこにいたるまでの前セリフがよかった。
    こういう人物描写がこの人できるんじゃない。
    それをこの(多くの読者がいけ好かないと評している)女性刑事の口から発せられたというのが嫌いじゃない。

    これで機会があれば次も読んでみたい、この刑事シリーズにもう少し期待したいと思った。

    ====データベース====
    特殊技術で開発され、航空機の歴史を変えた小型飛行船〈ジェリーフィッシュ〉。その発明者であるファイファー教授を中心とした技術開発メンバー6人は、新型ジェリーフィッシュの長距離航行性能の最終確認試験に臨んでいた。ところが航行試験中に、閉鎖状況の艇内でメンバーの一人が死体となって発見される。さらに、自動航行システムが暴走し、彼らは試験機ごと雪山に閉じ込められてしまう。脱出する術もない中、次々と犠牲者が……。
    21世紀の『そして誰もいなくなった』登場!
    精緻に描かれた本格ミステリにして第26回鮎川哲也賞受賞作、待望の文庫化。

  • あらすじ
     1983年、U国。飛行船に替わる小型飛行船「ジェリーフィッシュ」が発明されてから10数年。その発明者である教授と開発チームはさらに改良を重ね、試験運行に臨んでいた。しかし、途中で教授は死亡。運行プログラムは何者かに書き換えられ、吹雪の中、機体ごと雪山に閉じ込められてしまう。
     
     面白かったー。SFもの?現代に似た架空の世界。U国という、アメリカをモデルにした?国が舞台。設定が特殊だけど、ミステリーとして十分楽しんだ。航空機内での描写、犯人の思い出、捜査する警察の3つの視点で書かれている。確かに「そして誰もいなくなった」が骨組みにあるけど、読ませる書き方になっていた。

  • この間、あまりにも疲れているのか、推理小説を読みたい気分だ。とりあえず、医師の知念実希人を2冊読んだので、市川憂人を読んでみようと思って読んだ。ふーむ。「ジェリーフィッシュ」という飛行船の乗組員6人が、全員死んでいたのである。それは墜落事故ではない。ミステリー小説の『そして、誰もいなくなった』ということだ。
    設定は、1980年代で、U国で、事件は起こる。時代設定がうまい。インターネットが発達していないといのが、ミソだ。インターネットが発達してしまうと、登場人物は簡単に情報を集め、連絡することができるからだ。フィリップ教授とその研究員たちの研究グループが「真空気嚢」を生み出したことが始まり。この技術によって航空機の可燃性ガスは不要になり、四十メートルにまで小型化することにも成功。鍵は窒化炭素という特殊な素材で、これを合成に使うことによってダイヤモンド以上の硬度と樹脂の割れにくさを併せ持った軽量の「気嚢」つまり飛行船が実現できた。
    6人の死を捜査するのが、マリアと九条漣の刑事コンビ。マリアは、ナイスバディなのだが、ぼさぼさの赤髪、くたびれた服、泥が付着した靴など、姿を構わない。とにかく、朝寝坊のようで、事件が起こるたび、部下の漣がマリアを電話で叩き起こして現場まで引っ張っていくという。朝食は九条漣が用意する。餌付けされている。それに、マリアは、天然ボケ的なところがあり、基礎知識があまりない。部下の九条漣は、冷静沈着で鉄面皮で慇懃無礼。マリアをいつもたしなめる。
    しかし、マリアの推理力と交渉力は抜群で解決に導く。このコンビが、ジェリーフィッシュ6人死者事件を解明する。問題は、窒化炭素の開発技術なのだが、フィリップ教授が開発したというのだが、どうも、実験がうまくいかず、Rにもっと聞いておくべきだったなどとメモをしている。
    Rとは、レベッカという名前で大学1年生で、とても優秀な学生だった。父親が化学者で、子供の頃から、化学実験に親しんでいた。実験の最中に青酸ガスを吸って死んでしまうのだった。それに、レイプされた跡もあり、殺されたのかもしれない。でも、その実験室は密室だった。
    結局は、「真空気嚢」の技術は、レベッカが開発したのだった。レベッカが死んだ後、フィリップ教授チームが、特許を申請したのだった。レベッカの実験ノートが見つかって、特許の無効を訴えるって、無理があるなぁ。それは、先願主義という原則の意味は間違えて理解しているのではないかな。
    実験ノートで、特許は成立しない。まぁ。
    結局は、レベッカが復讐したように工作した犯人がいたのだが、ステルス機能を持ったジェリーフィッシュが並走していたということだけど、ふーむ。無人飛行が可能なんだね。犯人の告白も説明があるので、物語は重層的ではある。まぁ、刑事マリアはちゃんとカラクリを見抜いてしまうのだが。
    結末は? この物語を作り上げたことに、作者の想像力、創造力があるんでしょうね。結局は、推理小説も、ルール作りがポイントだ。

  • 雪山に不時着したジェリーフィッシュで起こるクローズドサークル。
    犯人の殺人動機はすごく共感でき、ラストパートはとても考えさせられる内容となっています。

  • なるほど!こんな乗り物あればな。空中での閉鎖空間殺人が珍しくて面白かった。

  • たまに見ている読書YouTuberの方が好きだと言っていたので読んでみました!

    うーん……!
    話があわないわけでも、キャラがあわないわけでもなかったと思うんですが……。
    オチが微妙に「そうだろうな……」という感じで、あまりびっくりしなかったからかな。シリーズを読んでみたいな、という気持ちにはちょっとなりませんでした。
    とはいえ、またなにか読みたいな~という気持ちになって手に取るかもしれません!という感じの読後感でした。

    出てくるキャラクターの中で、被害者の子が一番好きだったな!
    もう会えないんだ、残念だなという気持ち。
    殺される側に同情できない作りだったのはエンタメとして良かったです。

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著者プロフィール

1976年、神奈川県生まれ。東京大学卒。2016年『ジェリーフィッシュは凍らない』で、第26回鮎川哲也賞を受賞しデビュー。他の著書に『ブルーローズは眠らない』、『グラスバードは還らない』(以上東京創元社)、『神とさざなみの密室』(新潮社)など。

「2023年 『東大に名探偵はいない』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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