- Amazon.co.jp ・電子書籍 (351ページ)
感想・レビュー・書評
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世間で認識されているような人格者というイメージとはだいぶ違う、非常に人間臭いというか、煩悩と業の塊といったかんじの高畑勲と宮崎駿という二人の天才を、上手く御した鈴木敏夫という人物の回想録。
仕事をしない、宮崎駿に言わせると極度のナマケモノであるパクさんこと高畑勲にどうにかして作品を作らせるようあの手この手を使ってその気にさせる下り。
そして若手の才能に嫉妬し、俺ならもっとうまくやれる、と敵愾心をむき出しにし、ジブリ内でのウェイトが高畑監督に傾いてるのを感じるとむくれてボイコットなどする駿監督。
それぞれの作画監督に起用するスタッフを取り合ったり、ジブリ内も常に順風満帆で平和に運営し続けていたわけではなく、スポンサー探しや配給会社との関係、資金調達や興行成績など、鈴木敏夫プロデューサーがいかに暗躍していたのかが窺い知れる。
ジブリの歴史を読むたびに、やっぱりジブリブランドが確立して、国民的アニメ作家となり、ファンが定着して、毎回毎回邦画のトップを取るような興行成績に驚かなくなってからの、安定したジブリの話は全く面白くない。
若き高畑、宮崎、そして鈴木の三氏が、持てる力を常に120%注ぎ込み、全身全霊で絵を描き、次コケたらアウト、というような博打を打ち続け、そしてそれに勝ち続けた頃のヒストリーがわくわくして堪らなく面白いのだ。
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宮崎駿の執念やこだわりが圧巻。こんな世界もあるんだなと呆然と感心
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ジブリファンなら必読書!
高畑勲と宮崎駿、2人の天才の言動がとにかく面白い。子供のように無邪気かと思えば、博識ぶりに周りを驚かしたり。
変人ぶりは高畑勲の方が上なんですね。
宮崎駿はもっと初期の段階から評価され順風満帆のイメージでしたが、そうではなく、彼が業界で揺るぎない地位を得たのは、千と千尋以降だったのが驚き。
ジブリというヒットメーカースタジオであっても、経営が安定しているという訳でもなく、アニメ業界の厳しさを知りました。
鈴木敏夫はジブリの人気にあやかっているだけのプロデューサーだと思っていまでしたが、天才2人の無茶振りに振り回されつつも調整役をこなす縁の下の力持ちです。
彼の奮闘ぶりもこの本で知ることができました。 -
この本は、ナウシカから始まるジブリ作品を年代順に、企画段階からたどり、完成まで結実していく過程が回顧される。一つの作品も一筋縄ではいかず、喧々諤々のドラマがある。ジブリは日本の映画史で興行記録を塗り替え続け、その過程でクリエイションのあり方そのものを再定義し続けてきた。
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『天才の思考』というタイトルだが、どちらかというとジブリの映画制作裏話を含めたドキュメンタリー的な内容。制作過程の話しはどれをとっても面白い。
このドキュメントを映画化したら面白いと思う。 -
ジブリ映画の製作裏話
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宮崎駿の大ファンを自認する妻が図書館から貸出。同じく大ファンである夫も、妻の読後に読ませてもらった。
それほど読書好きでも無い妻が「面白い!止められない!」とつぶやきつつ一気に読んでしまったのも良く分かる。実に面白い!リズムがいい!鈴木敏夫なる人物、ストーリーテラーとしても編集者としてもやはり只者ではないのだ。
内容の随所にエピソードとして登場するジブリ・宮崎作品の殆どを、ぼくら夫婦どちらもほぼ全て何度も鑑賞している事実もまた、本書が大いに楽しめた要因の一つであることも間違いない。
これまであまりその人物を良く知らなかった高畑勲という、もう一人の天才アニメーターの生々しい人物像に触れられたのも、大きな収穫の一つ。 -
「はじまりの本」です。
内容:『風の谷のナウシカ』から『風立ちぬ』、『かぐや姫の物語』までジブリの20作品がいかに作られたか、間近で支え続けたプロデューサー鈴木敏夫が、高畑勲と宮崎駿について語る秘話満載のドキュメント。 -
「風の谷のナウシカ」から「思い出のマーニー」まで19本の(設立前も含む)スタジオジブリ作品の制作を振り返る回顧録と、「かぐや姫の物語」公開後に行われた高畑氏、宮崎氏との鼎談が収められています。回顧録については各作品一節ごとになっているのですが、『かぐや姫の物語』『猫の恩返し』の二作品は個別に扱われることがなく、『かぐや姫』についてはあとがきで鈴木氏の気持ちの整理がつかなかったため収録しなかったと語っています。
著者の経歴をたどった『仕事道楽』でもスタジオジブリ作品の振り返りはある程度なされていますが、作品や両監督をはじめとしたスタッフたちの詳細を知るうえでは、一作ごと丁寧に作品そのものに焦点を当てた本書のほうがはるかに充実しており、高畑・宮崎両監督の姿やジブリ作品群を、最も近い立場にあった鈴木氏から見たジブリを知りたいというニーズに合致しており、満足しました。
各作品の配給や宣伝にいかに苦心し工夫をこらしたかといったプロデューサーである著者ならではのエピソードはもちろん、高畑・宮崎両氏の人物像や特徴、作品との取り組み方を存分に知ることができ、そのほかのジブリスタッフや一時期は作品づくりをともにしてその後ヒット作を生み出した、押井守、庵野秀明、細田守、片淵須直などそうそうたるアニメーション作家も登場しており、日本アニメーション界の足跡を記す資料のひとつとしても貴重ではないでしょうか。
鈴木氏自身については、本書のエピソードを読む限り、作品の選択やストーリー、タイトル、スタッフの選定、芸能人起用、その他もろもろに多大な影響を及ぼしており、もともと鈴木氏に対して持っていた、両監督が才能を発揮するために作品自体にはタッチせず裏方として奔走するイメージが覆され、ジブリ作品にとって著者が不可分離で大きな要素だと思わされました。
本書ではスタジオジブリとその作品のいわば光の部分がとくに強調して語られているようにも感じました。両監督と鈴木氏以外のスタッフから見たジブリがどのようなものであったかについても機会があれば知りたいところではあります。