雪降る夏空にきみと眠る 下 (竹書房文庫) [Kindle]

  • 竹書房
3.00
  • (0)
  • (0)
  • (1)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 4
感想 : 1
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・電子書籍 (287ページ)

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 何が夢でどこからが現実か。冬季取締局、製薬会社ハイバーテック、非合法組織〈本物の眠りを求める運動〉の一体誰が信用できて誰が悪者なのか。物語は錯綜に錯綜を重ね、混沌としていく。

    そして下巻後半でやっと、強欲な製薬会社ハイバーテックが、自社に都合の悪い情報の漏洩を防ぐため夢を操作し、敵対勢力を駆逐しようとしていたことが分かってくる。ハイバーテックの悪事とは、ナイトウォーカーを回復させる方法を秘匿し続けることであり、ナイトウォーカーを発生させる確率が高い低価格の新薬モルフェノックス―Bを庶民に広く提供しようとしていること。「モルフェノックス ―Bは、ちょっとだけ安い代替薬として発売されるんだけど、睡眠者がナイトウォーカーになる確率が通常より高い傾向にあるんだ。薬の販売で収益が大幅に増えるだけじゃなく、すごく儲かるうえに不平を言わない労働力として、再配置や貸出ができる大きな資源が用意されるってことさ」。

    「冬眠性朦朧症」、「夢記録機」、「夢現空間」、「夢の能動的制御」、「夢の分身テクノロジー」、冬の魔物「グロンク」等々、どんなものなのかなかなか掴めないまま物語が進んでいく。モヤモヤ感残るなあ。

    クライマックスは、ナイトウォーカーを回復させる方法が記録されたシリンダーを巡る攻防かな。主人公ウォンキーは弱々しく頼りないが、様々に翻弄されながら最後まで正しくあろうと振る舞い、大きく成長していく。本作、奇抜な設定に戸惑いながら読み進めたが、結局のところ主人公ウォンキーの成長譚だったんだな。

    そして、とにかく人が次々死んでいく物語だった。「冬には、人が死ぬ。冬はそのためにあるのだ。」

    この物語の人々は体毛が濃いらしい(冬には身体中に冬毛が生える??)。「王妃っぽくて、背が高くて、トップレスで、きれいな冬毛をまとってる」。これはある絵画に描かれたクリュタイムネストラ(ギリシャ神話の女性キャラクター)の描写なのだが…。

全1件中 1 - 1件を表示

ジャスパー・フォードの作品

最近本棚に登録した人

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×