[ふゆ side]
絶望的なエピソードが畳みかけるように展開される下巻。本編の最後は余韻を残す手向けのように開いたまま閉じられるけれども、その後に付置されている描き下ろしによって、読後感はむしろハッピーになってしまうという、不思議な読み口の話になっていた。
実際に起こった犯罪が元になっている話でもあるから余計に、鬼戸が流れるように、周囲、特に上司たちの思惑に振り回されて、罪に手を染めて堕落していく様が、リアリティをもって立ち上がってきて、鬼戸という人物の特殊性があるとしても、ヒトがヒトもどきに扮しているようなことは、そう珍しくもないのかもしれないと思ってしまった。