ウイグル人に何が起きているのか 民族迫害の起源と現在 (PHP新書) [Kindle]

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  • PHP研究所
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  • 「ウイグルの地でいま何が起きているのか、ウイグル人に何が起きているのか、昨今の国際社会で断片的に報じられている情報を整理し」、ウイグル人迫害の現状や歴史的経緯を分かりやすく解説した書。2019年6月刊行。

    カシュガルなどのウイグルの地は、「外から来た旅行者には、美しい治安のよい理想の観光都市に見える、21世紀で最も残酷な監獄社会」だという。

    隣国は、ウイグル人の宗教、伝統、文化、そして血統までをも抹消しようとしている。「新疆の〝再教育政策〟は、ウイグル人の大人を〝再教育〟の名のもとに強制収容し、ウイグル人の子供たちを福祉の名のもとに隔離し、ウイグル的大家族を分断し、洗脳を行い、ウイグルの宗教、伝統、文化の継承を断ち、ウイグル人を中国人化してウイグル人そのものをこの世から消し去ろうという一種の〝民族浄化〟プロジェクトなのだ」とのことだが…。読んでいてやりきれない気持ちになる。

    何故このような状況が生じてしまったのか。本書によれば、その主な原因は、新疆の地に眠る豊富な天然資源に関する利権(「ウイグルの土地に築かれた「漢族の植民王国」」)と、周辺民族を蔑視する(そしてその裏返しとして嫉妬する)漢民族の中華思想にあるとのこと。

    「改革開放が新疆にもたらしたものは、そのポテンシャルの再確認と、天然資源開発による急速な経済発展、それに伴う共産党中央幹部たちの利権構造の肥大化」、「新疆には天然資源や希少な鉱物が豊富で、石油・天然ガス閥の利権の温床となった」。

    「漢族の差別意識は、いわゆる華人意識、つまり漢族が最も優秀で文明の華であり、徳が高く、その周辺の夷狄・蛮族は華人によって感化されてまともになるのだ、という考え方」。そして「漢族の強い華夷思想が、被支配民族としての記憶から来るコンプレックスの裏返し」なのではないか、という見方。

    そして、追い詰められたウイグル人の過激派によるテロの続発。「中国は、この米国の「テロとの戦い」宣伝を、自国内のウイグル弾圧の正当化に大いに利用した」という。

    一度蔑視され、虐げられ、親族を虐殺されてしまうと、その恐怖や恨みは末代まで残るよな。(過激派を含めた)全ウイグル人が矛を納められるような解決策(漢民族との共存策)ってあるのだろうか。その意味で、隣国の同化政策にはもはやブレーキがかからないのかも知れない。

    著者の言うように、国際社会は「家畜の安寧か、飢狼の自由か」、究極の選択を問われているのかもしれない。その意味で、隣国は「1984」ばりの壮大な社会実験を行っていると言えるのかも。

    ロシアのウクライナ侵攻もそうだし、昨今の国際紛争や民族迫害の動きを見るにつけ、生き物としての人類の限界を思い知らされる。

  • ウイグルの歴史と弾圧について知りたくて読書。

    キンドル19冊目。

    中国に住んでいたり、仕事をしたことがある日本人でも知らないウイグルのリアル。日本人が多く滞在する上海や深セン、大連などの都心部ではウイグル人と接する機会は非常に少ない。

    接するとしたら、串焼きの露店、新疆料理と呼ばれるレストランくらいで、現地の中国人(主として漢民族)のウイグル人観を聞けば、中国でウイグル族と1少数民族扱いされているウイグル人の立場くらいは、日本人でも感じることができる。

    しかし、こんな現状であることは、まったく知らなかった。

    本書は2019年で新しい点と福島香織氏の本であることに意味がある。

    第二章 民族迫害の起源
    熟読出せてもらった。勉強になる。

    迫害の起源は中華人民共和国誕生にあり、文革を経て、アメリカ同時多発テロ事件が1つの契機となり、習近平政権になってから激化してジェノサイド状態に。

    そう遠くない後世の人類がウイグル問題を放置した国や人たちを批判する可能性は高い。

    本書、第三章でも触れられているが、なぜ同じイスラム教徒の多数派であるスンニ派の国や人々が沈黙しているのか。そこに中国政府が推進する一帯一路構想が深く絡んでいることも解説されている。

    さらに疑問なのは、日本の人権派団体や恒常的に平和を口にする団体、平和と人権を謳う政党などが、なぜ率先して日本政府へウイグル人の人権侵害を働きかけないのか。

    結局、中国が力をつけ、世界シェアを高めているWeChat(微信)を筆頭とする管理アプリ、監視カメラ、ドローン、顔認証技術などは、すべてウイグルで先行実験して技術を磨き上げ、実戦配備し、それから中国全土へ導入してきたものだということだ。

    この事実を日本人は知って中国と対峙していかなといけない。

    今年1月14日の発刊予定の『AI監獄ウイグル』も読みたい。

    読書時間:約1時間30分

  • リアルで「1984」が実行されているよ。ウイグル(東トルキスタン)にて。
    しかもそれを、国際社会における米中の「カード」として使われていて、
    ハラル臓器提供を受けられるアラブ諸国上層部は介入するどころか賛美するクソ対応。
    これで「世界平和」とは笑えない冗談。資本主義社会では金が物を言う。
    漢人の根底にあるのは、「支配しなければ支配される。」というところか。
    著者のスタンスとして、米国寄りだったり、中国寄りだったり、日本賛美だったりと
    どこかに偏ったものの見方をしていないところが素晴らしい。
    たいていはどこかに寄り添った意見なので、こうやって全方位攻めるのは良い。


    序章  著者の実体験で見たこと感じたこと。怖い話。
    第一章 実際に起きている民族浄化の実態を説明。まさにポル・ポト。初見だとエグいので注意。同じムスリムでも関係ない。
    第二章 歴史。東トルキスタンが何度も独立トライして失敗したこと。
    第三章 最も重要な、国際社会における「ウイグルカード」の話。だからこんな状況になってる。
    RFA(Radio Free Asia) https://www.rfa.org/english/からの出典が多い印象。

    詳しく↓

    序章
    便民警務ステーションで表向きは市民サービス提供。実態はウイグル人たちの監視。
    モスクを共産党賛美の垂れ幕で囲って冒涜しているので、旅行者は撮影近視。

    第一章
    「再教育施設」は現代の「ラーゲリ」である。
    陳全国による徹底した迫害と搾取のオンパレード。
    チベット弾圧が習近平に評価されたのでウイグルもやれと。
    「脱過激化条例」により、いつでもウイグル人を捕まえることができる。
    パスポート没収と国外に出ているものを呼び戻す。
    社会信用システムにて、ウイグル人なだけでマイナス10ポイント。
    強制健康診断による臓器売買のためのリスト作り。
    ★(ここを絵にすべき)
     ウイグルの成人男性(結婚適齢期~働き盛り)は再教育施設へ送って臓器スタンバイ。
     ハラル臓器(ハラール・オーガン)はムスリムに高く売れる。
     残った女性で若い子は漢人と強制結婚または性奴隷など
     親を失った子供はまとめて漢人教育を施し「中国人」にする
     老人はおとなしく観光地のハリボテとして置いておく。
     知識人は邪魔だから殺す。過去に共産党へ協力した人物でも殺す。
    漢人は死体を弄ることに否定的。なので漢人以外なら人間じゃないので使ってもいいという理論。
    そんな環境なのに、臓器移植件数はうなぎのぼり。臓器の出どころはウイグル。
    おまけに、お金もってるアラブ人には高く売れる。通常の3倍。一人50万ドルくらいになることも。
    サウジアラビア内でレシピエント登録→医療費支払い→ウルムチ市内の移植病院へ移動→すぐに手術を受ける。中国への支払いはサウジアラビア大使館が立て替える。近年は沿海部に再教育施設をつくり、その横には移植医療施設をセットで設置。再教育施設で死んだ場合は遺体が返されず、表向きの火葬場へ送られ、臓器摘出され、すぐ横の病院へ送られる。火葬場職員や警備の募集が増えている。
    核実験はウイグルの土地で行う。
    帰国せずにいても、国にいる親兄弟を人質にされる。帰国命令を無視したら親を再教育施設送りに。
    帰国したらしたで首輪をはめられるか、抵抗すれば殺される。
    中国版パノプティコンの初期段階。

    第二章
    7世紀半ばから2014年くらいまでの話。2014年は習近平の暗殺を狙った爆発事件が起きたが、それがウイグル人によるものなのか、わからない。中国共産党の発表だけを信じるのはおかしい。
    何度も独立しそうになるが、その度に鎮圧されたりして、システム化により徹底した管理がしかれてしまった。

    第三章
    2001年9月11日の事件をきっかけに、アメリカによる「ムスリムは悪」という構図ができ、
    その流れをうまくつかって中国は国内の「悪であるムスリム≒テロリスト」の弾圧を加速させる。
    「一帯一路」の要所として、資源豊富な土地として、ウイグル(東トルキスタン)は非常に重要な場所。
    中国としては手放したくない。米国としてはそこを独立させて中国の拡大を止めたい。
    中国はここを発展させることで、ロシアとトルコを牽制し、対米ヘゲモニー戦争に勝利したい。
    ★ウイグル問題は単なる民族浄化問題にとどまらず、中国主導の一帯一路VS米国主導の開かれたインド太平洋戦略の構図のなかにくくることができる。
    ★西トルキスタンに位置する、カザフスタン、キルギル、パキスタンなどのイスラム国家は、一帯一路の果実がほしいので、民族浄化に目をつぶる。他の周辺国首脳陣も同様。面と向かって否定したのはトルコのエルドアン大統領だけ。さすがエルドアン。カザフスタンのアタムクロフ外相は「再教育施設は最高やで!」と言いながら、王岐山や王毅のち○こをしゃぶる。
    サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマーン皇太子も、習近平のち○こをしゃぶる上流の一人。中国のウイグル弾圧は同じムスリムの迫害なのに、見て見ぬ振りするどころか加担する。いっぱい石油買ってくれるから好き好き。
    エジプトでは、2017年に国内のウイグル人留学生200人を拘束して中国へ献上して、習近平のち○こをしゃぶる。

    間違っても勘違いすべきでないのは、各国の国の上層部や資産を持つ上流の人間だけが、習近平と友達なだけであって、カザフスタンやパキスタンの一般ピープルはウイグル同様、迫害を受けたり拉致られたり殺されたりしている。

    著者の一つの改善策として、「ウイグル人にのノーベル平和賞を」というのがある。
    ノーベル平和賞は「政治ショー」にすぎないが、それでもその権威と影響力は地に落ちていないはず。
    ラビア・カーディルにあげよう!
    日本においては、政治家やメディアが「ウイグル人にのノーベル平和賞を」と後押ししてくれることを望む。とある。→これは厳しい。クソみたいな不倫話とかどうでもいいスポーツニュースに時間を割きすぎ。間接的に習近平のち○こや、バイデンのち○こをしゃぶっている立場の人たちにそんなことはできない。

  • まさに、中国共産党によるウイグル人に対する民族浄化作戦です。
    ウイグル人自体の数を減らし、宗教・文化・言語を奪い民族を崩壊させる。
    読んでいて怒りを覚えました。
    https://seisenudoku.seesaa.net/article/479785856.html

  • 知らなかったことを知る機会になった。

  • 中国によって、現在進行系でウイグルの地で、凄まじいまでの現代までのありとあらゆる最先端の科学技術と悪知恵を働かせられて、おぞましい人間性、人権、人格無視の、これまで今までにありとあらゆるウイグルの地でウイグル人たちのご先祖様代々たちが築いてきたすべての文化、言語、家族、血統、宗教、経済などが蹂躙され、殲滅させられようとしています。

    日本も他人事ではありません。
    福島さんも書かれていらっしゃるように、このウイグル人たちの身に起こっている大変なことを軽くみてはいけないと思います。

    すべてのウイグル人の方々たちは、一体全体に何のためにウイグル人として生きているのか、どう生きていけばいいのか。
    核実験の場にされ、臓器売買の生贄にされ、どこにいても監視の対象にされ、家族も誰も信じて生きていけない。
    ウイグル人全体のうち、どれほど多数のウイグル人たちが拘束され、収容所送りにされてきているのか。

    精神的に死別よりも苦しい、ある意味シリアの内戦よりも残酷なことだと思います

    清水ともみさんのマンガや、YouTubeで三浦小太郎さん達とかの動画で、ウイグルのむごたらしい状況を知ることができます。

    この本を出版されてくださった福島香織さん、株式会社PHP研究所、すべての関係者の方々に御礼を申し上げたいです。

  •  中国の内陸にある新疆ウイグル自治区で行われていると言われるウイグル民族の弾圧。イスラム教徒である彼らに宗教的行為を禁止し、「再教育施設」という名の強制収容所に送り込んで洗脳や拷問が繰り返されているという。その歴史と現在を中国に詳しいフリージャーナリストの著者が丁寧に解説する。

     前半、あまりにひどい弾圧の描写に気分が悪くなり、読み進めるのが辛かった。ナチスのユダヤ人迫害よりもひどいとまで言われるその過酷な仕打ちは、ウイグル民族をこの世から消そうとしていると言っても過言ではない。実際、このまま続くことを国際社会が放置すれば、あと1~2世代でウイグル民族は事実上滅亡するだろう。

     では中国政府はなぜそこまで徹底的に弾圧するのか。直接的な引き金になったのは習近平殺害を狙ったとされるテロが起きたことだが、そこに至るまでの百年以上に及ぶウイグル民族の歴史と中国共産党の政策、そして国際社会の関与の仕方が複合的に影響している。

     最近では国連でもこの問題が取り上げられるようになったが、中国は国際経済に占める影響力を背景にゴリ押しするだろう。イスラム教国家さえも経済重視で中国にすり寄っているのは情けないと思うが、仕方ないのかもしれない。彼らの本音を聞いてみたいところだ。

  • 大した知識も持たずにウイグル旅行に行きましたが、改めて勉強が必要と思い購入しました。
    ちなみに旅行中はどこに行くにも厳戒な警備でしたが、地元の人が助けてくれたり、ちょっと話をしたりしても本書に書かれているような迫害の実態を肌で感じることはありませんでした。

    日本で聞くニュースだと、『中国が民族統一しようとしている=悪いことだ』という単純な思想になってしまいがちですが、
    歴史を見てみると宗教と戦争が切り離せないのと同じように、お互いの正義のために暴動や事件が起きているという風にもとれました。
    特にウルムチ南駅での事件が習政権の怒りを加速させてしまい、報道も漢族よりになっているのでしょうか。
    もちろん民族弾圧というのはあってはならないことだと思います。

    多角的に物事をみて、一方的な主張や見解だけで決めつけないことが日々の生活でも重要だと感じました。

  • 衝撃の事実。日本もいつかウィグルの人たちと同じ目にあうかもしれないと他人事として放置できないと実感

  • 2021.06―読了

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著者プロフィール

ジャーナリスト、中国ウォッチャー、文筆家。
1967年、奈良市生まれ。大阪大学文学部卒業後、1991年、産経新聞社に入社。上海復旦大学に業務留学後、香港支局長、中国総局(北京)駐在記者、政治部記者などを経て2009年に退社。以降はフリージャーナリストとして月刊誌、週刊誌に寄稿。ラジオ、テレビでのコメンテーターも務める。
著書に、『習近平 最後の戦い』(徳間書店)、『台湾に何が起きているのか』『ウイグル人に何が起きているのか』(以上、PHP新書)、『習近平王朝の危険な野望』(さくら舎)、『孔子を捨てた国』(飛鳥新社)など多数。
ウェブマガジン「福島香織の中国趣聞(チャイナゴシップス)」を連載中。

「2023年 『習近平「独裁新時代」崩壊のカウントダウン』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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