線は、僕を描く [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • 両親を事故で亡くし、生きる気力を失い、心を閉ざして生きていた主人公の青山。偶々アルバイトで行った水墨画の展示会で、日本を代表する有名芸術家の篠田湖山に出会い、未経験者にも関わらず、才能を見出されて内弟子となる所から物語が始まります。

    多くの皆さんが高評価をつけておられるので期待して読み始めました。
    期待値が高すぎたせいでしょうか?私としては、まあまあ面白かったけれど、そんな絶賛するほどでも…という感じ。

    偶々私がそういう作品に触れることが多いのかもしれないのですが、『両親を突然事故で失って孤独になってしまう』設定多すぎません⁇

    湖山先生はじめ、出てくる人物はみんないい人ばかりで、それぞれが魅力的な人物なのだな、というのは読んでいてわかりましたが、「わあ、この人好きだなぁ」と感情を揺さぶられるような生き生きとしたキャラクターとしては伝わってきませんでした。

    『僕は、線を描く』じゃなくて、『線は、僕を描く』なんだ、と、最初に知った時に違和感があって、その違和感こそがフックとなってこの作品を読みたいと思ったのですが、そのタイトルの意味が最後に明らかになり、そこはしみじみと良いなと感じました。

  • 水墨画という分野と出会い、巨匠、弟子達との関わりの中でひたむきに努力、切磋琢磨、自問自答しながら成長していく姿に惹きこまれました。

    多くは語らず、実際に描いてみせる事で伝える様はさすがですね。

    主人公の感性に触発され、日常の何気ないところ、自然の美しさなど、ちょっとした見方が変わるかもと思いました。

  • 作者が水墨画家ということもあり、読み手も水墨画って何っていう人ばかりだろうから、丁寧に水墨画のことを書いているのは分かるけど・・・ていう感じかな。
    書き過ぎ感が重くて、ちょっと胸いっぱいってなりました。
    ただ知らなかった水墨画のことを知れたのは良かったです。

  • 静かな話

  • 両親を事故で亡くして傷つき生きる意味合いを失っていた(見出せなくなっていた)主人公が、水墨画の世界に出合って、引き摺り込まれ、引き込まれて再生していく。読み終えてから著者自身が水墨画家と知り、絵だけでなく文章まで美しいのかと驚く。水墨画という全く馴染みのない世界のことなのに、あまりに美しい世界観に僕もドップリ引き込まれた。漫画『とめはねっ!』の世界観を思い出した(あれは再生じゃなく成長だし、共通点は「墨」と「純朴な主人公」くらいだけど)。これ期待より相当よかった。

  • おいしいものを満足の行くまで食べたような、充実した読後感です。二人の関係がいいですね。

  • 2020年の本屋大賞に入っているので読んでみた。おもしろい。水墨画を軸とした物語。少し精神的に問題を抱えている主人公、そして水墨画の大家の美人娘、というありがちな設定で、ストーリー展開も予想の範囲内で驚くようなことはないが、水墨画に関する描写がとても興味深い。
    最後まで読むと、本のタイトルがスッと理解できる。
    タイトル内の読点にもきっと意味があるのだろう。

  • 砥上裕将という新人作家自体が水墨画の絵師なんだそうで、それならではの水墨画の奥義を文章化することに成功してる。全く知らない世界で、だいいち水墨画小説って聞いたことがないので全くの新天地だろう。職業上達モノの新機軸だ。

    水墨画は書道の絵画版のようで、一瞬のタッチで絵をかきあげていく。写実よりも自分の内実を表現するもののようだ。水墨画には全く素人の主人公は高校の時に事故で両親を亡くし、心の中にガラスの壁をつくって住んでいるような孤独な青年だった。それを水墨画の大家湖山先生が戦後の自分を見るようだと、水墨画の世界に誘い込む。そこに千瑛という先生の孫が登場する。美人で気が強い。二人を大会で勝負させるというスタートからしてうまい。これに彼の大学の友達、先生の弟子が絡んで、配置が絶妙。熟れてる感じを受けるほどだ。弟子も、一人は技術は最高。一人は楽天的で、技術はそれほどでもない。それでも技術最高の弟子は勝てないという設定がうまい。

    修行の途上の描写も的確で、久しぶりに文章から気持ちが離れることなく読み終えた。

    北上ラジオ5回本雑2019年度エンタメベストテン北上 4位

    『まじめというのはね、悪くはないけれど、少なくとも自然じゃない。』

    『もっと純数にその人の心がどれくらい清らかで伸びやかで生き生きと描かれているかどうか、ということが水墨画の最大の評価になってくるんだ。見どころと言ってもいいかもしれない。形や技術なんてそれに比べれば枝葉にすぎない。絵にとっていちばんたいせつなのは生き生きと描くことだよ。そのとき、その瞬間をありのままに受け入れて楽しむこと。水墨画では少なくともそうだ。筆っていう心を掬いとる不思議な道具で描くからね。』

    『釘の頭のように根元を描き、蟷螂の腹のように線を膨らませ、鼠の尻尾のように鋭く逃がす。釘頭、蟷肚、鼠尾の呼ばれる基本的な描法だ。一筆目のたった一本の線を引くためだけにこれだけの名前がある。』

    『現象とは、外側にしかないものなのか?心の内側に宇宙はないのか』

    『一輪の薔薇は、あまりにも紅い。』

    『この紅一色でさえ、表現するのには膨大な時間を費やしたのだろう。そこにもすでに宇宙は存在している。』

    『水墨画の技術の中には『塗る』という動作がないのです。設色する場合を除いては。『描くこと』は同時にそのものを創ることです。ですが、その考えに反駁するように水墨画には『減筆』という用法があります。減筆とは端的に言えば描かないことです。』

    『水墨画は確かに形を追うのではない、完成を目指すものでもない。生きているその瞬間を描くことこそが、水墨画の本質なのだ。自分がいまその場所に生きている瞬間の輝き、生命に対する深い共感、生きているその瞬間に感謝し賛否し、その喜びがある瞬間に筆致から伝わる。そのとき水墨画は完成する。』

    『人は描くことで生命に触れることができるのだ』『四時無形のときの流れにしたがって、ただありのままに生きようとする命に頭を深く垂れて教えを請いなさい。花に教えを請え。』

  • 水墨画に全く興味がなかったけれど、読みながら思わず春蘭や菊の作品をググってしまった。水墨画の初歩の知識を得られる小説。
    とても読みやすいけれど、霜介が湖山に才能を見出される過程や登場人物の造形など、なんとなくラノベっぽさを感じた。説明過多で冗長な所も多かった。
    映像化しやすいだろうなとは思う。

  • 日本画の世界は全く知らなかったので、新鮮でした。

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著者プロフィール

1984年生まれ。水墨画家。『線は、僕を描く』で第59回メフィスト賞を受賞しデビュー。同作は、2019年ブランチBOOK大賞受賞。2020年度本屋大賞第三位に選出された。

「2021年 『7.5グラムの奇跡』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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