歴史とは何か (岩波新書) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  •  実証主義が叩きのめされたあとの歴史学が知りたくて....
     歴史収集家と歴史家の違いは、事実をただ積もらせるのと、事実の集積になんらかの法則(仮説)を見出し一般化することにある。しかしそこには客観性の罠がある。すなわち客観性という言葉による無思考がある。歴史は現代からみた過去である。よって観測者が非観測者に影響を与える。例えば昭和生まれの歴史家と令和生まれの歴史家では、同じ事物をみても違う点に注目することだろう。以上のように歴史は観測者と非観測者の相互作用によって成り立っている。では観測者とはなにか。
     これは18世紀に獲得された個人という概念がどのようなものとして捉えられたのかという系譜によって説明される。例えば、革命が起きるなかでわかりやすく個人という概念を持つようになる一方で、虚偽意識というものが問題になってくる。「「本当は」そんなこと思っていなかったかも?…」が虚偽意識であるらしい。マルクスはまた経済がどのように個人を規定するのかを考えた。マルクスはヘーゲルの系譜であり、その後個人の問題はフロイトへ続く。
     そして現代では、肥大した自己、つまり個人による、自然への介入が行われることがいえる。誰だってやればできるんだ!塾に課金して、遺伝子改変して、美容プチ整形して、年収up、転職、延命、勝ち組、コミュ力、アンチエイジング、努力してないやつが悪い、などなど。終わりのない自己実現に至る。というようなことが書いてあるとおもった。神は死んだ。

  • 歴史とはいったい何で、なぜ学ぶ必要があるのか。
    過去には数えられないほどの事実があったが、その中でも歴史的な事実だけが現在に語り継がれている。
    では、事実を歴史的な事実たらしめる基準は何なのか。
    絶え間なく歴史は変化し、動き続けるものであり、私たちはその流れに身を置いていることを自覚する必要があるのではないだろうか。

  • 名著とされているため、中学時代にも勧められて読んだことがあったが、今の私にとっても難しいと思う。まして中学時代には全く分からなかった!
     歴史が社会科学であり、歴史家は過去に対しては「なぜ」、そして未来に対しては「どこへ」を問う存在であること、客観的な事実を、受け容れていく必要があることを改めて感じた。次の要約の言葉が象徴的。「客観的とは、➀社会と歴史とのうちに置かれた自分自身の状況から来る狭い見方を乗り越える能力、②自分の見方を未来に投げ入れてみて、そこから、過去に対して、深さ 永続性も優っている洞察を獲得するという能力があることを意味する。」「ですから、歴史とは過去と現在との間の対話であると申し上げたが、む しろ、歴史とは過去の諸事件と次第に現われて来る未来の諸目的との間の対話と呼ぶべき。」
    60年ほど前の講演記録であり、共産主義のことがかなり意識されていることは時代を感じるものの、全く現代にとっても通用する価値のある内容だと感じた。クレオパトラの鼻、アレクサンドロスの猿による咬傷、レーニンの若死になどが歴史に与えた偶然のことを書いており、この当時から「鼻」のことが語られていることは面白かった。

  • 古典的名著

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  •  本書の有名な一節として、「歴史とは歴史家と事実との相互作用の不断の過程であり、現在と過去との間の尽きることを知らぬ対話なのであります。」というものがあります。みなさんは、この言葉をどのように理解していますか。邪推ですが、耳にしたことはあるけど、何のことかさっぱり……という人が多いのではないでしょうか。

     「歴史」とは、意外にも身近な存在です。この機会に本書を手にとって、「歴史とは何か」について考えてみてはどうでしょうか。本書は、読者が「歴史」についての理解を深める一助となるでしょう。

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    E.H.カー(清水機太郎訳)『歴史とは何か』(岩波書店、1962年)
    所在:図書館2F 請求記号:081//I95//B447
    https://opac.lib.niigata-u.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BN01817226?hit=5&caller=xc-search

  • 歴史が専門という訳では無いですが、それなりに得るもののある本だったと思います。歴史を専攻にしている人は必読の本だと思います☆
    ・歴史とは解釈のことである
    ・歴史とは数の問題である
    ・歴史とは過去の習慣や教訓を未来へ運び入れることである

  • 『それでもーそれは動く。』

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