他者と働く──「わかりあえなさ」から始める組織論 (NewsPicksパブリッシング) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • 組織における齟齬については、視座や視点の違いによるものだと説明されることが多い。
    本書で展開される「ナラティブの溝」により分断が発生しているというのは目から鱗だった。

    ・自分と他者はナラティブが異なる。その溝を観察するところから始める必要がある
    ・弱い立場ゆえに正論をふりかざす状態は何も生み出さない。強い立場からの視点(ナラティブ)でも事象を眺めよう
    ・権力をもっていることに自覚的でなければ、自分が見たい現実だけを見ることになる

    わかりあえないという前提に立脚し、わかりあうために溝を越えていく。
    均質的であることを前提とした日本の組織において、多様化した現代に必要なまなざしとふるまいである。

  • ■目的
    他者と働くということの難しさを日々感じ、その理由とそれを解決することでよりビジネスに活かせることをしたいと思ったため。

    ■本質
    他者の背景を考え、その背景を擦り合わせ、目線合わせて、他者と新しい関係性を築くことが、組織で起きる課題を解決する。

    ■感想
    本書で指摘されていることは、「気持ちよく人を動かす(高橋浩一著)」と被る部分も多く、他者との対話を通じた方向性を定めていくことが大切であるをより一層大切であると納得できた。対立して、意見を納得させるのではなく、相手がどんな立場でなぜそんなことを考えるのかまで考えなければ、成立しない。

    ■ポイント
    ・知識としての正しさと、相手が納得することは違う。
    ・お互い分かり得ないことを理解した上で関係性を構築しなければならない。
    ・組織の問題
     ∟GAP型:価値観と行動にギャップが生じる。
     ∟対立型:お互いの合理的な判断の利害が一致しない
     ∟抑圧型:言いにくいことを言わないことで発生する
     ∟回避型:本質的な問題を解決することを逃げてしまうこと。
    ・組織で発生している問題とはほとんど、組織と組織の間で発生している「関係性」の中で生じている問題。
    ・ナラティブ=物語→つまりその語りを生み出す解釈の枠組み(その人にとっての一般常識)
    ・関係性に生じている溝に橋をかけることが対話となる
    ①準備:溝に気が付く
    ②観察:溝の向こう眺める
    ③解釈:溝を渡れる橋を設計する
    ④介入:溝に橋をかける

    ・ナラティブを構築するのは、営業で言われる「相手のWILL・CAN・MUSTを抑えて、その先方の誘因にぶっ差しに行く」という感覚。

    ・対話の罠
    ①気が付くと迎合する→相手の気持ちに寄り添って、自らのナラティブが忘れ去れるケース
    ②相手への押し付けに→無理やり相手に押し付けて、結果として相手のナラティブを軽視すること
    ③相手と馴れ合いになる→言いたいことを言わず、ただなあなあの関係性になってしまうこと
    ④他の集団から孤立する→チームの中でもナラティブの溝は生じるので、常に溝は発生するものだという前提にたつ。
    ⑤結果が出ない

    ・落語の「薮入り」。一足飛びにどこかに行くわけではなく、一歩ずつ隣に移っていく。

  • 相手のナラティブを理解するように努めようという話。
    働く中でうまくいかないことがあっても、誰かのせいにするのではなく、どうすれば物事の進むか考えよう。
    ただただやる気のない上司に当たった場合に、本当に対話が有効なのかは疑問。
    相互理解のために、他部署で働いてみると言うのがあったが、それが全てに有効であれば、JTCの部署間の対立は発生しない。そもそもの評価制度を見直したりしないと難しいだろうと思う。

    1.準備:相手を問題のある存在ではなく、別のナラティヴの中で意味のある存在として認める 2.観察:関わる相手の背後にある課題が何かをよく知る 3.解釈:相手にとって意味のある取り組みは何かを考える 4.介入:相手の見えていない問題に取り組み、かゆいところに手が届く存在に

    下の立場の人には、いくらでも上司を悪者にして自分を正当化する逃げ道があり

  • 読み始めからちょっと時間が空いてしまったけれど、読了。

    会社で購読している雑誌で紹介されていたのがきっかけのような気がしますが…多分。

    平田オリザさんの「わかりあえないことから」を踏まえ、組織内外でバックグラウンドの違う人たちとの相互理解のための橋の掛け方について書かれた書籍でした。

    バックグラウンドが違うと、言葉の意味が変わる、ということについてブクログの何かの本のレビューで書いた気がしますが、特に似て非なる仕事をしている現場ではわりと起こりうることだと思います。


    レビューも書き始めから開いてしまった。。
    多分、こんな内容だったんだな。
    また、機会があれば読み返そう。。

  • 他者と働く、ということは、
    人間が思うよりも簡単にいかない、
    時に仕事そのものより頭を悩ませたりするものだと思う。

    ミドルマネジメントが直面するのはそういうところだろう。
    いや、ミドルマネジメントより上にいってしまったら、
    もはやそういう他者との働き方について、
    あまり悩む機会を失って、立場だけで仕事をするように
    なってしまうのかもしれない。
    そんなのいやだな・・・・

    脱線した。
    本書は、他者と自分のずれや、ぎくしゃく感について、
    その要因(適応課題)を4つの累計に分けたうえで、
    4段階の対応方法(を説明している。

    4つの適応課題とは、
    ・対立型
    ・ギャップ型
    ・回避柄
    ・抑圧型

    4段階の対応方法とは、
    ・準備―溝に気付く
    ・観察―溝の向こうを眺める
    ・解釈―溝を渡り橋を設計する
    ・介入―溝に橋を架ける

    「人は自分とは違う」ということを、
    自分が思うより強く意識した方がよいということだ。
    そして、「人は自分と同じく、その人らしく組織に貢献でき認められれば嬉しい」
    ということをも、また強く意識した方がよいという
    ことだ。

  • 人間は他人の気持ちが分かるから、他の動物とは異なって発展が出来た。
    その一方で、人は組織になると、他の組織とはどうしても対立関係になる。
    自分たちが努力して築いた居心地の良い場所を、他者が奪いに来るという気持ちが働くのだろう。
    どうしても「協力して全体を一緒の方向に」ということにならなかったりする。
    まさに会社内でも「総論は賛成。ただし自分たちが少しでもマイナスになりえる各論であれば反対」はよくある話。
    さて、この状況を前提として、どうするのか?
    ただお互いの主張を繰り返すだけでは、自然と分かり合うという状況になることは絶対にない。
    この本でも「対話が大事」と言っているが、一般的な意味での「会話」を示している訳ではない。
    本書でも書かれている「対話」は会話とは異なる意味での「新しい関係性を探り出し、構築するための手段」を意味しての「対話」を位置付けている。
    迎合するか、押し付けるのか、慣れ合うのか、どちらかが諦めて妥協するのか、そういう解決策を提示している訳ではない。
    あくまでも自分の主張は脇に置いて、「橋を架ける」というイメージ。
    もちろん、橋を架ける場所、大きさなども非常に大事。
    お互いが妥協をすることなく、「近接点」を探すことと言えるだろう。
    近接点が見つかれば、そこに橋を架けていく作業だ。
    自分の主張は置いておいて、相手の立場になって話を聞く。
    その中で本当に相手が求めていることを、対話の中で探り出す。
    それらを体系化して、さらにどうするかをお互いに考える。
    単純な話なのだが、なかなか難しい。
    「分かり合えない」という前提条件を共有する点が出発点になることで、見えてくる景色がある。
    強い組織とは、やはり自由闊達に意見交換して、組織間が切磋琢磨をしている。
    さらに人事異動も多く、色々な意味で人材の多様化を認め合っている。
    分かってはいるが、なかなか実行できないのが会社組織というものだ。
    当社はどうする?やるかやらないかだけなのだ。
    (2020/9/6)

  • 介護や医療で聞くことの多いナラティブが気になり読んでみた。学者なので論評かと思いきや、父親が零細企業の社長で、亡くなったあとに取り立ての処理が大変だった、批判しても解決できないと、イメージとは違った。
    エビデンスが大事だけど、ナラティブも欠かせない。じゃあどうするのかを考えるきっかけになった。
    最終章には医療の話もあるので、私みたいな動機の人も学ぶことが多いと思う。

  • 「私とあなた」「私とそれ」といったような人間同士の関係性について、「ギャップ型」「対立型」「抑圧型」「回避型」の4つの適応課題をナラティブの溝と例えて、その溝を渡り対話をするためのプロセスについて書かれている。

    平易な文章で読みやすい一方、感覚的な記述も多い。かつ、技術的な問題を軽視し、感情的な問題の範囲で論理を展開しているので、うまくいく場合もあるしいかない場合もあるだろうと感じた。

    ナラティブ・アプローチ、適応課題など本書で紹介される概念には元ネタがあるようなので、それらも併せて読んでみたい。

  • 話が噛み合わない人と対話すると言うか分かりあう最初のきっかけになる本

  • 組織のトップになって、各部署との連携に課題がある時期に読んだ。
    本書を読み、自分の思い通りに各部署が動かない理由を理解することができた。そして、連携を進めるための考え方を学ぶことができた。
    本書はタイトルが組織論をなっているが、個人間での理解やコミュニケーションにも役立つ内容となっている。

    本書の内容は、相手との対話を通して、お互いの理解を進める方法とその具体例の解説である。
    対話とは、自分と相手との間の溝を認識し「溝に橋を架けて」「新しい関係を築くこと」とされている。

    対話の4つのプロセスを以下に示す。
    1.準備「溝に気付く」
    相手と自分のナラティヴに溝(適応課題)があることに気付く
    2.観察「溝の向こうを眺める」
    相手の言動や状況を見聞きし、溝の位置や相手のナラティヴを探る
    3.解釈「溝の渡り橋を設計する」
    溝を飛び越えて、橋が架けられそうな場所や架け方を探る
    4.介入「溝に橋を架ける」
    実際に行動することで、橋(新しい関係性)を築く

    解釈に関しては大きく3つの流れがある。
    1.観察で分かったことを眺めて、そこから相手のナラティヴを自分なりに構成してみる。
    2.相手のナラティヴの中に立って自分を眺めると、どう見えるかを知る。
    3.ナラティヴの溝に架橋できるポイントを、協力者などのリソースを交えて考える。

    解釈のプロセスは、信頼のおける人と一緒にやると良い。最低限、書き出すなどして客観的に眺められるようにする。
    対話のなかで、自分のナラティヴの偏りを自覚することを忘れてはいけない。

    他者の理解を得にくい場合は、相手のナラティヴを探り橋を架けることが重要な手段となることを理解した。
    「理解してから、理解される」という言葉があるが、これを行うための具体的な方法をしることができた。

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著者プロフィール

経営学者/埼玉大学 経済経営大学院 准教授

1977年東京都生まれ。2000年立教大学経済学部卒業。02年同大学大学院経済学研究科博士前期課程修了。06年明治大学大学院経営学研究科博士後期課程単位取得。2006年早稲田大学アジア太平洋研究センター助手、2007年長崎大学経済学部講師・准教授、2010年西南学院大学商学部准教授を経て、16年より埼玉大学大学院人文社会科学研究科(通称:経済経営系大学院)准教授。
社会構成主義やアクターネットワーク理論など、人文系の理論を基盤にしながら、組織における対話やナラティブとイントラプレナー(社内起業家)、戦略開発との関係についての研究を行っている。大手企業やスタートアップ企業でイノベーション推進や組織変革のためのアドバイザーや顧問をつとめる。専門は、経営戦略論、組織論。
07年度経営学史学会賞(論文部門奨励賞)受賞。
20年日本の人事部 HRアワード2020書籍部門最 優秀賞受賞。


「2021年 『組織が変わる』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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