- Amazon.co.jp ・電子書籍 (252ページ)
感想・レビュー・書評
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進化のからくりというよりは、進化学者たちの“からくり”(研究活動の裏話)だった。それはそれで面白かったが、題名に物申したい感じ。
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進化についての「考え方の進化」がよくわかった。今西生態学への辛口の評価も興味深かった。しかし、なによりも興味深いのは登場する研究者たちの、それぞれの向き合い方。「多様なスキル」への賛美は、レヴィストロースのブリコラージュの議論を想起させる。著者の別の本もぜひ読んでみたい。
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進化や生態学研究の上での、著者のエッセイというか、半生記ともいうべき内容。
ただ、貝類の進化の過程を捉えたと思っていた現象が、じつは違う原因によって起こっていたことが判明する(ゆくゆくは進化の話に通ずるのだが)など、進化の話だけでなく探究の紆余曲折や発見の面白さを味わえる内容となっている。
研究手法にも色々なスタイルがあるのだろうが、著者はフィールドワークがベースにあるので、ちょっとした冒険記としても読める。身近の生き物が発見に繋がったりしているので、身の回りにも宝が隠れているかもしれないと思わされる。左巻きカタツムリの採集を市民にお願いした話は面白かった。
Audibleにて。 -
どの章も面白かったが、ギレスピー教授の贈り物の章には素直に感動した。
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進化学研究者もそのアンチも、全員進化学について真剣に議論する同志だと言う筆者の文章からは、彼の研究者としての愛と誇りを感じる。
エピソードとしてかなり面白い話が盛りだくさんで、特に印象的なエピソードとしては、ミウラ君とアンガス博士との出会いである。
英国の歴史を読み解く上でも、自然選択説の流行とキリスト教社会からの脱出というテーマは重要であるため、興味本位でダーウィンの『種の起源』上下巻を読んでみたことがある。
想像以上に難しいと感じ、当時はそれなりに時間をかけて読まねばならなかったため、その経験から進化学に苦手意識があった。
一方で本書は確かに内容が複雑になる瞬間は時々あるものの、読みやすいと感じた。それは、進化学が簡単な領域であるという意味では決してなく、筆者の文章構成の巧みさが、内容の難しさをカバーしているということである。筆者の趣味ではあろうが、サッカーや恋愛をベースにしたレトリックが文章を巧く彩っている。 -
フィールドワーカー達の生き生きとした活写がとても面白かった。
・左巻きのジェレミーの交尾相手を市民に広く募集した話
・ミウラくん。オチに思わずずっこけた。インド行き前の真実はどっちだ。
小笠原諸島は日本のガラパゴスなんだなぁ。行ってみたくなった。 -
読みたいけど、どこにも売ってないー
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生物に関わる人は、読むべき本です。とても面白いです。
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「進化のからくり」がずばり書かれているというより、それを究明するための科学的な研究の進め方、いわば科学マインドが分かる本。
中盤のホソウミニナの研究は特に興味深い。陸側にいる小さいホソウミニナは陸に適応しつつあり、海側にいる大きいホソウミニナと種分化が起きる現場ではないか、という仮説を著者は立てる。
この研究をとある院生に任せるが、彼は態度が悪く大事な時期にインドへ旅に行ってしまう。
この院生がインドから帰ってきてからの急展開が面白い。ホソウミニナの2通りの形態は種分化ではなく、なんと寄生虫の影響だったという。おまけに、院生は最初から著者を嫌ってなどおらず、態度を悪くするようなつもりもなかったという。
科学の仮説と院生の人物評価のどちらも、著者の見立てが違っていて、しかしどちらの誤解もちゃんと晴れたという、すごく教訓的な話。
読者にも同じような思い違いがあると気づかせてくれる。「ダーウィンはガラパゴス島でフィンチの嘴などの形質の違いから進化論を構築した」などとまことしやかに言われるが、ダーウィンフィンチにその名がついて進化の代表例になるのは『種の起源』発表の後で、ダーウィンフィンチと名付けたのも別の人だった!
ダーウィンが違いに気付いたのはマネシツグミという別の鳥。しかも、『種の起源』に至る研究はどちらかというとイギリスでダーウィンのもっと身近な題材で進められたという(『種の起源』は一部Unlimitedにあるがまだ読んでないので後で確認したい)。
本全体としては自然や生き物のすばらしさ、それらへの著者の愛情、そして研究の楽しさが伝わってきた。そして研究者への敬意も。