木になった亜沙 (文春e-book) [Kindle]

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  • 文藝春秋
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感想・レビュー・書評

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  • フォロワーさんの本棚で発見
    今村夏子の「むらさきのスカートの女」や「こちらあみ子」のあの不思議な読書体験を期待して図書館で借りる
    短編3篇とも強烈だった
    もう限界かも……私には
    これでもかこれでもかと追いつめられる

    でもまたきっと読むだろうな

    表紙が印象的
    この木、実、紐そしてこの生き物

    ≪ ひりひりと 不穏で奇妙 これも愛 ≫

  • 『ざわざわざわ~~~』
    そんな空気の中読み終えた作品。
    今村夏子さん。相変わらず心を騒がす。

    〜ジャックの柔らかな髭が私のほおに触れて〜
    隣に猫が眠る幸せ。




  • この短編集におさめられた3つの短編のいずれにも、この世間を容易には生きられないアウトサイダーの女性が登場する。

    そんな彼女たちの生が、あっけらかんとした口調で語られる。そして彼女たちは、容易に生きられないがゆえに、容易に木や、射的の的や、犬やらに変身してしまえる。

    この、彼女たちが現実の境目を超えていく瞬間というのがとても自然で、なにか、手品でも見せられているような驚きなのだ。にもかかわらず、突拍子もないストーリー展開であるにもかかわらず、物語はずっと現実とへその緒でつながっていて、なんとも切なくなる。

  • 芥川賞作家、今村夏子さんの待望の新刊。
    「祝・デビュー10周年」の冠の付いた短編集です。
    私は今村さんの著作を全て持っています。
    彼女の魅力のひとつは「寓話性」ですが、本作は過去の作品よりもかなり寓話に寄せていっています。
    その意味では、彼女の真骨頂をいかんなく発揮した短編集といえましょう。
    収録しているのは「木になった亜沙」「的になった七未」「ある夜の思い出」の3編。
    表題作の「木になった亜沙」は、自分の差し出した食べものを誰にも食べてもらえない主人公の亜沙が、割りばしになって願いをかなえる物語。
    「的になった七未」は、自分に向けて放られたドングリもドッジボールもなぜか当たらず、それが元で数奇な半生を歩むことになった女の物語。
    「ある夜の思い出」は、夜の商店街で出会った四つん這いの男と結婚を前提に付き合う物語。
    どれも、今村さんじゃないと発想できない「ヘンテコ」な物語ばかりです。
    巧まざるユーモアも健在。
    153ページの会話で笑わない人がいたら出てきてほしい。
    油断していたら、思わず吹き出すシーンがかなりあります。
    それでいて、そこはかとない悲しさが全編に漂っています。
    こんな芸当ができるのは、今村さんと、亡くなった赤染晶子さんくらいではないでしょうか。
    毎度同じ感想しかありませんが、本作も恐れ入りました、です。
    一生、追いかけますから。

  • タイトルから、童話のような展開?と予想したが、この著者のこと、やはり一筋縄ではいかない。自分の想像力などはるかに超えて、ホラーのような、でもとてつもなく悲しい話でもあり、でもなぜか心が温まる気もする。
    芥川賞受賞作はより多くの人向けだったが、本作は、独特の世界を紡ぎ出す著者の本領が発揮されている。「あひる」、「星の子」の流れを汲んでいるが、より深いところまで来ていた。
    多作でなくていい、数年に一度でもいいから新作を読みたい作家。

  • 今村さんは、デビューした頃からずっと追っかけ気味の作家さん。映画化作品もあるけど、星の子はちょっと辛かった。無理に映像化しなくても小説で十分だと思うんだけど、個人の感想です。
    本作は、今村さんの著作のなかでもホラー寄りの不思議な幻想が尖った作品集。まあ読み中や読後感は良いとは決して言えないものの、日常と隣り合わせで隔絶した狂気を覗き見る感覚で、ついつい読み進んでしまう。
    次は「とんこつQ&A」!

  • 短編集。なんだか奇妙で不思議なお話ばかり3編。よくわからないがこれぞ小説というものではないかという気がする。今村さんの作品には妙に惹きつけられるものがある。本書所収の物語はいずれも悪(?)夢の続きのようなストーリーになってる。悪夢というか妄想の悪ノリとでも言おうか。ある時たまたまちょっと不思議な出来事があって,それを妄想の世界で徹底的に膨らませたような感じ。故になんだか面白い。1話目の「木になった亜沙」は自分の手にしたものを誰一人絶対に食べてもらえない少女・亜沙が,いっそのこと果実を実らせる木になって,その身を誰かに食べてもらいたいと思いつつ死んでしまう。そして生まれ変わって杉の木になったという話。2話目は,「当たらない」少女・七未。団栗でもドッジ・ボールの玉でも水風船でもみんな七未を狙って投げるのに絶対に当たらない。七未は何でもいいから当たりたくてたまらなくなる。他人が殴ろうとする拳すら当たらないので仕方なく自分で自分を殴るようになる。そんな異常な行動のせいで入院させられてしまう。
    3話目は家でゴロゴロ過ごす怠惰な生活を愛する女は歩くことすら億劫で家の中を腹ばいで張って移動するようになる。ある日,父親と喧嘩して家を飛び出して外でも腹ばいで移動するが,なんと自分と同じように腹ばいで移動する男に出会う。誘われて男の住む家までついていくが...。

  • 表題作の木になった亜沙は中盤まではよかった。食べてもらえない、という流れから、終盤はもっと別の展開が良かったのではと思う。終盤、食べてもらえない悲しさが活かされてなかった。関係なくなってた。
    狂気を書けるのは才能だと思う。想像力も並では書けない。でも個人的には今回のような尖ったものより、今村さんの、もっと静かな寂しさ、虚しさを描いた作品が好き。「あひる」や「星の子」など。

  • 今村夏子の描く主人公は、イノセントさを描写しながら、ちょっとずつ狂っていく瞬間からが物語の真骨頂。特に「的になった七未」は、途中から急に筆致が乗っていくのかぐんぐんと読み手の感情を引っ張っていく牽引力が強くなる。
    可笑しみと悲しみをないまぜにしながら、最後になんとも不思議な気持ちにさせるのが今村夏子ならでは。恐ろしい作家だ。

  • 静かなホラーでした。
    独特の世界。

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著者プロフィール

1980年広島県生まれ。2010年『あたらしい娘』で「太宰治賞」を受賞。『こちらあみ子』と改題し、同作と新作中短編「ピクニック」を収めた『こちらあみ子』で、11年に「三島由紀夫賞」受賞する。17年『あひる』で「河合隼雄物語賞」、『星の子』で「野間文芸新人賞」、19年『むらさきのスカートの女』で「芥川賞」を受賞する。

今村夏子の作品

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