鉄路の果てに [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • 「シベリアの悪夢」という本には、著者の亡き父の軍隊生活の記録ととともに「だまされた」と記された数枚のメモがはさんであった。また、本の裏表紙には、地図になぞらえ赤い導線が描かれた地図が貼られていた。それは昭和17年から23年までの父の足跡であった。父は何を言いたかったのか、その赤い導線で何があったのか。日本列島から、朝鮮半島の釜山から中国のハルビンを抜け、バイカル湖畔のシベリアまでの鉄路を、「潔白」(幻冬舎)の著者の青木俊氏とたどる。
     赤い導線を辿る旅は、戦争の歴史を辿る旅でもあった。日清戦争、日露戦争、満州事変、太平洋戦争、シベリア抑留。各地を辿りつつ、その歴史が語られる。
     青木氏との旅は、弥次喜多の旅風でもあり、各地の料理と酒について、旅での人との出会いを含め、楽しく語られるとともに、「湖底に25万人もの人間が眠るバイカル湖の伝説」等の各地の興味深い話も紹介されている。
     「倒木更新」、倒れし老木を礎にして、新たに若木は育っていく。「桶川ストーカー殺人事件:遺言」「殺人はそこにいる-隠蔽された北関東連続幼女誘拐殺人事件」(いずれも新潮社)で、その取材力で事件の真相を抉り、数々の賞を受賞した著者が、父のメモをもとに、鉄路をたどる。戦争を学び、知る旅。歴史から未来を展望する旅。

  • 著者の、亡き父の戦争体験を、追って行くと言うので、戦争物かな?と、思って読み始めたが、シベリア鉄道の歴史的な、ストーリーで、思いの外、色々な、事実がわかって驚いた!勿論、戦争に、ついても厳しい現実が語られているが、シベリア鉄道で旅行してみたくなった!

  • 西

  • シベリア鉄道の旅としてはイルクーツク止まりなのだけれど、宮脇俊三『シベリア鉄道ものがたり』森まゆみ『女三人のシベリア鉄道』に続いてよいシベリア鉄道ものだった。

    単なるシベリア鉄道旅行記でもないしシベリア抑留ものでもない。著者清水さんの父・祖父の体験を辿る道筋。全てが明かされるわけではなくわからないことがわかる。

    日本が占領していた地域へのソ連軍の侵攻、軍関係者がいち早く情報を得てさっさと逃げてしまい、残されたのは民間人と「張子の虎」の青少年義勇兵たちだったという話は教会の方から伺った。
    ソ連兵に酷い目に遭わされた、だからソ連(ロシア)を忌み嫌うと言いながら東アジア文化フェスタにロシアが参加するのを承知で特別出演された宝田明さん。
    ロシア語教室初級の時ご家族がタシケント辺りに抑留されていた、そこに行ってみるためにという方がいたことを思い出す。
    抑留を体験された清水さんのお父様には「平成23年」になっての賞状発布(内閣総理大臣菅直人なのであった)、それまで日本政府は何をしていたのだろうか。抑留されていた方達は謝罪も補償もされていない。治安維持法犠牲者である私の祖父母がそうであるように。

  • 亡父への思い。生前話を聞けなかった。聞いておけばよかった。何かを乗せて鉄路を行く。鉄路東清鉄道からシベリア鉄道。ハルビンからイルクーツクへ。途中サバイカリスク駅でロシア入国。5時間以上の停車。その理由には日本軍が関係する。厳しい入国審査を経て、イルクーツクへ。父が抑留された街。日ロの歴史を思い、紀行に記す。読書は旅行の疑似体験。旅の終わりのイソップ寓話「農夫とその子どもたち」。その意味するものは?「知ろうとしないことは罪なのだ」、歴史も親の思いも。

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著者プロフィール

昭和23年生。皇學館大学学事顧問、名誉教授。博士(法律学)。
主な著書に、式内社研究会編纂『式内社調査報告』全25巻(共編著、皇学館大学出版部、昭和51~平成2年)、『類聚符宣抄の研究』(国書刊行会、昭和57年)、『新校 本朝月令』神道資料叢刊八(皇學館大學神道研究所、平成14年)。

「2020年 『神武天皇論』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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