ホット・ゾーン エボラ・ウイルス制圧に命を懸けた人々 (ハヤカワ文庫NF) [Kindle]

  • 早川書房
4.03
  • (11)
  • (12)
  • (8)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 95
感想 : 18
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・電子書籍 (465ページ)

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 「ホット・ゾーン〈エボラ・ウイルス制圧に命を懸けた人々〉」(リチャード・プレストン:高見 浩 訳)を読んだ。
    ウイルスとの戦いの最前線に立つ人々の恐怖感がズシリと覆いかぶさってくる。
    印象に残る文章『ある意味で、地球は人類に対して拒絶反応を起こしているのかもしれない』(本文より)

  • エボラ・ウィルスの阻止に命を懸けた人々を取材したノンフィクション。1994年に発表された作品の文庫版で、これまでに世界で350万部売れているという。アメリカのワシントン近郊のサルの検疫所でエボラウィルスが発生し、周辺はパニックに陥る…エボラは致死率90%で人間にかかった場合は全身から出血し、最終的に脳や内臓など体が溶けてしまうという恐ろしいウィルスで、作中の感染描写も数ある小説やノンフィクの中でも一番といっていいほどおぞましい。映像化無理でしょうと思ったが、アメリカで2019年にドラマ化されているそうだ。

  • 【私が深甚な興味を誘われるのは、チンパンジーという動物が絶滅の脅威にさらされた熱帯雨林の動物である、という事実であり、そのチンパンジーから人間に乗り換えたウイルスのほうはいまや絶滅の危機を免れた、という事実である】(文中より引用)

    致死率90% にして肉体を崩壊せしめるエボラ・ウイルス。1989年、その驚異のウイルスが突如ワシントン郊外に現れるという知らせが米陸軍伝染病医学研究所に届く。手がかりが少ない中、そのウイルスの蔓延を抑えるために早速対策に取り掛かるのだが......。著者は、『世界一高い木』などのリチャード・プレストン。訳者は、ヘミングウェイの作品の翻訳も手がけた高見浩。

    医学ノンフィクションの金字塔的な作品と聞いてはいたのですが、まさかこれほどまでに読ませる一冊だとは思いも寄りませんでした。ホラーのようなエボラ・ウイルスの罹患描写から始まり、最終的には自然に畏怖の念すら覚える傑作です。

    読みやすい訳もお見事☆5つ

  • 米国にあるサルの検疫所で発生したエボラ・ウイルス
    その制圧に命を懸けた人々のノンフィクション
    ウイルスに侵され犠牲になった人の描写が恐ろしい
    自分も感染したかもしれないという恐怖が読んでいてひしひしと伝わってくる
    制圧に従事する人にも家庭があり日常がある
    その両方が描かれていて、より現実味を感じる
    この人たちどうなるの…とハラハラしながら読み進みました。

  • エボラ出血熱怖い!!

  • 致死率90%のエボラウイルスの制圧に向けて闘った人たちの物語。ハザードレベル4の部屋で防護服を身にまといながら、サルの解剖に挑むが、誤ってメスで手袋に傷をつけて血が内部に浸透してしまう...ノンフィクションなのに個人の心理描写が濃く、小説みたいで止まらなかった。

  • エボラレストン

  • 引き続き、リチャード・プレストン『ホットゾーン』を聞き始める。もう14、15年前に読んでいるが、オーディブルで発見して、この機会に聞き直すことにした。

    オーディブルはリチャード・プレストン『ホットゾーン』の続き。

    「CDCの連中はおそらく、陸軍の能力を嫉妬して、激怒するだろう。「わが陸軍には、この非常事態を掌握すべき法定上の責任はない」ラッセル将軍は指摘した。「が、われわれには、それを掌握する能力がある。CDCには、その能力はない。つまり、われわれには能力があって権限がないのに対し、CDCには権限があって能力がないわけだ。となると、この先かなり熾烈なつばぜり合いが起こることは間違いないな」
     ラッセル将軍の見解では、これは陸軍兵士が厳密な指揮系統下で作戦活動を行うべき局面だった。必要なのは、日頃バイオハザード任務の訓練を受けている人間たちだ。彼らは若く、独身で、命を賭けることもいとわない連中でなければならない。彼らは互いによく知り合っていて、チームとして協力し合える者でなければならない。それに、命を捨てる覚悟もできていなければならない。
     実のところ陸軍は、ホットなウイルスに対する大規模な野外殲滅作戦を現実に遂行したことはまだ一度もなかった。したがって、すべては一からはじめることになるだろう。
     その点に関して、法的な問題がからんでくるのは明らかだ。したがって、法律顧問の見解を聞くことが必要になる。この作戦は合法的だろうか? 陸軍が”バイオハザード・スワット・チーム”を編成して、モンキー・ハウスに突入したとしたら、法に違反しないだろうか?
     陸軍の法律顧問たちはおそらく、それは違法行為だから実行を控えたほうがいい、と進言するにちがいない。そうラッセル将軍は見ていた。では、どうするか? その問題に関する自分なりの解答を、将軍は言葉に出して言った。「わたしの判断では、まず実行し、しかる上で許可を求めたほうが、最初に許可を求めて却下されるよりはるかに上策だな。われわれはまず、やるべきことをやる。その合法性を理論化するのが法律顧問たちの仕事というものだ」

    USAMRIID(アメリカ陸軍感染症医学研究所)は「研究所」と名がついていても軍事組織であり、有事の決断と実行力に秀でる。CDC(疾病予防管理センター)は「コントロール」と名がついていてもアカデミズム寄りの「研究所」であり、平時の予防研究と情報共有が基本路線で、実働部隊は持たない。CDC所長の政治任用が始まって以降はその傾向に拍車がかかる。

  • 実話なので映画みたいなカタストロフィはないですが、最前線で闘う人々の葛藤や恐怖が伝わってきます。日本ははたしてこのような対処ができるのか、ちょっと不安です。

  •  1967年にドイツのワクチン工場で見つかったマールブルグ・ウイルスと、1980年にアフリカ中央部地域で猛威を奮ったエボラ・ウイルスは、人類が出会った中でも最高に危険なウイルスだ。ほんの数個のウイルスが人間の血管に侵入しただけで爆発的な勢いで増殖し、体を崩壊させてしまう。最も凶悪なエボラ・ザイールの死亡率は90%以上だという。

     1989年にアメリカの首都ワシントンDC近郊のレストンにある施設で、実験用のサルが正体不明のウイルスに感染していることがわかり、ユーサムリッド(アメリカ陸軍伝染病医学研究所)による分析の結果、エボラ・ザイールに近い遺伝子を持つウイルスであることが判明する。CDC(アメリカ疾病予防管理センター)とも協力し、ユーサムリッドが中心となって施設の封鎖とウイルスの除去を行う。

     本書はノンフィクションのドキュメンタリーだが、関係者の日常生活や心理状態まで描写することで映画のような雰囲気になっている。最も危険なウイルスを扱う態勢であるバイオハザードレベル4の各種施設や装備が解説されるとともに、そういう施設で働く人々の生々しい緊張感が伝わってくる。会社の先行きを心配する民間人や、主導権争いをするユーサムリッドとCDCの研究者など、学術的なだけではない人間ドラマも描かれている。

     結果的にアメリカで見つかったエボラ・レストンは人間に犠牲者を出さなかったが、感染した人はいた。エボラ・ザイールと近い遺伝子にもかかわらず何故サルにだけ重篤な被害をもたらし人間には害をなさなかったかは不明のままである。そして各種エボラの自然宿主もいまだ不明であり、アフリカの熱帯雨林の奥に今も潜んでいる。

     今まさに新型コロナウイルスが猛威を奮う中で読んだが、目に見えない敵と戦うのは戦車や爆弾相手とは違う形で精神的に辛いと思われる。医療従事者にはただ頭が下がるばかりだ。

全18件中 1 - 10件を表示

リチャード・プレストンの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×