源頼朝 武家政治の創始者 (中公新書) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • 河内源氏の嫡男から流人の「佐殿(すけどの)」を経て、武家政権を樹立した頼朝の評伝です。『吾妻鏡』『玉葉』等の記述も「結果から訴求するのでなく、その時の妥当な判断」を検証して語っています。『荘園(伊藤俊一)』を踏まえると〈寿永二年十月宣旨〉時点で王権に復帰したことが分かります。令外の官的に公認された「敵方所領の没収」と「新恩給与」で勢力を拡大、戦いの基本は「敵を分断、内紛を煽る」やり方で、武家政権を樹立します。内部粛清を進めますが、平時体制への移行完遂前に亡くなり、その後が大波乱となりました(2019年)

  • 大河ドラマを楽しむために再読。『頼朝の武士団』読んだ後だったので、めっちゃ理解出来おもしろかった。ほんと奇跡のような人生。せっかく拾った命なので、薄氷を踏むような思いでなんとか生き延びようと智恵を絞ったんだろうな。やはり偉人だと思う。これで大河もっと楽しめるわ♪

  • 鎌倉幕府の創始者、源頼朝の事績を、吾妻鏡、平家物語、玉葉、愚管抄といった史料を用いながら検証していく。
    頼朝といえば範頼や義経といった源氏同族を粛清した酷薄な人物像が有名だが、それは北条執権家の正当性を描いた吾妻鏡による曲筆だと本書の端々に記載される。だが、頼朝が挙兵後の源平争乱から鎌倉幕府草創の時まで、ライバルやそれになり得る存在を粛清し、王家守護の第一人者、大将軍を志向していったことは本書の描く通りであり、肉親の情より政権の安定を期した冷酷な人という印象はそのまま残る。
    義経は概ね頼朝の意に沿って軍事行動を起こしていたが、後白河に取り込まれ在京での活動が長引き頼朝に対しうる力を持ちかねなかったため粛清された。範頼も若年の頼家に取って代わりうるため粛清されている。
    頼朝は挙兵してから鎌倉に居を定め、平家打倒の戦いを進める中で、勝ち取った所領を御家人に充てがう新恩給によって御家人の忠誠を得ていき地頭の設置を進めていくが、平家が打倒され平泉藤原氏も滅ぼす内乱集結をみて、戦時体制から平時体制の移行として御家人への御恩を京都大番役勤仕と官職任命に置き換えていく。
    頼朝は幕府権力を王家守護の唯一人者としての地位を盤石にすることを期して、姻戚である北条家や比企氏の一体化、娘の入内を画策するが不十分なまま死去する。その後幕府内部は戦時下として抑えられていた御家人同士の確執や権力争いが噴出し内部抗争が勃発するが、頼朝後家の尼将軍政子がその権威で治め、幕府制度は継続していく。

  • 12世紀末に鎌倉幕府を開いた、源頼朝。
     
    それまでの貴族中心の社会から、武士が統治する世の中への転換。
    京都から遠く離れた、東国の鎌倉での体制づくり。
     
    それまでの日本には参考になるモデルが無い中で、なぜこれらのことを成し遂げることができたのか。
     
    戦国時代や幕末と比べると関連書籍が少ないこともあって、これまであまり、この人物のことを学ばないまま過ごしてしまいました。
    書店巡りをしていたら、そのものズバリの題名の新書を見かけたので縁を感じ、読んでみることにしました。
     
    本書は10章で構成されており、源頼朝の生涯を、年代順に読み進める形になっています。
    その生涯で特長的なことは、「敗者の側の人間」だったこと。
    平治の乱に至る経緯、そして斬首されるべき境遇の頼朝が、冒頭部分で説明されていきます。

    そしてどにような経緯で彼が挙兵したのか、その後の戦いがどのように展開し、京都の政権に認められるようになったのかを、当時の中央政権の状況とあわせて解説しています。
     
    東国では平氏の圧政への反感が強かったこと、源平の争いは天皇家の覇権争いと関連づけて考えるべきこと、頼朝個人の人柄が貴族社会である京都の中枢の人々に受け入れられやすかったこと、などをこの部分で学びました。

    後半部分では、宿願の平氏打倒を成し遂げながら、その第一の功労者、義経と対立した理由を検証しています。
    北条政権の正統性を示すために書かれた『吾妻鏡』や脚色された『平家物語』などの記述は、史実と区別して読むべきなのだと、理解しました。
     
    終盤で書かれている鎌倉幕府成立後の頼朝の行動は、戦時から平時へと情勢が移行する中で、自らが構築した新しい体制と、旧来の体制を融合させようとした、彼の考えと苦労がうかがえる内容でした。
     
    敵として戦った相手を受け入れるいっぽう、大きな功績を挙げた部下を静粛することもあった、頼朝。
    一面的に評価できないことも、源頼朝という人の輪郭が見えにくい要因になっているのだなあと、理解しました。
     
    この時代についての興味が高まったので、関連する本を探して、勉強していきたいと思います。
     

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著者プロフィール

1954年、兵庫県に生まれる。1978年、京都大学文学部史学科国史学専攻卒業。1983年、京都大学大学院文学研究科博士課程指導認定退学。現在、京都大学名誉教授、京都大学博士 ※2022年1月現在
【主要編著書】『平清盛と後白河院』(角川書店、2012年)。『治承・寿永の内乱と平氏』(吉川弘文館、2013年)。『源頼義』(吉川弘文館、2017年)。『源頼朝』(中央公論新社、2019年)

「2022年 『平氏政権と源平争乱』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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