藁を手に旅に出よう “伝説の人事部長”による「働き方」の教室 (文春e-book) [Kindle]
- 文藝春秋 (2020年9月17日発売)
- Amazon.co.jp ・電子書籍 (286ページ)
感想・レビュー・書評
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働き方、働くにあたり自分自身の考え方、自分の目的やそのための足場とはなにか。
ある会社で行われた新人研修と、そのメンバーの3年目研修を通して読者が我が身を考える書き方。
講義するのは女性人事部長で、毎回寓話を使って受講者(つまり読者)に気づきを促してゆく。
寓話は教訓がわかりやすく普遍的で、言われている教訓と違うものを読み取ってみようとか、その教訓を踏まえて自分ならどうするかを考えてゆく。
この本での受講者は新人と3年目メンバーだけど、自分の働き方を考える意味ではベテラン社員でも転職希望者でもどの年齢や立場でもOK。自分を振り返る考え方ということでは仕事だけでなく日常生活や考え方にも十分役立つ。
例えば「はだかの王さま」で、「空気に負けてイエスマンになるな。自分だったら声を挙げます」というものが表面的な教訓。それに対して「当時の状況や、今自分に置き換えたらどうなるかを考え、再度自分だったら本当に声を挙げられるかを考えましょう」と進み「空気に負けないためには論理を鍛える、空気に負けた経験を振り返って今ならどうするかを問いかけてみる」につながる感じ。
また、「自分は実績を上げたのに評価されていない」「上司と合わない」など、雇われる側共通の不平不満に対してもただの愚痴でおわりではなく、
「実績がダイレクトに評価されシステムだと実績が下がるとそのまま給料が下がってしまう。だからある程度固定させる必要がある」「上司と合わない人同士が部署変換してもまた新しい上司と合わないのでは」などと、全員が納得する完璧な組織はなくて見方を変えれば納得できる面もあるということで、そこから自分の考えを変えてゆこうと説いている。
寓話へのツッコミはかなり強引だと思うところもあるけど、お話形式だから読みやすい。
・どのフィールドで頑張るかを戦略的に考えよう。戦略的思考とは、時間軸は長く、論点は多く。目の前の感情などに流されない。
・相手に売り込む場合、相手がなにを欲しがっているか、それを渡せるようにする。
⇒これは人間関係全体にそうですね。私はうまくできてないんだよなーー。
・当たり前のもの同士を組み合わせて新しい価値観を生む。
・他人が決めた単一の尺度で上に行ったほうが偉いという考え方から離れて、自分の人生を図る尺度を決めよう。(一流企業で同期の中で一番最初に役員になった人が一番偉い、とかが前者)
・この仕事をしているのは上司にいわれたから〜など三人称ではなく、自分はどうしたいのかの一人称で考える。
・目標(出すべき成果)を見る。そのための勝負ポイントを3〜5くらいに分解する。いきなり具体的なやりかたでなく抽象的レベルから始める。
・断片的かつ短期的な正論で文句を言うのは正しいようだけど、あくまでの他人事。そういう人は、ここでないどこかに理想の世界があると思い込み結局満足しないことを繰り返す。短期断片正論でなく、自分が決める立場だったらと考えて、具体的になにができるかを考えるようにする。
・目標のピラミッドを作る。土台「今自分はなにをしているのか」その上「それはなんのために」その上「それはなんのために」を作ってゆく。具体的に出す。(世界平和のため、とか抽象的になったら一度ストップ)上に重ねていった「なんのため」を達成するために、一つ下に戻っても良い。すると土台が増える。
お話としては、この受講者たちはかなり素直だな。スクール形式で人事部長のお話を聞いて「わたしならノーって言います!」とか、3年目研修で「実は今転職を考えています」とか、そんなことを言えるんだったら十分風通しが良い職場にいると思いますよ。
そしてこの会社では、人事部長(その後役員に昇格)自らが新人に連続講義して、同じメンバーに3年後講義をして、実際に自分たちが採用した社員たちがどのように仕事してきたか、これからのキャリアをどう考えるべきか、などを言ってくれて自分の挫折談まで語って示唆しようとしているのは良い職場ですね。
仕事だけでなく、日常的考え方にも使えますね。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
新入社員研修という場を舞台として、誰もが知っている寓話をもとに、働き方、キャリアの考え方を説いた本。
一般的に言われる教訓ではなく、違う見方から学びを引き出すというやり方も面白いし、寓話を題材にすることですごく分かりやすく、そして記憶に残りやすくなっているのがこの本のすごいところ。そして、誰かに話したくなるというのも、うまくできているなと思う。
教訓の内容については目新しいものがあったというよりは、より理解が深まったなぁという感じ。何より、抽象的なことを具体的にわかりやすく伝えることってすごく難しいんだけど、この本のたとえ話はすごく使いやすいので、伝え方に関してすごく勉強になった。後輩に教えるとき、ぜひともパクらせていただこうと思う(笑) -
社内では中堅と言われる世代の自分にとっても発見と学びがありました。
キャリアというビジネスマンに共通の興味関心テーマを軸に、戦略的な思考のこと。自分の人生を生きる、人生の主導権を握る。こと。などを寓話を例題に独自の解釈で理解を深めていきます。
読み進めていくと点が線で繋がっていく感覚と言語化されなかった曖昧な思考の輪郭がクリアになっていく感覚があり、読んでいて満足度が高かったです。 -
若手向きかと思いきや、今でも色々役に立つ。
子どもが大学生くらいになったら勧めたい一冊。 -
小説形式で書かれているので、読みやすい。
新入社員サカモトくんは、ごくごく普通の人。
特に将来の大きな夢もなく、第一希望とも言えない会社に入社し、日々紋々としている。
やりたいことを見つけるのは本当に難しい。
そして、それを実行するのはさらに難しい。
このサカモトくんは多くの社会人にそのまま当てはまるのではないだろうか。
そして人事部長の石川さんは、理想的な上司としてサカモトくんの前に現れる。
決して順風満帆の石川さんではなく、自身の経歴もそれなりに苦労の連続だ。
そして新入社員研修、3年目研修で聞かされる石川さんからの寓話を例とした仕事の考え方の話。
これは誰が聞いても為になる話だ。
これからの上司は語って面白いエピソードを必ず用意しておくべきだ。
決して自分の自慢話であってはいけない。
聞く人が楽しめるような、為になるような、そういう内容。
語る力がないと、これからの年輩者は生き残れないのではないだろうか。
そういう意味で、自分も石川さんのような上司を目指さないといけない。
(すでに石川さんの年齢を超えているのだが)
一つの寓話であっても、実は単純ではない。
一般的視点だけで物事を判断するのは本当に危険だ。
その物事を深く考察し、さらに広い視野でも見ながら、次の展開を考える。
寓話の内容というよりも、その思考方法は必ず今後の役に立つはずだ。
若者は本当に藁すらも持っていない。
何も持っていないのに、若さや時間、可能性は沢山持っている。
それが年齢と共にしぼんでいくことに気が付く人は案外少ない。
頭では理解していても、心の底から実感して、対策をする人は決して多くないだろう。
それだけ難しいことなのだ。
人類の歴史は文明的な部分だけでもすでに何千年が経過している。
それなのに、人間の本質部分はなかなか変わらない。
だからこそ、先人の知恵を活かさない手はないし、本当に心してこれらを実践することこそが重要なのだと思う。
周囲の環境はなかなか変えられない。変えられるとすれば、自分自身の行動なのだ。
これからの時代は、年輩者こと生きづらくなるだろう。
だからこそ語る力も必要だし、もう一度でも藁からスタートできるメンタリティも必要だ。
初心に返りたい時に本書を読み感じることもいいだろう。
(2021/11/7) -
友達の投稿でタイトルをみてぴぴっと来て購入。「自分のおもっていた内容とは違うったけど、なんて素敵な本。「帯のように若い人に読んでもらいたいした」年寄りにも自分のキャリアを見直す素敵な本でした。(MBAの先生ならではの高い目線の内容ではありますが。。。。)
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藁にハエからわらしべ長者:誰もが持っている小さなマイクロスキルを組み合わせることで付加価値が生まれる。価値は自分が判断するものではなく相手に需要があるかどうかで考える。
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これは、ビギナー社会人必読。
キャリア系の本は、とりあえずこれ読めば良くない?と思う。
それくらい良い。
そこそこの大企業に就職した、個性豊かな新人数人と、「エリート人事部キャリアウーマン」が講師となる、新人研修を舞台に繰り広げられる、「現代のありうべきキャリア教育」がここにある。
エリート人事部は、ウサギとカメ、裸の王様や、花咲か爺さんといった、おなじみの寓話をもとにして、極めて「本質的な」キャリア論を繰り広げる。(エリート人事部(=モデルは著者)の講義を2000円もかけずに受けれるのは、安い。)
主人公的なサカモトを中心に、同期の皆はエリート人事部との対話を通じて、みるみるうちに成長していく。
その様は、まるで物語を読んでいるようである。
いわゆるビジネス書が「文藝春秋」と荒木さんの手にかかると、
あたかも「小説」のごとき様相を帯びるのであった。
繰り返しになるが、「キャリア論」「仕事論」は、もうこれでいいでしょ!感がある。
エリート人事部は、「人生は、ゴールの見えないマラソン」だと言い放った。
とにかく、社会人になる前に読みたい一冊である。
激推しする。(100万部はいってもおかしくない。)