ロイヤルシアターの幽霊たち [Kindle]

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  • さびれた海辺の町シーショーに引っ越してきた一家。夫婦は2年前に閉鎖された古い劇場を再興することを夢見ているけれど、建物の状態はひどく、資金繰りもきびしくて、前途多難なもよう。

    いっぽう、夫婦にはグレイシーという元気な娘がいた。娘にはなぜかこの劇場に住みついた幽霊たちの姿が見えて、そのひとりひとりに、なぜここに居ついたのか、そもそもなぜ死んでしまったのか、いやがる幽霊たちをうながして語らせようとする……。

    そんなわけで、中盤過ぎまでは、幽霊たちの昔語りが中心になって物語はすすむ。ところが、このままいくのかなと思うあたりで驚きの展開があって、最後は怒濤のように一気読み。語り部のマコックランさん、やっぱりすごい。おもしろい。

    ただ、意外と子ども向けに訳されてはいない気がして、ときどき何度か読み返さないとわからないところがあった。たとえば第15章、グレイシーが画家のウィリアムさんと話をする場面。相手の呼び方がつぎつぎと変わる。「画家の幽霊――ウィリアムさん――」「グレイシーは、ウィリアムさんの帽子の縁に」「画家はグレイシーの質問を」「年老いた画家がしかたなさそうに返事をする」「画家は今回もグレイシーに負けて返事をした」「男の黒い大きな体がいら立ちで震える」この最後の「男の黒い大きな体」というのがウィリアムさんらしい、ということに気づくまでに何度か読みかえした。(しかも直前に改行があるので、まじめにわからなかった)

    呼称をどんどん変えるのは英語の原文では当たり前のことで、大人の文学だとそれをそのまま訳すのも普通のことなので、読者層をかなり上に設定しているのかなと思った次第です。
    【「男の」は、原文ではぜったい the man's と冠詞がついているはずで、それによって誰を指しているかが、さほど苦労せずにわかる仕組みなんだよなあ。そこらへんが英語と日本語のちがいだなとあらためて思う。】

  •  シーショーの町にはロイヤルシアターという立派な劇場がある。だがこの建物はすっかりさびれて、壊れかけている。そして、たくさんの幽霊が住み着いている。
     このロイヤルシアターが大好きで、修理して復活させたいと願っているグレイシーがパパとママとやってくる。そして、このグレイシーには幽霊たちが見えてしまうのだ。自分たちの過去を話したがらない幽霊たちに付きまとい、強引に語らせようとするグレイシー。過去を語ることによって次第に変わっていく幽霊たちは、ある時グレイシーの変化に気が付くのだ。
     私もとても驚いたし、悲しい結果になってしまったが、幽霊たちが過去を語ることによって、少しずつ自分の人生に納得して輝いていくのが良いと思った。それに様々な時代の幽霊たちの交流もおもしろい。
     イギリスの児童文学作家であるジェラルディン・マコックランの他の作品も、楽しく読むことができるのでお薦め。

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著者プロフィール

1951年生まれのイギリスの作家。『不思議を売る男』で88年にカーネギー賞、89年にガーディアン賞を受賞。2004年に『世界はおわらない』でウィットブレッド賞児童書部門受賞。18年には『世界のはての少年』で二度目のカーネギー賞受賞という快挙を成し遂げた。

「2022年 『世界のはての少年』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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