民主主義とは何か (講談社現代新書) [Kindle]

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  • 冒頭にこんな問いかけが書いてある。
    A.民主主義とは多数決だ。より多くの人々が賛成したのだから、反対した人も従ってもらう必要がある。
    B.民主主義の下、すべての人間は平等だ。多数派によって抑圧されないように、少数派の意見を尊重しなければならない。
    どっちも正しいようだが、両立もしないようにも見える。どちらが正しいか答えられなかった人は、本書を読んで損はしない。ぼくは損しなかった。

    著者は研究者だが、本書はとてもわかりやすい。そもそも「民主主義」とは何を指していう言葉なのか、議論はそこから始まる。古代ギリシャに始まり、近代ヨーロッパからアメリカ、戦後日本まで、「民主主義」の歴史や研究者を紹介しつつ、改めて「民主主義」について考える機会を与えてくれる。
    いろいろな人が数千年に渡って、よりよい「民主主義」を考え、悩み、提案し、試して、失敗し、またやりなおしてきたことがよくわかる。それは今も完成していない。ナチスも、トランプも、「民主主義」から生まれたんだから。
    チャーチルの言葉を思い出した。「民主主義は最悪の政治形態と言われる。他に試みられたあらゆる形態を除けば」。

  • 「ナンチャラの民主化」ってウェブ進化が新しいページを開く度に言われるけど、技術的な壁突破よりも、人々が使いこなして社会実装できるかどうかが問題。

    というのも、歴史を眺めると「誰に、何を決める権限を、どのように与えるか?」の内容によって上層からの反対の強さが決まり、そこでボトムとの綱引きが始まる。晴れてボトム側が勝ったとしても、ボトムの規模と権限行使の難易度でによってそれが社会実装できるか決まる。

    機能しなければ、混乱が増幅して、やがて英雄待望論が広がり、選ばれし英雄がその混乱が大きいほど大活躍し、独裁に揺り戻されていく。

    つまり民主化してもどこかで踏み外してしまって長期的には「民主制」と「独裁制」が行ったり来たりするんだろうけど、もし適正な規模感で「民主化」を段階的に浸透させていくモデルがあるとするなら理解したいなぁ。

    キーワードとしては「DAO」や「Communitying」「シビックテック」などのアンテナを立ててる。「ティール組織」の概念に、組織が段階的に一人ひとりの主体性が発揮される方向へと進化するとあったと思うが、これと似て非なるものだろうか?

    この本は一言でいうと「民主制の歴史」になるが、本書で紹介されてたトクヴィルの「アメリカのデモクラシー」を読んでみたくなった。

  • - 「民主主義は多数決の原理だが、少数者を保護することでもある」「民主主義とは選挙のことでだが、選挙だけではない」「民主主義は具体的な制度だが、終わることのない理念でもある」 p7
    - ジョンレノンのPower to the people、「人々に力を」と歌った。『民主主義という言葉のもつ素朴な含意をもっともよく示しているのが、ジョンの歌詞かもしれません。』p36
    - 『民主政が「多数者の利益の支配」を含意とするとすれば、共和制は「公共の利益の支配」を意味しました。』p79

  • 古代ギリシャ、ローマそして中世のイタリア都市国家における民主主義の言葉の説明から始まり、いかにこの言葉が万能の素晴らしい言葉のような印象を振りまいているかを反省させられた。民主主義は自由主義と時には対立することもある概念。民主主義というときに「議会制」が前に付いたものが現在の姿であり、そこで主要な役割を果たす政党はPartyの略であるが、本来は党派という悪い意味だった!それが正に今もマイナスになっているということを痛感する。代議制民主主義を民主主義そのものと同一視するような教科書的な教えが刷り込まれていることの危険を感じた。米国のトランプ現象、日本のネトウヨ的政治動向など、民主主義が正に危機にあることを恐れる。

  • 民主主義を「参加と責任のシステム」として捉え、その誕生からの歴史を紐解いていく。古代ギリシアの民会を民主主義の始まりとし、共和政との対比で否定的な意味で用いられがちだった十数世紀を経て、近代以降に「代議制民主主義」として再評価されるまでの流れが、非常に明快に描かれており、読んでて苦労しなかった。
    さらに、コロナ禍という喫緊の問題も、抑制的ではあるが視野に入れている。今を生きる我々にとって、「民主主義」の根本を見つめ直し、政治とは、国家とはを考え直す契機を与えてくれている。
    「民主主義とは何か」という問いに対しては、一言で語れるものではないということが、本書を通じて理解できた。共同体の構成員である我々一人一人が、その答えを模索し続けることが、民主主義の新たな活路を開くことに繋がるのかもしれない。

  • 社会科の授業ずっと寝ていた私のようなものにもたいへんわかりやすく読めました

  •  今、危機に思える「民主主義」ってそもそも何なのか、その本質は?と、古代ギリシアに遡って日本の戦後民主主義まで、様々な国や体制においての成り立ちや特徴・違いについてわかりやすく書いてあり、とても勉強になった。
     歴史を辿ると、社会は行きつ戻りつしつつも、良い方向に進んできたことは間違いない。今「民主主義」と考えられているものも完成形ではなく、良い方向にアップデートして行かないといけないと。
     この本は、珍しく電子書籍で読んだけど、やっぱり紙の本が好きだな。現代の問題の一つである情報技術の進歩に負の側面があることに対して、この本では”良い方に賭けるしかない”とのように書いてあったが、本当にそう思う。というより、良くなるようにコントロール・活用する技術を身につけることが大切なんだろうと思う。

  • 「保守主義とは何か」で感銘を受け注目していた宇野さんですが、学術会議ではじかれた6名の一人としても有名になってしまいました。
    本著はタイトルの通りの一冊で大きな括りだけに物足りないところはありますが、まさに初学者向けのまとまった内容になっています。
    この一冊から派生してどこまで遠く、深くいけるのかと期待できるブックガイド的な側面もあります。71

  • 民主主義ってのはとてもすばらしいもので、世界は、いずれみんな民主主義国家になっていくはず……というイメージがなんとなくあった。でも、実際には、独裁国家、あるいは独裁的な国家が増えている。その理由がいくらかわかった気がする。多数決で決めれば、少数の方の人の権利や自由が侵害されるんじゃないの? この問題一つとったって民主主義ってのは難しい。いろいろと考えさせられた。名著だと思う。

  • 頭がよろしくないので、読むのにすごく時間がかかってしまった。
    民主主義は不完全で未完成な、制度であり理念である、と。これを放棄せずにああでもないこうでもないと取り組み続ける努力が必要。そうありたいものです。
    もう少し日本の民主主義に関して詳しく書いてあったらなぁと思いましたが、難しいのかな。

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著者プロフィール

東京大学社会科学研究所教授

「2023年 『法と哲学 第9号』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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