生と死を分ける数学:人生の(ほぼ)すべてに数学が関係するわけ [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • 人間はいかに思い込みが激しいかがよくわかる1冊だった。

    まず、無害な問題でいえば、「何人の人を集めれば、最低でも2人が同じ誕生日である確率が半々を超えるのか」問題。
    たとえば教室で同じ誕生日の人がいてもこれは別に驚くべき一致ではなく、少なくとも23人いればよい。
    仮に1クラスが40人近くいるとすればなおさら誕生日が一致する確率は上がる。

    しかしこれが、証拠品についたDNAによって容疑者を特定する場合だったらどうだろうか。これは1人の人生を左右する問題である。
    DNAさえ一致したら、容疑者に決まっている。という思い込みがあるけれど、これだって実は、確率的にそれほど確実ではないのだ。

    かの有名な「ドレフュス事件」で、ドレフュスの容疑を晴らしたのが、かの有名な数学者アンリ・ポアンカレだったというエピソードにも胸が熱くなったが、

    何より勉強になったのが、「感度」と「特異度」について。
    日本でも、婦人科検診はおそらく多くの女性を悩ます問題だと思う。例えば乳がん検診などで陽性が出た場合、絶望的な気分で数日を過ごした人も多いのではないだろうか。

    検査が100%「特異」であれば、病気の人以外に陽性は出ない。つまり偽陽性は存在しない。
    一方、「感度」100%の検査であれば、病気にかかっている患者全員に正しく警告を発する。つまり偽陰性は存在しない。

    しかし実際のところ乳がん検診などはスクリーニング検査であるため、わりとざるの目は粗いのである。

    例えば、女性が乳がんになる確率が1%
    乳がんである場合に検査結果が陽性になる確率が90%
    女性が乳がんではないのに、陽性の結果がでる確率が9%とすると、

    例えば10000人が検査を受けたとして、乳がんである人は100人、乳がんでないひとは9900人である(罹患率)。
    しかしその100人のうち、本当に乳がんであるのは90人。一方、乳がんではないはずの9900人のうち、9%が偽陽性だから、891人が偽陽性。
    したがって、つまり、陽性という結果が出た981人中の90人だけが真の陽性であるわけだから、そのうちの「9%」だけが乳がんであるわけだ。

    本書によると、医師でさえ、このことをあまり理解していないらしい。いわんや被検査者をや。
    感度と特異度の正確な定義は常識としてちゃんと共有した方がいいと感じた。そうしないと、婦人科検診によってうつ病になる人もいたりして二次的な被害をもたらす。

    イメージとしては、スクリーニング検査は、粗い目のざるで陽性っぽい人を探し出すものだ。
    その中から、さらに精密検査をすることによって真の陽性を見つけ出すのだ。
    このあたりの理解をしっかりと定着させないと、せっかくの効果的な検査を敬遠する人が出てきたり、根拠のない誤解が生じたりする。

  • 数字トリックにだまされるな、という話。
    倍倍に増えていくとどうなるのか、2回も同じ親が乳幼児突然死症候群により子供を亡くす確率と裁判、ワクチン接種と集団免疫について。
    なんとなくネズミ講はやばいとわかっていたが、その「やばさ」
    が実感をこもって納得させてくれる文章でかかれている。
    裁判と数字も面白い。日本の裁判について、無罪の人を捕らえるくらいなら有罪の人を逃がす方を選ぶという、先進国の国の考え方と異なる国と紹介されていて、その通りすぎて、恥ずかしい。
    ワクチンと集団免疫についてはその通りであるのだが、個人でみたときに、どうしても副作用になる確率と発症予防率、発症確率が必要だと思うのだが、そこに一切触れず、ワクチンを反対する者は愚か者ひとくくりにするのは残念(自分はコロナの反ワク者ではありません)。

  • # 思ったこと
    ## ABテストやってからいいメトリックを拾って効果があったって主張するのはダメ
    - 95%信頼区間でも、20個に1個は統計的に優位な結果が間違って出る。でも、UIの変更なんかはやってみないとどんな効果があるのか分からなかったりするし、難しい。

    ## 2進数だと0.1が表現できない
    - これはプログラマあるあるの話題だけど、これのせいで時刻のズレが生じて、パトリオットミサイルのレーダーが反応しなかったのが原因で、湾岸戦争で米軍に犠牲者が出たって話、実例のインパクトがすごい。
    - というか、循環小数になる有理数とならない有理数っていうのは、それを何進数で表現するかに依存する問題なんだな。

    ## 秘書を雇用するアルゴリズム
    - これもアルゴリズム自体は知っていた。レストランを決めるときにも使えると。なるほど。
    - ここでもネイピア数が出てくるの不思議だな。MMRだったらノストラダムス認定したい。

    ## アルゴリズムに全てを頼れない話
    アルゴリズムに全てを任せた場合の悲惨な例に、Facebookのトレンドトピックの話。人間に任せたら左よりだって批判が出て、全部アルゴリズムに切り替えたら、右派のフェイクニュースに席巻されて、最終的にトレンドトピック自体を廃止したとか。Twitterで起こってる事がそれより前にFacebookで起こってたんだな。

    ## 独立でない確率事象を独立として扱ったときの弊害
    同じ夫婦に二度起こる可能性は非常に稀なので、これは突然死症候群ではなくて殺人だと裁判で有罪になったエピソード。インパクトがすごい。

  • こんなところで数学は使われてますよーというのを事例をたくさん出して紹介する本
    数式は一切出てこず、だからこそ読み物として成立しているが、一方解釈が頭に入って来づらいように思う
    多少の数式を含めて文章を簡潔に横書きで、だともっとサラサラ読めるかなぁ

    偽陰性・偽陽性の話、感染症とワクチンの話はタイムリー
    読んで興味深いのは裁判事例
    遺伝子捜査はフットプリント法で行うって知った時衝撃を受けたけど、未だにあまり進展していなさそう
    数字を鵜呑みにしないスタンスでいたい

  •  Audibleでランニングしながら試聴。数学啓蒙書は普通に読むのでも理解が追いつかないものが多いが、本書で扱われるトピックはさほど真新しいものがなく、以前どこかで読んだことがある内容が多いため、走りながらでもなんとか筋が追える。おそらく本書が邦訳された理由は「コロナ流行前にパンデミックの数理モデルをわかりやすく紹介した章がある」ということに尽きると思うが、込み入った話がさほど多くないためラン中の流し聴きには最適。繰り返し聴きたいと思う。しかしAudibleの制度変更で、こういった良書がコイン一枚では買えなくなってしまったのは本当に残念。

  • 知らないことが一部あったので少しは役に立ちましたが、いまいちな内容でした。
    物事を単純化しすぎている。
    https://seisenudoku.seesaa.net/article/478327526.html

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著者プロフィール

キット・イェーツ(Kit Yates)
英バース大学数理科学科上級講師であり同大数理生物学センターの共同ディレクター。2011年にオクスフォード大学で数学の博士号を取得。数学を使った彼の研究は胚形成からイナゴの群れ、睡眠病や卵殻の模様の形成にまでおよび、数学が現実世界のあらゆる種類の現象を説明できることを示している。とくに生物におけるランダム性の役割に関心を持っている。その数理生物学の研究は、BBCやガーディアン、テレグラフ、デイリーメール、サイエンティフィック・アメリカンなどで紹介されてきた。研究の傍ら、科学や数学の記事も執筆、サイエンスコミュニケーターとしても活動する。『生と死を分ける数学』が初めての著書。

「2020年 『生と死を分ける数学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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