わたしたちが沈黙させられるいくつかの問い [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • 本書はフェミニズムについてのエッセイ集だが、男性こそ手にとって読むべき本だと思った。SNS 上の攻撃的なコメント、DV、痴漢、レイプ、そして凄惨な殺人に至るまで、女性が沈黙させられてきた数多のエピソードを辿っていくには、時にはページを捲ることが躊躇われることもある。しかし、長らく社会が女性たちに投げつけてきた「答えのない問い」そのものを問い直すことが今もなお求められている。そのためには、ひとに沈黙を強いる権力や特権の存在を認め、洞察力と組織力と介入をもって世界を変えていく共事的な営みが必要だ。沈黙は人と人とを分断するが、言葉には人と人とを繋ぐ力もある。多様性を受け入れること、認知すること、人間性を回復することを通じて、言葉は変化の媒体となる。

    家父長的な社会は女性の言葉を奪ってきたのと同時に、それは男性をも沈黙させてきた。社会は男性に権力や集団の一員として特権を与えることと引き換えに、感情的な表現の抑圧と同調を求める。
    当初は、本書で紹介されるようなミソジニストの気が知れなかったが、果たして 100% そうと言えるのか?と問い直すと、暫くして怖気を震った。例えば、仕事と家事の役割分担、ポルノの表現やジャンル、ヒステリーに対する嫌悪感など、周りを見渡せばバイアスだらけの「デフォルト設定」が溢れている。程度の差はあれ自動的にマンスプレイニング的思考が形成されてしまうのだろうか。

    こうした社会が規定する画一的な「幸福」観念も、沈黙に拍車をかける。それは本来一人ひとりで異なるものであるはずなのに、どこか型に嵌めるものになっている。幸福という想像力が、誰かにとっては罰になり得るのだ。ならば、その言葉は実態のない空虚なものであって、一人ひとり別の言葉で綴り直さなければならないのではないか。「愛し愛されること、満ち足りていること、名誉、意味深さ、深遠さ、約束、そして希望。」ソルニットの語彙をヒントに、社会ではなく一人ひとりが語り直していくべきだと感じた。

  • ほぼ全ての内容(女性が置かれている環境や日常茶飯事のハラスメント)に共感。
    自分は男性だけど、そんなことはしないと思う男性は是非フェミニズムを理解して一緒に戦ってほしい。

  • P70 “古典文学に登場する予言者テイレシアースは、罰を受けて女性に姿を変えられ、そのまま七年を過ごし、再び男性の姿に戻る。ジェンダーとセクシュアリティに関する直接の証言を求めて、神々は彼のもとを訪れた。現代ではトランスの人々が、性役割が押しつけられ再強化されるさまをつとに知る証言者たちだ”

    →古典文学にてその視点があるのおもしろ。意見を聞こうとする動きまで含めて。

    P75 “女性性はリーダーシップと結びつかないものなので、政界の女性たちは女性的すぎてはいけないことになっているが、男性性は彼女たちの特権ではないので、男性的すぎてもいけないことになっている。このダブル・バインドのせいで彼女たちは存在しないカテゴリーに自分たちを押し込めることになり、必ずどこかで踏み外しているような人物であることを強いられる”

    →男性性や女性性というカテゴライズ自体がもう何も定義できないものになっている気。

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著者プロフィール

レベッカ・ソルニット(Rebecca Solnit):1961年生まれ。作家、歴史家、アクティヴィスト。カリフォルニアに育ち、環境問題・人権・反戦などの政治運動に参加。アカデミズムに属さず、多岐にわたるテーマで執筆をつづける。主な著書に、『ウォークス歩くことの精神史』(左右社)、『オーウェルの薔薇』(岩波書店)がある。

「2023年 『暗闇のなかの希望 増補改訂版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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