- Amazon.co.jp ・電子書籍 (233ページ)
感想・レビュー・書評
-
本書はフェミニズムについてのエッセイ集だが、男性こそ手にとって読むべき本だと思った。SNS 上の攻撃的なコメント、DV、痴漢、レイプ、そして凄惨な殺人に至るまで、女性が沈黙させられてきた数多のエピソードを辿っていくには、時にはページを捲ることが躊躇われることもある。しかし、長らく社会が女性たちに投げつけてきた「答えのない問い」そのものを問い直すことが今もなお求められている。そのためには、ひとに沈黙を強いる権力や特権の存在を認め、洞察力と組織力と介入をもって世界を変えていく共事的な営みが必要だ。沈黙は人と人とを分断するが、言葉には人と人とを繋ぐ力もある。多様性を受け入れること、認知すること、人間性を回復することを通じて、言葉は変化の媒体となる。
家父長的な社会は女性の言葉を奪ってきたのと同時に、それは男性をも沈黙させてきた。社会は男性に権力や集団の一員として特権を与えることと引き換えに、感情的な表現の抑圧と同調を求める。
当初は、本書で紹介されるようなミソジニストの気が知れなかったが、果たして 100% そうと言えるのか?と問い直すと、暫くして怖気を震った。例えば、仕事と家事の役割分担、ポルノの表現やジャンル、ヒステリーに対する嫌悪感など、周りを見渡せばバイアスだらけの「デフォルト設定」が溢れている。程度の差はあれ自動的にマンスプレイニング的思考が形成されてしまうのだろうか。
こうした社会が規定する画一的な「幸福」観念も、沈黙に拍車をかける。それは本来一人ひとりで異なるものであるはずなのに、どこか型に嵌めるものになっている。幸福という想像力が、誰かにとっては罰になり得るのだ。ならば、その言葉は実態のない空虚なものであって、一人ひとり別の言葉で綴り直さなければならないのではないか。「愛し愛されること、満ち足りていること、名誉、意味深さ、深遠さ、約束、そして希望。」ソルニットの語彙をヒントに、社会ではなく一人ひとりが語り直していくべきだと感じた。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ほぼ全ての内容(女性が置かれている環境や日常茶飯事のハラスメント)に共感。
自分は男性だけど、そんなことはしないと思う男性は是非フェミニズムを理解して一緒に戦ってほしい。