アジャイル開発とスクラム 第2版 顧客・技術・経営をつなぐ協調的ソフトウェア開発マネジメント [Kindle]

  • 翔泳社
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感想・レビュー・書評

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  • アジャイル開発の源流となるスクラムから解説した本。ソフトウェア開発に限らず、企業活動をより創造的にしていこうと呼びかけている。実例もあって良かった、失敗・苦労した点も知りたい。

  • 本書では、平鍋氏から野中郁次郎氏への並々ならぬリスペクトを感じる。ひいては、それが日本が世界へ貢献することへの熱い思いなのだと思う。

    野中郁次郎氏は、以下のように書いている。
    “反省に始まり、本質直感や先読みまで組み込まれた機動的な朝会、共感を媒介にして、異質なクリエイティブ・ペアが知的コンバットを行うペアプログラミングなど、我々が組織的知識創造理論で示したエッセンスがアジャイルやスクラムには組み込まれている。”
    「第2版に寄せて」


    “何といっても、「仕様書」という厚い文書を壁越しに投げることで情報を伝達していたウォーターフォールから、壁を取り払って1つのプロジェクトを作り、対面のコミュニケーションを基本に情報を伝達し合いながら問題解決する、というのがアジャイル開発の中心にある。
    「第10章 竹内・野中のスクラム論文 再考」


    以下も野中の言葉である。
    ”日本のものづくりのリーダーとして語り継がれる本田宗一郎やソニーに井深大、あるいは松下幸之助、シャープの早川徳次。彼らはみんな製品開発の卓越したイノベーターだっただけではなく、チームを巻き込んだ開発のプロジェクトリーダーであり、そうした組織を創り上げることに成功した名プロデューサーだったのです。アジャイルの言葉でいえば、彼らはスーバー・プロダクトオーナーだといえるでしょう。”
    「第12章 スクラムと実践知リーダー」

    日本のものづくりは、スーパー・プロダクトオーナーの力だったのである。

  • 『#アジャイル開発とスクラム』

    ほぼ日書評 Day654

    既に「アジャイル開発」ということが言われて久しいが、第一部は本書が版を重ねるにあたって、アジャイル開発のノウハウを今一度定義する内容。
    今、自分がプログラム開発をする立場にはないが、ナレッジとして持っておくことは必要と感じた。
    最も印象深かった箇所。開発対象を「スプリント」という最小単位に分割し、これを期限までに開発完了(テスト済みの稼働する状態)させていく。開発に要する工数を「ポイント」という単位で把握し、全体に対してどの程度の進捗にあるかを可視化する。そのために「バーンダウンチャート」を使用するが、これは手書きが良いという。共有のためのビジュアル化には、やはりアナログが向いているという結論なのだが、バーチャル世界では、これをどう担保するか、さらに深い問題だ。

    第二部は、はアジャイル開発を実践している企業(それもKDDIやANA等の大手企業)担当者へのインタビューが複数掲載され、各々は短い文章だが含蓄がある。

    最後は、エピステーメー、テクネー、フロネシス等の哲学概念まで登場し、やや煙にまかれる感もあるが、サイモンシネックのいうStart with Whyみたいなものかなと理解した。

    方法論の部に記載のあった「ペアプログラミング」という手法は面白い。15分くらいでコードを打ち込む担当と、それを横でレビューないし確認・アドバイスする担当を交代するのだそうだ。
    研修生と指導員というようなものではなく、あくまでも対等なペアである。この方法なら、相手が書いているコードを理解していないと続きが書けないから、集中してコード内容の確認もするし、他の人には読むことができない独善的なプログラムになることも避けられるだろう。
    加えて、ペア以上の複数人で行うプログラミングをモブプログラミングと呼び、さらにこれをプログラミング以外の仕事に適用する「モビング」なるものも流行りなのだとか。その場(リモートも含め)で会議をしながら調べものも行いつつ、成果物まで作ってしまおうというものだが、これは果たしてそこまで効果の上がるものなのだろうか?(エキスパートの方がいらしたら、指導を受けたいものだ)

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  • アジャイルの実践について知りたいのか、それともスクラムの源流となる野中郁次郎氏の元論文や考え方にふれるかによって、評価が分かれるのではないかと思う。

    前者について、本書はアジャイルについては概要のみで活用するレベルには至らないので、アジャイルを実践したい人は別の本(SCRUM BOOT CAMPなど)を読んだほうがよい。ただしアジャイルの事例がいくつかあるので読む価値はある。

    一方後者について、私は野中氏の知識創造企業にてSECIモデルに改めて触れたところなので、野中氏が改めてスクラムに言及していることに価値がある。特に30年前以上に①を提言していていたことに驚く。

    ①不安定な状態を保つ
    ②プロジェクトチームは自ら組織化する
    ③開発フェーズを重複させる
    ④マルチ学習
    ⑤柔らかなマネジメント
    ⑥学びを組織で共有する

  • 私が個人的に「アジャイル開発」という言葉を初めて聞いたのが2018年だった。
    当時「それって何ですか?」って聞き返した覚えがあるので、鮮明に記憶している。
    本書の初版が2013年。個人的にも5年以上遅れているということ。
    すでにアメリカ企業や、日本国内でも先進経営学者は、これらアジャイルの効果を理解し実行していたということだ。
    自分では色々と最新情報を追いかけているつもりであるが、何とも視野の狭いことだ。
    今となっては浸透した「アジャイル」という言葉であるが、実行するのは本当に難しい。
    理想は確かにこの通りだと思う。
    出来る部分から順次開発していき、良いものを途中でも取り入れて、変化に対応しながら少しずつ仕上げていく。
    すべての仕様を決めきって開発をスタートするなんて、今のこの時代に合う訳がない。
    しかし、これが本当に難しい。
    単純な方法論だけではない。
    高度なリーダーシップ論とも密接に関わってくる。
    なぜならこれらアジャイルの方法を取り入れれば、必ず上手くいくということがないからだ。
    進行を随時管理しながら、変化に対しその都度その都度組み込むのか?先送るのかをジャッジしていく必要がある。
    誰が?その現場をよく知るリーダー以外にない。多数決で決めるものでもない。
    「これでいい、進め。これじゃマズイ、撤退。」
    戦局に応じ、現場小隊を率いている隊長が都度判断していく。
    元々はアメリカ軍隊の戦術から発想されている点がアメリカ発らしい点でもある。
    しかしビジネスの現場と戦争の前線はよく似ている。
    戦争の歴史は、陸軍から始まっている。
    力技で大砲を打ちながら、人間対人間の白兵戦だ。
    こう書くと個人戦のように思うがそうではない。
    あっちの場所から1,000人。こっちの場所から1,000人で挟み打つ。というように、そもそも団体戦の発想だ。
    やがて戦場は海に広がり、海軍が出来る。
    これも海岸線を防衛ラインとして、上陸するための戦術へと変化していく。
    戦艦から大砲を打ちながら、あっちの艦は逆から回り込めなどの団体戦だ。
    それも飛行機の発明で、やがて戦場は空へ広がり、空軍が出来る。
    この陸海空軍の軍事戦術こそが、まさに「アジャイル」の発端だという。
    この辺がアメリカらしく、日本にはなかなか出来ない発想である。
    そして戦争戦略研究の第一人者である野中郁次郎氏が本書を共同執筆しているのも納得がいく。
    敵陣に上陸して占領するには、この陸海空軍の連携が不可欠である。
    そして相手の出方によって戦局が大きく異なるために、事前の作戦はあくまでも大雑把なものであり、個別具体的な戦術については現場判断に任せるという。
    そのために、現場チームを率いる小隊長には大きな権限が与えられ、リーダーシップを大いに発揮してもらうという。
    この辺が日本が根本的に弱いところだ。
    アメリカという国は、役職に関係なく、リーダーシップについて子供の頃から学んでいる。
    一方、日本は個人の力はそこそこあっても(特に熟練のゼロ戦パイロットの腕前は相当なものだった)、どうしてもチームになると弱い。
    特に大きな戦略を描かなければいけない時にも、陸軍・海軍・空軍はそれぞれの権力争いをし出す始末。
    本当の敵は誰なのかを見失ってしまう点は日本人の特有とも言えるかもしれない。
    実に戦争に負けた日本と、この停滞した30年は似ていると言えるだろう。
    世界はドンドンと先に進んでいる。
    どんなチーム編成でも、結果を出せる小隊。
    確かに今求められているのは、そういう中で最も機能できる人員なのかもしれない。
    つまり方法論ではない。
    「アジャイルに対応できる人」を招聘することが一番最初にすべきことなのである。
    (2021/7/15)

  • 初版を大きくグレードアップしての第二版。前半はスクラムとかアジャイルの基礎解説は変わらず。後半は導入したストーリーが中心。
    受注発注関係の中でどうスクラムをやるかが結構描かれていて、SIerが強い日本っぽいテーマだなと思った。どういう契約形態かなども触れてたのでリアルだったけど無理矢理Scrumって形にするくらいなら。。。と思う事例も多め
    暗黙知と形式知は自分にも思うところがあるので再考

  • 「アジャイル開発」や「スクラム」について、聞いたことはあるがよく知らない人向けの、教科書的な本です。
    ただし、「アジャイル」「スクラム」の大元となった論文の執筆者である野中侑次郎氏の文章が冒頭にあることからも想像できるように、現場向けというよりも、経営層向けのどちらかというと理論的な教科書内容です。
    現場で「アジャイル開発」や「スクラム」を導入するためには、本書よりも実践的な内容が必要になると思います。
    トップ層だったり、ユーザー側や異業種で「アジャイル」「スクラム」に興味がある方は、勉強になる本だと思います。

  • アジャイル、そしてスクラムについて論じた書籍が百花繚乱の様相を呈する中、本書が目を引くのは幾度となく現れる「フラクタル」の概念だ。

    そこには「小さなチームへ適用する」という枠組みを超えた、全体性への働きかけの意思を感じ取ることができる。スケーリングされたフレームワークについて肯定的文脈で紹介されていることからも、それは見て取れる。(clean agileとの対比で捉えると面白い)

    これを読んでおけば基本はおさえておける第1部、国内の事例が紹介された第2部。
    そして野中郁次郎先生の世界観をセンターに据えた第3部は、やや他の部とは異質な手触りながら、このパートこそが本書のコアだと感じた。
    アジャイル界隈の勉強会でSECIモデルについて言及されることはもはや珍しいことではないが、野中先生自らが論じ、かつスクラムのコアと強く結び付けられたというのは意義深いことだ。

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著者プロフィール

平鍋 健児:(株)永和システムマネジメント 代表取締役社長

「2023年 『世界標準MIT教科書 ストラング:教養の線形代数』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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