室町は今日もハードボイルド―日本中世のアナーキーな世界― [Kindle]

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  • 全16話にわたって、室町時代から戦国時代にかけての中世日本に起きた出来事をもとに、現代人にとっては理解しがたい、中世人の「常識」「道徳」「正義」といった価値観を伝える。装丁から受けるイメージ同様に、非常にカジュアルな語り口で、雑学本やテレビの歴史バラエティ番組の雰囲気を期待して読んで差し支えない。

    「人身売買のはなし」や「人質のはなし」などは、現代人との捉え方の大きな違いに驚かされながらも、当時の人びとにとっての合理性に納得させられる。同時に「直江兼続の「愛」の兜」や、「徳川家康の「厭離穢土欣求浄土」の旗印」の決して平和的な意味合いではなく、むしろ反対の意味だったとする解説なども、現代人の先入観について端的に気付かされる。「職業意識のはなし」のような、中世の庶民が一般的なイメージのようにお上から一方的に虐められていたわけではなく、旺盛な独立心と自尊心を持ち合わせていたらしいという認識は、最近読んだ『戦国の村を行く』と重なるところもあり、興味深かった。また、「お前のカアちゃんでべそ」の本当の意味や、BL落書きなど、性的で俗なエピソードも多く収録されている。

    一般にはあまり知られていない中世の事実と、そこから汲み取ることのできる当時の人びとの価値観を面白おかしく紐解きながら、同じ日本に暮らしていた祖先たちが私たちと大きく異なる認識のなかで生きていたことを、驚きとともに教えてくれる。雑談さながらに楽しく歴史に触れながらも、第12話やあとがきに明記されている、「異文化を学ぶことの効能のひとつは、自分たちが絶対的な正義や常識だと信じていることが、時や場所を変えれば必ずしもそうではないということを知る」、「みずからの価値観を相対化できる者は、それと異なる価値を奉ずる人びとにも寛容になれる」といった筆者の真意が十二分に伝わった。

  • 室町社会を分かりやすくエピソード中心に記述。
    一般向けらしく読みやすいが、中世の特徴をよく伝えている。

  • 一般的歴史観しか持たない自分には、「室町時代」=教科書の足利尊氏の肖像画(あれも今は別人説が有力らしいが)くらいしかイメージがなかったが、貴族政治と武家政治の時代の過渡期が長く続く室町時代は実はアナーキーな社会であったと、欧米中東もびっくりの荒々しく生々しい庶民の営みがあったんだねぇ・・・とふむふむ。
    室町時代の古文書や寺社の落書きなどから当時の人々の営みをあぶりだし、”島国・農耕民族の争いを好まずまじめな日本人”のステレオタイプを覆す肩の凝らない読み物。

  • 室町時代を「ハードボイルド」「アナーキー」な視点からとらえて描き出す、学術的な文章というよりはエッセイ集。エッセイ集ということなので、現代で言うとこう、といった導入部分も楽しいのだが、さすが決して学術的な部分で手抜きがなくて、しっかりとした考察に裏付けられて議論が展開されるので、単に現代の視点でとらえた室町時代、にはなっていない。室町時代を知ることで、現在の日本の姿が見えてくる、そんな考察になっていると思った。

  • 室町は、まだ考え方が現在と直接接続していないような環境だった。人の命は軽く、切腹をチラつかせて譲歩を迫る。死なれるのは面目が立たないから嫌だ。まだ法律も統一的なものはなく、それぞれの方が入り混じっていて、自分の所属する地域などの法を盾に動いていた。呪いをかけられると嫌がっていた時代だが、戦国時代になるとより合理的にはなっていたようだ。

  • 面白いんだけど。

    なんというかinterestingだけどfunではないというかなんというか抽象的にいうとそんな感想。
    内容については室町時代を中心とした中世の興味深い習俗を面白く解説してくれています。

  • 中世室町時代は、自分にとって全然ぴんとこない時代で興味もありませんでした。が、現代の考え方とこんなにも違うんだと思わされて、以前よりイメージできるようになりましたし、親しみも出てきましたよ~。面白かった。

  • あまりよくわからない室町時代
    日本が少しずつ統一していく過程で、何が起こっていたのかわかりやすく解説している

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著者プロフィール

清水克行(しみず・かつゆき)
明治大学商学部教授。専門は日本中世史。 主な著書に『喧嘩両成敗の誕生』(講談社、2006年)、『戦国大名と分国法』(岩波書店、2018年)、『室町社会史論』(同、2021年)などがある。

「2022年 『村と民衆の戦国時代史 藤木久志の歴史学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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