月まで三キロ(新潮文庫) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • 涙活第4弾☆(^^)
    伊予原新さん、『月まで三キロ』
    七つの短編集。
    夜寝る前に今日はどんなお話かなぁと楽しみに読んだ。

    伊予原さんのお話は一気に読むより、ゆっくり読んで、岩盤浴みたいにじわっと温まって、心がじんわり満たされていく感じ。優しさに包まれます。

    事業の失敗、離婚、介護に疲れ、自殺を考える男性。
    食事会で気になる人に出会ってしまったOLさん。
    塾に通えなくなり自分が何に悩んでいるのか分からない小学生の男の子。
    不完全燃焼の人生に葛藤する天ぷら屋の二代目。
    大切な人を2人続けて亡くした定食屋を営む父親と娘。
    家族の為に尽くしてきた人生を振り返る女性。

    それぞれのお話に出てくる主人公はどんな苦しみの中でどんな思いをしてきたのか、もし自分がこの登場人物に出会ったらどう声をかける事ができるんだろう…と思いながら読んだ。

    読んでいる途中、登場人物の何とも言えない優しさや励ましに触れて涙がでてきた。
    悩み葛藤する人達の心に寄り添い、月、雪、化石、火山、星など自然を通して彼らを励ます。
    そして心がじんわり温かくなる結末。

    たくさんの人に伊予原さんの優しさを感じてほしいなぁと思いました。

    すごく良いなぁと思った言葉を忘れないように…。

    「…ミカに言うといて。人生に後悔はつきものや。でもそれでええやないか。そのために、ブルースがある。優には優の、健には健の、ミカにはミカのブルースがある。お父ちゃんは、機嫌ようお父ちゃんのブルースやってますさかい-ってな」

    「…わかるための鍵は常に、わからないことの中にある。その鍵を見つけるためには、まず、何が分からないかを知らなければならない。つまり、わかるとわからないをきちんとわけるんだ。」

    「…このルーペをのぞけば、そこに本当の居場所が見える。これをもらった頃のわたしに戻れる。わたしがわたしでい続ける勇気をくれる。」

    あっ、あと『天王寺ハイエイタス』にでてくる"蓮根しょうが天ぷら"食べてみたい。

    この本は、aoi-soraちゃんが選んでくれました。
    心のエネルギーチャージ完了です。
    あおちゃん、ありがとう。
    そして、ちーちゃん、いっちゃん、テストが終わるの待っていてくれてありがとう。
    涙活参加できて嬉しかったです(^^)

    • 地球っこさん
      松子ちゃん、おはようございます♪

      レビュー、遅くなっちゃいました。ごめんなさい。

      岩盤浴みたい…、すごく分かります!
      優しさに包まれまし...
      松子ちゃん、おはようございます♪

      レビュー、遅くなっちゃいました。ごめんなさい。

      岩盤浴みたい…、すごく分かります!
      優しさに包まれました。

      なんというか、がんじがらめで狭かった視野が、ふと広がった感じ。肩の力がふと抜けるような。

      あ、あと「蓮根しょうが天ぷら」は、私も食べてみたいですーー!
      2023/02/09
    • 松子さん
      ぽぷさん、こんにちは(^^)
      コメントありがとうございます。
      ぽぷさんのレビュー読んで来ました♪
      辛い過去と対峙する方法が違い、それが個性な...
      ぽぷさん、こんにちは(^^)
      コメントありがとうございます。
      ぽぷさんのレビュー読んで来ました♪
      辛い過去と対峙する方法が違い、それが個性なんだと思う…とのぽぷさんの優しいレビューにほんわかしました(^^) 『この辛さと生きていく事で成長できるし、ひとりでは生きていけない』ぽぷさんのレビューにある言葉、どれもいいなぁ(^^)
      作品を思い出して、またじんわり感動しました。
      ありがとうございます。
      2023/02/09
    • 松子さん
      ちーちゃん、おつかれさまです(^^)
      世界観がまったく違う読書の旅、すごいですっ!
      そうそう、もう、天ぷら気になっちゃって(≧∀≦)
      ちーち...
      ちーちゃん、おつかれさまです(^^)
      世界観がまったく違う読書の旅、すごいですっ!
      そうそう、もう、天ぷら気になっちゃって(≧∀≦)
      ちーちゃんのレビューも、本当に本当に素敵だったよー♡♡♡ そちらにお返事しました♪
      2023/02/09
  • 「月まで三キロ」「星六花」「アンモナイトの探し方」「天王寺ハイエイタス」「エイリアンの食堂」「山を刻む」「特別掌編 新参者の富士」の7篇収録。

    どぎつい事件はなく、日常の心の機微、人生のターニングポイントを優しいタッチで描いてた作品たち。理系作家ならではのサイエンス蘊蓄を物語に上手く溶け込ませていて、素敵な作品に仕上がっている。自分好み。

    「月まで三キロ」
    人生に疲れ、自殺を志す男が乗り込んだタクシーが向かった先は…。月は地球の子供。独り立ちしようと毎年3.8センチずつ地球から離れていっているのかあ。

    「星六花」
    四十路前のハイミスが気象庁職員(気象オタク)にアプローチしたが…。雪予報がよく外れるのは、南岸低気圧のコース取りの見極めが難しいからなんだな。

    「アンモナイトの探し方」
    中学受験を控え心身に不調をきたした少年が、夏休みに田舎で化石発掘の手ほどきを受ける。アンモナイトはイカやタコの仲間なんだな。

    「天王寺ハイエイタス」
    元ブルース・ギタリストの哲おっちゃん、破天荒な人生に悔いなし。水月湖の「年縞」、「人類と気候の10万年史」で知って感動したことを思い出した。

    「エイリアンの食堂」
    つくばの場末の食堂に夜な夜な現れる女性研究者と娘(鈴花)の交流。ビッグバン直後に生まれた水素は消滅することなく生命の元として繰り返し使われている。宇宙は水素で繋がっているのだ!

    「山を刻む」
    家事に倦んだ老年主婦が一念発起、山と関わりたいというかつての夢を叶える決断をする。火山屋(火山学者)という生き方。ごく小規模な水蒸気爆発は火山の "ゲップ"!

    「特別掌編 新参者の富士」
    病弱な女性が友人に引きずられて富士登山。小御岳火山の山頂で富士山の成り立ちに思いを馳せる。

  • 短編集はあまり好んで読まないのですが、これは面白かった。
    ちょっと心が疲れた時に読みたいような、そんなほっこりする物語ばかりだった。

  • 初めて読む作家さんの短編集。
    全体的にしんみりしている。どうにもならないような仕方ないことばかりの中で、なんとか明日一日生きる意味を模索していくような。
    様々な専門の科学的要素が織り込まれているせいか、それが一つの明るい側面にも見えるが個々の登場人物の孤独感がどうにも拭えない読後だった。

  • 伊与原さん初読み。理系蘊蓄のさじ加減が絶妙というか、しつこくなくて、とても読み易い短編集。どれも心温まる話で、特に表題作はじんときた。「子育ては月に似ている」は言い得て妙。「エイリアンの食堂」の父娘と女性研究者の関係性もよかった。ご自身の経歴や専門が存分に生かされていると思った。

  • トライホークスという季刊誌に国立天文台の梅本さんという方の「星」にまつわるオススメ本を載せてくださっていて、この本はその2冊のうちの1冊です。

  • 正直あまり期待しないで読んだのだが、非常に心にグッとくる短編があり大満足。また時間をあけて読みたい。

  • 「8月の銀の雪」が良かったのでこちらも読んでみる。人間の時間は有限だから何かやろ>うとしても手遅れということもある。そのギリギリで気づくことができればまだ幸い。気
    づいて行動したとしても、相手に伝わるかは別問題。そのギリギリのこっち側とあっち側を描いた切ない作品集。

    ダントツで「エイリアンの食堂」がいい!宇宙創生138億年の歴史と日常がつながるこのスケールと暖かさ。視野を広げるとか、別次元の視点を持つって幸せにつながるんですね。

  • 「月まで三キロ」
    事業に失敗し、認知症となった父親の介護に疲弊した男。
    最期のために青木ヶ原樹海へ向かおうと乗ったタクシー。運転手は、そんな男の意図を見透かしながら、人気のないところへ車を走らせ、過去を語る。
    元高校教師だった彼の息子はいじめを受け、自ら命を絶っていた。
    互いの家族を思い、二人は月を見上げる。

    「星六花」
    気象庁に勤め、雪の結晶を追う男・奥平と出会ったアラフォー独身の千里。
    彼に思いを募らせ、美しい結晶を作る、雪が東京に降る日を心待ちにする。そして彼の心の葛藤を知る。

    「アンモナイトの探し方」
    受験のストレスで円形脱毛症を患った少年・朋樹が北海道に行き、アンモナイトの化石探しに没頭する老人・戸川に出会う。戸川は立派な化石を所蔵する地元の博物館の元館長で、地元のダム建設に反対し職を追われた人物だった。無骨に石をたたき続け、「わかる」ことと「わからない」ことを区別することを愚直に続ける彼のやり方を、朋樹は少しずつ真似ていく。
    『ここに来てわかったことは、ただ一つ。このまま化石になってたまるかってことだ。』

    「天王寺ハイエイタス」
    大阪の冴えない蒲鉾屋の跡継ぎ・健は金の無心をひたすら行う哲おじさんと京大で博士を取った優秀な兄・優との不思議な会合の情報が入る。かつては名ギタリストだった哲おじさんは、過去の思い出を年に一度、海にがさっと捨てる思い切った人間だった。優が語る、哲がギターを失ったきっかけと海に沈めたサイダーの瓶の関係が明らかになる。

    「エイリアンの食堂」
    つくばの外れにあるとある食堂。営むのは妻を失った謙介、一人娘の鈴花を育てる。オカルトにはまる鈴花は毎日夜8:45に来て決まったメニューを頼む女性客が”宇宙人ではないか”と気になる。彼女は宇宙物理の任期付き研究者だった。

    「山を刻む」
    専業主婦として生きてきた女性は日光白根山での登山の道すがら、”火山の医者”たる火山学者と、その弟子である大学院生に出会う。「本当に好きなこと」をやり続ける学者と、悪態をつきながら彼に付き添う学生の姿に、そしてかつて山岳写真家を目指した心と、家族のために自分を押し殺してきた日々を思い起こす。

    空や海や土を眺めて、自分の心の居場所を探す人たちの物語が詰まった短編集。
    思春期の悩みを吹っ飛ばす「アンモナイトの探し方」が話としては好きでした。「月まで三キロ」と「エイリアンの食堂」はどちらも天体望遠鏡を買って夜空を見たくなる話。
    全部オチがいい話すぎて、読後感がとても良いです

  • 理知的でやさしい小説。

    どの話も天体・地学などの理系の要素が入ってきてその点だけでも楽しい。でもそれだけではなくて、天体・地学に絡めたり、絡めなかったりして、人の心をふっと軽くする、そんなやさしいお話たち。

    どのお話でも登場人物たちは何か悩みを抱えてる。それは行き場のなさだったり、喪失感だったり、違和感だったりする。そんな中で会うのは、すこし変わった天文学や物理学や地学を愛する人たち。変わらずこの世にある理にほっとしたり、導かれたりして、ちょっと心を軽くして、前に進んでいくお話。
    どのお話もやさしくて良いお話でした。金曜の夜から読み始めたい一作。

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著者プロフィール

1972年、大阪府生まれ。神戸大学理学部卒業後、東京大学大学院理学系研究科で地球惑星科学を専攻し、博士課程修了。2010年、『お台場アイランドベイビー』で第30回横溝正史ミステリ大賞を受賞し、デビュー。19年、『月まで三キロ』で第38回新田次郎文学賞を受賞。20年刊の『八月の銀の雪』が第164回直木三十五賞候補、第34回山本周五郎賞候補となり、2021年本屋大賞で6位に入賞する。近著に『オオルリ流星群』がある。

「2023年 『東大に名探偵はいない』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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