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感想・レビュー・書評
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横溝正史の代表作を、戸籍の研究者が子細に検討するという、オタク心にあふれた本。おどろおどろしい血の因縁が印象的な物語だが、推理の鍵を握るのは犬神家の複雑な家族構成と遺産相続であるため、戦前戦後の戸籍制度の変化はとても重要なのだ。果たして連続殺人事件が起きた年は1947年なのか49年なのか、登場人物の年齢は数えなのか満年齢なのか、当主がたくさん作った子どもたちは戸籍にどう記載されていたのか――重箱の隅を突くようでありながら、知ってるようで知らなかったイエ制度の複雑怪奇さにおののく、真面目で面白い本である。
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日本推理小説史上の大傑作、横溝正史『犬神家の一族』を、戸籍を切り口に「血」と「家」という主題で読み解いた一書。これでもかと微に入り細を穿って『犬神家』を料理していく筆致は分かりやすくとても興味深い。近代日本の戸籍制度の歴史が良く分かるとともに、文学テクストはほんとに色んな読み方を許してくれるものだな、と嬉しくなる。「あとがき」の最後まで読んで「うわっ! この人(著者)地下アイドルオタクやん!」と分かったところでめっちゃ親近感(^▽^〃)めためた面白かった。
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「犬神家の一族」の複雑な家系図を読み解きながら、明治から戦後までの日本の戸籍制度について語る一冊。
戦前は住民登録というものはなくて、戸籍が行政のもつ唯一の国民リストだった。転居すると戸籍の「寄留」という手続きをすることになっていた。しかも1970年代まで戸籍は公開情報だった。
など、知らないことばかりの旧民法の戸籍と家族システム。必ず「家長」が居て嫡出男子がそれを継ぐのが原則。婿養子を取るときは文字通り戸籍上でも結婚と同時に養子にして家長相続できるようにした。
その旧戸籍システムも明治初期に出来たもので、江戸時代にはなかった。あれを「日本の伝統的家族像」とかいうのはおかしい。
結婚して子供をつくる(つくらない)ことの意味は時代とともに変化していったことがよくわかる。夫婦別姓、同性婚、一生単身、子供なし老夫婦とか、増えるのは文明の進化の必然だとおもうので制度もかえるべきでしょう。
あらためて「犬神家の一族」読んでみるか