同志少女よ、敵を撃て [Kindle]

著者 :
  • 早川書房
4.24
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本棚登録 : 3116
感想 : 406
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感想・レビュー・書評

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  •  本書はこれまで読んだ小説の中でも相当お気に入りの1冊になりました。

     私がこの辞書のように分厚い本を読み切ろうと決意したのは、冒頭心優しい少女セラフィマが「戦いたいか、死にたいか」とイリーナに問われ「ドイツ兵も殺してお前を殺す」と戦いを宣言するシーンがあったからです。ただの活字なのに「お前を殺す」という心からの叫びが聞こえました。彼女の復讐が遂げられるかを見守りたいと思いました。

     本書は戦争が題材になっているので、ショッキングな場面も多いですし、どうしてあの子がとおもうような人物が死んでしまうこともありなかなか読むのが辛い場面もありました。

     しかし、そんなシリアスなシーンもありながらクールで完璧な狙撃手が見せる意外な弱点や、セラフィマの母の遺体を焼いた冷酷非道と思っていたイリーナが冗談をいうシーン。戦地でときより訪れるつかの間の日常会話など大笑いはできないけどクスッとできる描写もあり、アップダウンを繰り返して読み切れました。

     本書は1~10まで最高でしたが、中でもお気に入りはセラフィマの本当の敵の正体がわかるシーンです。本書のタイトル『同志少女よ敵を撃て』この台詞とともに放たれる弾丸が向かう先にいる真の敵が誰なのかそれをぜひ皆さんにも味わってもらいたいです。

  • 戦争がなければ戦わなかった敵。でも戦争がなければ出会わなかった友もいる。
    目をそむけたくなるような描写が多く、一気読みとまではいかなかったが、とても素晴らしい物語だった。

    世界史を勉強しておけば、もっと面白かったのかなと思う。

    「戦争から学んだのは、敵を撃つ技術でも究極の真理でも、拷問の耐え方でも、敵との駆け引きでもない。命の意味だった」この言葉が印象的だった。

  • 492ページの紙の本で読みました。
    もっと早く読みたかったのですが、表紙の少女の目が辛すぎて手に取れませんでした。
    でも、やっぱり……
    読んでよかったあああ

    戦争
    この地球上からなくなっていなければならないのに
    たくさんの残酷な歴史を経てきたのに
    人類はどうしてこうも愚かなのでしょうか?

    女性狙撃兵セラフィマと仲間、そして教官の果てしない戦闘。
    辛すぎるシーンに時折本を閉じ、深呼吸をしました。

    ラスト「戦争は女の顔をしていない」に収束するところ、圧巻でした。

    作者のデビュー作とは!
    驚愕です。
    アガサ・クリスティー賞、本屋大賞受賞おめでとうございます。
    次作も楽しみです

    ≪ 真の敵 研ぎ澄まされて 銃口を ≫

  • 同志少女よ、『敵』撃て
    題名の『敵』について視点を考察しながら拝読した。
     戦争中にアイデンティティーを保つ為には『敵』の存在が必要である。
     その『敵』の対象は個人の復讐、国家体制、戦争犯罪である。それには葛藤を抱えながらアイデンティティーを保たなくてはならない。
     狙撃小隊でママと呼ばれる事になったヤーナのシーンでは、戦争で失った家族愛を互いに慰め合い、またそれにより生と死が隣りあわせである小隊の絆もより深まった。

     戦争とは言えゲームの様に殺戮スコアを喜び怪物化していく主人公セラフィマを看護官ターニャが殴る。
     ターニャの固い信念がセラフィマを黙らせる。
    セラフィマの大義は女性を守ることである事を思い出させ、『敵』を履き違えるなと言わないばかりに。
     カチューシャの唄を歌いながら、ドイツ人女性を暴行している同志を撃つシーンは涙が止まらなかった。
    (同志の存在はネタバレになるので伏せます。)

    セラフィマが戦後に生きる希望を見出した時に、
    『私の戦争も終わる』
    教官イリーナの言葉が反芻している。

    機会があれば、【戦争は女の顔をしていない】を拝読し当事者の葛藤を考察したい。   

  • 面白かった、けどもっと当時のソビエトのリアルな空気感みたいなのを期待していた。主人公が西欧米的お利口さん思想で、現代人受けを狙ってるなぁという印象。いや現代(日本)人の読み物なんだからそれはそれでいいんだけど....ポリコレに配慮した結果なのかなぁと思っている。

    スナイパーを題材にした本を読んだことがなかったのて興味深かった&ベタかもしれないけど要素盛々のドラマが良かった!ので星よっつにしました。

  • 史実を元にした時代小説、それも緻密に作り込まれたエンタメである。

    「伏線」のジグソーパズルのピースを主人公が戦場に立つ前に配置し、終盤に説明しすぎなくらい丁寧に噛み砕きながらすべてを回収した。
    ミステリー小説でお馴染みのこのパターン。連続事件が起きる間は情報が膨らみ続け、最後の事件から名探偵が散らばった事件を整理し「真実はこうだった」というゴールに向かって収束させていくアレだ。
    本作でもパズルのピースをひとつ残らずピタリとはめて狙撃手たちの物語を一枚の絵にして完結してみせた。

    無駄を省こうとする美意識からだろうけど、伏線と関係ない情報がなさ過ぎて回収までの先読みができてしまったが、本作が逢坂冬馬さんの「処女作」であることにただただ驚く。

    教官のイリーナが”ロシア女性がこの戦争を語るようになった時、私の戦争が終わる”と語るが、まんまアレクシエーヴィチ「戦争は女の顔をしていない」じゃない!と思ったが、しっかりエピローグで同書にバトンを渡してた(同書で紹介されている女狙撃兵が着想の発端かもしれないね)。本書を読みながら僕はもう一冊、「独ソ戦」の巻末の年表も照らし合わせながら読んだ。この3冊を並べた人は多いと思う。
    https://booklog.jp/users/kuwataka/archives/1/4004317851

    戦場ではあらゆるコンテキストが削ぎ落とされ(どうでもよくなり)「戦うか、死ぬか」の二者択一が突きつけられる。どちらも地獄。人としての尊厳や国民意識といったハイコンテキストは、研ぎ澄まされた生存欲求の前にかき消されてしまう。生きるために重ねられた罪、自身への虐待。そして束の間に戦争以前の価値観が戦争以後の自分を揺さぶる。その揺らぎが”やや直線的”というか、個々人の価値観が揺らがなさ過ぎる(一貫性にこだわりすぎ?)と思った。そこが本書をエンタメ小説にしている。男性が描きがちな”理想の女性像”というか、隙がなさすぎて表紙のように”キャラの枠”がくっきり濃い。それは”生身の女性”とは異なるが、逢坂さんの次作はSFだそうで、ガンダムや銀河英雄伝説の類のSFジャンルの人物像だとこのくらいで十分な厚みとも言える。次回作も読んでみたくなった。

  • 2021.12本屋に市の図書館返却BOXがあり、図書館までの道中が面倒なため、よく利用していて、見つけた本。
    悲しいのは読中にウクライナ戦争が勃発。

    2022.6残り半分、早く読破して、終戦を迎えられるよう願掛けします。

    何とか、お盆までに読破完了。
    デビュー作としてはなかなかの完成度であるが、途中はテンポが悪い気がしたので
    ちょっと苦痛になったが、残り1/4から時間の進みが早く展開も早く良かった。
    登場人物を減らしたほうが良かったかもと思った。

    いずれにしろ、「戦争は女の顔をしていない」の小説版で、色々調べてよくでき
    ている。
    昔は戦争によって富を得たこともあったかもしれないが、グローバル社会となり
    戦争は失うことばかりで、誰も得をしない世界である。
    国境線の無い、小さい地球なのだから。
    日本は黒塗り文書再燃で、やっぱり残念過ぎる。

    そんなことを感じた2022年7月である。

  • 戦争でたくさんの人生が捻じ曲げられてしまう。
    そして戦後は何も残らない。
    米原万里さんのオリガ・モリゾウナの反語法を併せて読むと当時の異常で過酷な情勢がより感じられるかも。
    今のロシア情勢はこの、前時代に戻ってしまってるのかもしれない。
    せめて国民の意識は現代のままであって欲しい。

  • ロシアがウクライナに侵攻している今(2022年4月)こそ読むべき作品。
    僕たちは戦争を知らない。
    兵士は侵略地で殺す、奪う、破壊する、犯す、人間として許されない限りを尽くす。あり得ない。でもそれが前線の兵士のスタンダード。
    僕たちはそれを知らない。
    ウクライナの人たちはそれを知っている。だから銃を手に取って戦う。愛する家族がそういう被害を受けることを知っているから。

    作品自体について言えば、新人とは思えない圧倒的な筆致。アガサ・クリスティー賞で史上初の満点、本屋大賞受賞も納得の作品。

  • 第2次世界大戦での、ロシアを舞台にしたロシアとドイツの戦いを題材にした戦争小説です。
    戦争は、男の顔をしていると言いますが、主人公は女性達だけで作られた狙撃手の中隊のセラフィマという名の少女です。ロシアには、リュドミラ・パヴリチェンコという有名な名狙撃手が実在したので、モデルにされたのかもしれません。
    セラフィマは、ロシアの片田舎に生まれ育ちました。
    母親が猟師だったので、10歳から、射撃を習いました。
    母親をロシアの狙撃兵イェーガーに自分の目の前で殺され、村人もセラフィマ以外1人残さず殺されて焼き尽くされ、ドイツ兵に強姦される寸前にロシアの赤軍に助けらた。その後ロシアの狙撃手の、訓練所に入り、ドイツ兵とりわけ母親の仇イェーガーを自分の手で殺す事を目標にロシア各地を赤軍に随行、転戦する物語です。
    ストーリーの展開は無理がなくて面白いが、セフィマにとって都合の良いように話が展開していきます。人が死ぬ話は元来好きではないのですが、戦争では女性もものとして扱われ、ドイツ兵もロシア兵も女性を強姦し、捕虜も殺して焼き尽くし、至る所で戦争犯罪が行われる。敵味方、生死、命とは何かについて深く考えさせられました。

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著者プロフィール

逢坂冬馬(あいさか・とうま)
1985年生まれ。35歳。埼玉県在住。『同志少女よ、敵を撃て』にて第11回アガサ・クリスティー賞大賞受賞。

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