残月記 [Kindle]

著者 :
  • 双葉社
3.11
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  • (10)
本棚登録 : 291
感想 : 40
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感想・レビュー・書評

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  • 表題のストーリーは。
    月の砂で作られた重くてごつごつした冷たい扉を『ぎぃ.…』っと開くような気持ちで、ページをめくっていきました。
    話が重たくて濃くてなかなかページが進まなかった。
    どなたかがレビューで書いてたけど、こういうジャンルはSFファンタジーって言うのね。

    月がテーマの3部作。
    私が知ってる美しくて清らかな光を放つ月はどのお話にも出てこない。
    忌まわしく禍々しい光を放つ月のはなし。

    どの話も読んでる先からこの話はもう夢の話なのかなんなのか、惑わされる。
    禍々しい話ながら、言葉選びは独特でとても美しく、素敵なフレーズにたくさん出会えた。

    ファンタジーは興味薄いんだけど、なかなか引き込まれる本だった。
    装丁も好き。

  • 本屋大賞やTwitter文学賞にノミネートされた中短編集。収録された3作は、いずれも「月」をテーマにしている。最新作『禍』が非常に面白かったので読んでみました。
    豊富な語彙を用い、ページを埋め尽くすように語られる物語はどれも幻想的で惹きつけられます。「月」という共通点以外は話につながりはなく、ジャンルも微妙に異なっているので好きな作品が見つかるかと。
    個人的なお気に入り作品は「そして月がふりかえる」。月が裏返ることでよく似ているが全く別の世界に迷い込んでしまったある男の物語。いままで当たり前に過ごしていた人生が突然手から離れ、異なる人生を歩まざるを得なくなったとき人は何を思うのか。「幸福」というものがどれだけ身近にあり、人それぞれがどのようにそれを享受しているのか、男の慟哭からはそんなことをひしひしと感じさせる。ただし、終わり方は「俺たちの戦いはこれからだ!」的な雰囲気を出しており、かなり好みが分かれそう。私はずっこけました笑。
    「月景石」はファンタジックな世界観が強く、作者の作品群においては珍しい部類の作品。日常から非日常への接続と、そこから戻れなくなってゆく過程はじわじわとした恐怖感があります。
    表題作「残月記」は近未来の日本を舞台にしたディストピア小説であり、アクション要素あり、恋愛要素もあり、政治闘争ありとなかなか盛りだくさんな中編。タイトルからわかるとおり『山月記』が元ネタのひとつであり、人とは違う才能(=病気)を持つものたちが差別的な待遇を受ける状況を描いている。「SF」というよりも「純愛小説」という側面が強く、ラストは胸を打たれた。ただし、200ページもかけている割には展開が少なく、大体予想通りに話が進むので途中で少々だれました。一人の人間の生涯を書き切るにはこのボリュームが必要だったのかもしれませんが……。とはいえ内容的にコロナ禍の2020年代を象徴するようなお話でもあるので一読の価値ありです。

  • 「残月記」(小田雅久仁)を読んだ。
小田雅久仁さんの作品を読むのは初めてだな。
以下の三遍が収録されていますが、
「そして月がふりかえる」
「月景石」
「残月記」
表題作でもある「残月記」が秀逸でした。
これほどまでに『月に憑かれた』作品ばかり読んでいると、濡れ濡れとした満月に見つめられているような気がして思わず夜空を見上げてしまう。(笑)
あー面白かった。

  • 月にたいしてこれ程までに斬新で不可思議なストーリーってあっただろうか。そういう意味では月に対する新しい発想を読者に提供したと言える。SF小説や怪奇小説のようでもあるが、作者はインタビューで“ファンタジー”とおっしゃっていた。女性の私にはグロいところもあったのでファンタジーとは思えないが、月の捉え方がユニークである点で充分読む価値がある作品と思う。
    残念なのは3つの短編になっていて、一番最後に『残月記』があること。一番最初に持ってきてほしかった。一篇めの『そして月がふりかえる』は救いようのない異世界に放り込まれた主人公が悲しすぎるので。

    2022年本屋さん大賞第7位

  • 2022年本屋大賞にノミネートされた全10作の中で1番興味を持ったのがこの作品。これは読者を選ぶだろうと思う。

    特に表題作は途中までは洋書のファンタジーを読んでいる気になった。YAディストピア小説によくあるような設定だと思った。しかし、読み進めてみると、全然違う。このダークさは好み。1番分かりやすいのは最初の話だけど、これも万人受けはしないだろう。

    死後の世界まで救いがないって言うのは、だったら早く死ねば良かったんじゃ??と思ってしまう。そこだけが最後まで引っかかってしまった。

  • 私には合わなかった。
    ファンタジーと知らずに触れたので、
    内容に驚いた。

    一つ目の話がかなり印象的でした。

  • 当初、こういう書き方は読み慣れてなく★3やったけど、
    慣れてきたので、★3.5。四捨五入で★4です。
    内容は、「あ~ そういう設定ね。」という感じかな。

  • 図書館にて。
    「本には雄と雌があります」が大好きでずっと新刊を待っていた。
    月にまつわる3作品。
    連作なのかと思って読んだら全く別々の作品だった。

    読み終わって、私は一体何を読んだのだろうという感想。
    現実の世界に紛れている非現実というような小説は多々あるけれど、そんな生易しいものではなかった気がする。
    1作目「そして月がふりかえる」の不条理な取り返しのつかないラストのぞっとする感覚。
    2作目「月景石」の世界が反転し融合する感覚。
    他の本では味わえない世界へ連れていかれて戻ってこれない不安を感じた。

    3作目、表題作「残月記」はまた全く別の感覚。
    全編から怒りを感じた。
    未知の感染症、腐敗した政治、それこそ今を見ているようだ。
    今の世界への怒りを置き換えて描いたものなのか。
    その世界で生きた人々の緻密な描写は本当にあった出来事を記しているようだった。

    ラスト、最後に行き着くのは過去に愛した女性の面影というのだけ不思議な気がした。
    女性からしてみれば訳のわからない不治の病になって捕まり、娼婦にさせられて相手をさせられた客の一人というところから始まった相手、好きになってくれて大切にしてくれるのはありがたいけれど果たして冬芽と同じ思いだったのか。
    こんな世界であっても女性は賞品として物のように扱われていて人としての地位は最低、ラストが美しく描かれている分ファンタジーさが際立ったし、現実的であって非現実、それまでの世界の残酷さまで浮き上がってくるようだった。

  • ファンタジーと思わず読み始めた。「そして月がふりかえる」はラストが怖い。
    「月景石」もなるほど、これもまた怖い系なのかと途中まで読んだが、ラストはラピュタ?みたいな感じ(^_^;)
    最後の「残月記」が一番長く、未来の設定なのになんだかね。男性なら違和感を感じないのかなぁ。
    満月の夜は何かが起こる、というのはいいんだけど
    剣闘士と勲婦ねー。イマイチ

  • 読み始めてから時間がかかりました。
    表題の『残月記』は最後でしたが、こちらが一番進まないのでした。難しいとも違う、心が重い…・のかな。
    自分がきっともう一度読みたいとは思わないのでこの評価です。

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著者プロフィール

1974年生まれ、宮城県出身。小説家、ファンタジー作家。関西大学法学部政治学科卒業。2009年『増大派に告ぐ』で、第21回日本ファンタジーノベル大賞を受賞し、作家デビューした。2013年『本にだって雄と雌があります』で、第3回「Twitter文学賞国内部門」の第1位を獲得した。

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