目の見えない白鳥さんとアートを見にいく (集英社インターナショナル) [Kindle]
- 集英社 (2021年9月3日発売)
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感想・レビュー・書評
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音訳ボランティアをやってたので、白鳥さんのような人が珍しくないのは既に知っていた。視覚障がい者の方の中に難無く移動されているのを目にした時は、驚き尊敬した。箏曲家・澤村さんは無類の鉄道マニアで、日本各地の沿線をひとりで旅されている。
しかし、「見えない」人が「見る」ってどういうことなのか? そういえば、盲学校の先生が点字のような凹凸をつけた絵で鑑賞すると話していたっけ? そんなことを思い出しながら本を開いたが、まったく違っていた。
実際に美術館で絵画を前にして見る行為をしていた。一人ではなく複数の人らと鑑賞するのだ。全盲の白鳥建二さんは、著者・川内有緒さん、彼女の20年来の友人・マイティ(佐藤麻衣子)さんらと美術館を訪れる。絵の前でそれぞれが感想を「見えない」白鳥さんの前で、「感じたことを話す」ことから始まる。
3人に共通する「推し」ジャンルは「現代美術」。敬遠してきた現代美術を知る機会にもなった。印象に残ったのは版画家・風間サチコさんの”ディスリンピック2680”。https://artscape.jp/report/curator/10169949_1634.html 『人が競争原理によってランク付けされ、勝ち組と負け組が選別される過酷なオリンピック。役に立たない負け組は柵で囲われ生き埋めにされる。逆に「役に立つ」と選ばれた人々はのっぺらぼうでマスゲームに参加する』。羽がもがれた勝利の女神・ニケは右側に描かれている。大きな絵は右と左に分かれていて、はっきり分断されていた。生き埋め寸前の人の顔には、字のような物が書いてある。「え、顔に字が書いてあるの?」と白鳥さんが訊くと、「うん、丙、丁とか。きっと甲乙丙丁のそれだね」。白鳥さんはふうんと頷く。こんなふうに、たっぷりと時間をかけて鑑賞するのだ。マイティと有緒さんが思いつくまま感想を述べるのを聴きながら、白鳥さんは頭の中に描いていくのだろう。
続いて”ダイナマイトは創造の父”という9枚の連作。恥ずかしいことに、黒三ダム建設で大勢の朝鮮人労働者が関わっていたいたと、初めて知った。吉村昭さんの『高熱隧道』を読むことにした。
地元の美術館でも同じような鑑賞会を開いてもらえたらと切に願うところだ。
本を読み終えレビューを書く段になり、とらえ方が間違っていないかと不安になる時がある。でも、正しい感想なんてもともとないのだ。色んな人の感想を読み、違う視点に気付かされ、異なる味を見つけられたらめっけ物でいいのだろう。 -
全盲の白鳥さんとアートを見に行く、美術館へ行く。アートや仏像を前にして会話をしていると、作者も、今まで見えていなかったことが見えてくる。
情報って何、目にするもの、音としてきくもの、匂いで感じるもの、触って感じるもの、そして人ととの会話で感じるもの。
美術館へ行って、観るだけではなく、五感で感じる。
この夏、近くの久保惣でも行ってゆっくりと時には目をつぶって観てみようと思っています。
そしてこの本で、改めて感じた言葉に「記憶」があります。記憶って「昔」の記憶と言いますが、所詮「今」の時点での「記憶」に過ぎなくて、なんとなく時間というフィルターを通して、その時より淡くなっているのか濃くなっているののか、いずれにしてもかわっているような気がします。
「記憶」で良い短歌ができました・・・えへっ。 -
オーディブルで
読むきっかけは、ラジオで著者のインタビューを聞いたこと。対話型鑑賞に興味を惹かれたこともあった。
興味深いポイントがたくさんあった。
1つは、美術、特に現代アートとのどう付き合うのが楽しいのか、1つの視座が得られたと思う。
もう1つは、全盲特に生まれた時から見えない人にとって世界がどう認識されているのか、もちろん話を聞いての想像でしかないが、視覚の部分が最初から無い世界は、当たり前だがまた一味も二味も違う世界ですごく興味深い。
また、障害を持つ人に対する私達の態度、出生前診断の話し等は考えさせられるテーマだった。
語り口は平易だけれど、すごくいろいろなタネを
包括している本。
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対話型鑑賞について知りたくて
この本を読みましたが
鑑賞だけではなくて
同じく
美術を愛する人たちが
つながる物語でした。
慣れてくると
川内さんの
話し言葉のような
書き言葉がいいなあと思いました。
川内さんの人柄が伝わり
熱まで感じる書き言葉だと思いました。
作品の背後にあるものを感じて
自由に語り,調べ,考え,
何かを得て,世界が広がる過程が
作品を見る醍醐味の一つなのだなと思いました。 -
オーディオブックで
目が見えない人のこと
わかっていませんでした。
今でも、同じようにはわかることはとうていできないけれど、ずいぶんと、そうなんだ!がありました。
目だけに頼りすぎている。
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ギリギリアウトを狙うって、今の日本に大切なことだね。アイマスクしただけで盲人の気持ちをわかったようになっていた自分が恥ずかしい。わかることはできなくても少しでも寄り添うことができるようになりたいなぁ~
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すごくよかった!!
図書館で借りたけど、家に置いておいて後で読み返したいし、他の人にも勧めたい!
読みやすくて柔らかい文章ですっと入ってくる。
優生思想の話が特に印象に残った。
普段から障がいに関わっていて、そうでない人よりも色々わかっているとしても、自分がもし将来子どもができて障がいを持っていたら、
悲しまずにいられるだろうか?たぶん将来のことで不安になって悲観的になるだろな。これは優生思想なのかな?
あとははじまりの美術館にも行ってみたくなった!参考文献のスウィングの本も読んでみたい。
価値観変わりそう。
この本を読むと本当に美術館に行きたくなる!!
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最初は白鳥さんといるときの作者のテンションや口調について行けなかったが、その口調やテンションだった理由が途中からなんとなくわかった気がする。
そして最後の方は壮大な伏線回収なのだと感じた。
P.169折本立身氏「アート・ママ+息子」
母と息子というより父と子供に見えてなんか泣きそうになった。
美術館という場所、
作品とは別に、自分は建物に対しての興味がとても強いのだと、この本を通して発見があった。
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話しながら美術作品を鑑賞する、というのは大学で学んだことだったが、それを目の見えない人とやるというのが目から鱗。高橋源一郎さんの紹介ですごく面白そうだと思って読んだ。
私には視覚障害者の母がいる。母と美術館に行った記憶はあまりない。そんな母と美術鑑賞できるだろうかと思いながら読み進めた。
けれど、視覚障害者という括りで考えるべきではない、白鳥さんは視覚障害者の代表とかではない。美術鑑賞が好きかどうか、どこまで解説を聞きたいかなど、そんなのは人それぞれなんだと、この本を読んでわかった。
母だけでなく、むしろ子どもたちと対話型の鑑賞をしても面白そうだな。これはこれで、一つのやり方として。
あまり現代美術には詳しくないけど、越後妻有は行ったことがあり、知ってる作品が出てくるとうれしい。ほか、いろいろな作品を知れて興味深かった。
この作品私も読んでいます(*^^*)
しずくさんは音訳ボランティアの経験がおありなんですね!
素晴らしいです...
この作品私も読んでいます(*^^*)
しずくさんは音訳ボランティアの経験がおありなんですね!
素晴らしいです!
そんなしずくさんがあげたレビューだから
このレビューとってもいいって共感してます。
私のレビューが、恥ずかしくなるくらい…
でも、どんなレビューでも間違いはないって、
いろんな意見があっていいと、私も思います。
今回は、乙女の本棚をきっかけに
フォローやいいねをありがとうございます。
乙女の本棚は、難しそうと思って読むのをやめちゃいそうな
名だたる文豪の作品が読めます。
しかもその作品にぴったりなイラストで楽しめます。
ぜひ手にしてみてくださいね!
こちらからもフォローさせていただきますので、
これからどうぞよろしくお願いします。
音訳ボランティアは数年続けましたが、考えるところあってやめました。パソコンやスマホが普及する今を考えれ...
音訳ボランティアは数年続けましたが、考えるところあってやめました。パソコンやスマホが普及する今を考えれば、いつかは消滅するものだったのでしょうね。それは時代がニーズに追いついたと歓迎する一方、まだ不完全さも感じますが・・・。
”乙女の本棚”ってブクログをやってない限り知らなかったかも?!
本当に、難しそうと思って読むのをやめちゃいそうな名だたる文豪の作品を読めちゃいそう。
大人向けの絵本のようなイメージで待っています。
こちらこそよろしくお願いします(ぺこり)