NOISE 上 組織はなぜ判断を誤るのか? [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • ノイズ。バイアスではなく、ノイズ。客観的に、正確に、厳格に行われると信じて疑わない判断にさえノイズは含まれる。本書ではこの絶望的な事実を突きつけられる。
    気分がいいとき、沈んだとき。相手の好ましい情報、好ましくない情報。ちょっとしたことが判断に影響を与える。それは常に一方向のものではなく乱雑に動くものだからタチが悪い。
    上巻ではそんな「ノイズ」についてたっぷり語られるため「じゃあどうしろっていうんだよぉ」といささか絶望的な気分にもなるが、自分にせよ他者にせよノイズ混じりの判断をしているものだ、ということを認知すること自体に意味がある。

  • 朝行ったときと夕方行ったときで、医師に処方される薬が変わる。夕方の方が、ちょっと強い抗生物質とか薬になる傾向があるとか、その日の気温やひいきの野球チームの勝敗によって、裁判の判決における量刑がかわるとかね。人間の判断に間違いはつきものとわかっているつもりでも、現実的にデータからそういう実例を出されるとちょっと引くなぁ。

     偏見とかものの見方とか、ある一定の方向に判断をゆがめる重みづけをバイアスというような。それに対して、一貫したゆがめ方をするわけじゃないんだけど、さまざまに働きかけて判断をゆがめる重みをノイズという。バイアスは理解しても、ノイズはなかなか難しいそうな。

     統計的な説明とか、やや難しかったけど、それを差し引いても刺激的な示唆のある本だった。今、(下)を読んでいるのだけど、そちらではバイアスやノイズについて、どうやってその影響を弱めるのかについて論じ始められている。それがあってこそだよなぁ。人間は必ず間違った判断をする、で終わっちゃうのはあんまりだもの。

     前作、ファスト アンド スローではバイアスについて、あるいはタイプ1思考とタイプ2思考について、より詳しく論じられていたという。そちらを先に読むべきだったかな。

  • 組織における意思決定や判断は、常に不安と後悔と隣り合わせ。なぜ、うまくいかないのか(あるいはそう感じるのか)が、この本を読むとほんの少し理解できる。
    ・一晩寝て明日の朝もう一度考えるべき
    ・自分はいつも同じ人間ではなく、気分や状況が変わると変化するものである
    ・人はアルゴリズム(AIなど)にチャンスを与えようとするが、一度でも間違えると信用しなくなる
    ・意思決定者は自分の主観的な自信を予測の妥当性の証だと勘違いしがち(自己満が最大の敵)

  • なかなかおもしろい内容が書かれているが、僕にとっては少し難しいことも多かった。よって、何度も読み返して自分のものにしていく。
    日頃意識していなかったノイズに目を向け、よりよい成果を上げられるようにする。

  • 人々の行動のバイアス(一定方向に偏ること)に対する研究は多いが、ノイズ(同じ予測に対するバラツキ)に対するものがなく、そこにフォーカスした研究。

  • 大学院で苦戦した統計学についても、このような本を読んでおけば理解が深まったと思った。

  • Audible にて。
    最近よく聞くノイズとバイアス。
    人間の判断が劣る最大の原因はノイズであると言う。

    人間は、最初に人気が出るかどうかでその後の判断が引っ張られる。新製品は最初の1週間で人気が出るようにするべきとのこと。

    AIなどのアルゴリズムは優秀なため、人間の判断よりも精度の高い意思決定をすることができる。
    ではなぜもっとアルゴリズムを使わないのか?といえば、それは人間が自分で決定することに満足感を覚えるからだと言う。
    その快感を得ることで自信を持ってしまうという。
    (それが正しいとは限らないのだが)

    とにかく実験が多すぎる。
    早く結論が知りたいのだけれど…下巻はもういいかも。

  • 個人的まとめ
    下記の記事の力を借りて
    https://www.hayakawabooks.com/n/n99d2e4a9685f

    ▼「NOISE」とは?
    ・意思決定が失敗する理由はバイアスだけではなく、それと同等か、それ以上に影響力の大きな要因=“ノイズ”がある
    ・ノイズ:意思決定や判断時に生じる「ばらつき」
    ・重い量刑を科すことに対して、「あの裁判官は黒人に偏見がある(バイアス)」と、「あの裁判官は軽犯罪に対してもきびしい判決を出す(ノイズ)」
    ・判断を射撃に例えると、以下の通り
     a.すべての射撃が的の真ん中に射抜く→正常な判断
     b.すべての射撃が的の左側の一箇所に集まる→バイアスのかかった判断
     c.すべての射撃が的全体にずれる→ノイズのある判断
     d.すべての射撃が的全体の左側にずれてかつばらつく→バイアスもノイズもある判断
    ・判断のあるところには常にノイズが発生する

    ▼NOISEの要素
    ①レベルノイズ:きびしい裁判官」と「甘い裁判官」のばらつき
    ②パターンノイズ:囚人の保釈審査官は、午前中と昼食後の審査が甘く、昼前と夕方は審査がきびしい
    ③機会ノイズ:判断者の個性や個人的な事情が含まれるノイズ。きびしい裁判官も、高齢女性の軽犯罪には(自分の母親を思い出して)温情を見せる
    →パターンノイズの比重が大きい

    ▼NOISEをなくすには?
    ・よい判断と相関する「高い一般知性」「衝動にとらわれずに熟考する認知スタイル」「開かれた思考態度」を持つ人材が判断をする
    ・相談できる第三者を持つこと
    ・判断を機械(AI)に委ねる
    ・アルゴリズムにバイアスが混入することはあり得るが、人の判断にはそれ以上のバイアスと、加えてノイズが入る。だから機械の方がマシ。
    ・「ノイズ検査(本書の付録)」「判断ハイジーン」「媒体評価プロトコル」を用いる

    ▼「判断ハイジーン」
    ・「ハイジーン」は「衛生管理」を意味し、「判断ハイジーン」は、手洗いといったウイルス感染症対策のように、特定できないノイズという「敵」の発生を未然に防ぐためのもの
    ・判断ハイジーンの6原則
    ①判断の目標は正確性であって,自己表現ではない
    ②統計的に考える
    ③判断を構造化する
    ④直感は最後に一度だけ
    ⑤複数の独立した判断を統合する(群衆の知恵)
    ⑥評価は基準に対する相対的な尺度で

    ・「媒体評価プロトコル」:選択肢の評価を構造的に行う手法。インタビューでいう、半構造化面接ではなく構造化面接。「群衆の知恵(複数人の独立した判断の統合)」を活用。

    ▼客観的無知
    ・「さまざまな偶然の要素が入り込むので先のことはわからない」ということ
    ・客観的無知とノイズによって将来予測は大幅にぶれる
    ・カーネマンによればこのような社会科学における25,000件の調査研究(対象は800万人以上、期間は100年)では、「予測の平均的な相関係数は0.21」

    【思ったこと】
    ・出てきている事例や研究が、答えが明確だったり答えのレンジが決まっているものが多かった印象。例えば、群衆の知恵で出てきた正解の数字を当てる例など。機械(AI)に委ねるのはやはり答えのレンジが限定されていて、尚且つ問いも明確な場合?

  • 手持ち情報の範囲内で直感的予測に方向修正する

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著者プロフィール

心理学者。プリンストン大学名誉教授。2002年ノーベル経済学賞受賞(心理学的研究から得られた洞察を経済学に統合した功績による)。
1934年、テル・アビブ(現イスラエル)に生まれへ移住。ヘブライ大学で学ぶ。専攻は心理学、副専攻は数学。イスラエルでの兵役を務めたのち、米国へ留学。カリフォルニア大学バークレー校で博士号(心理学)取得。その後、人間が不確実な状況下で下す判断・意思決定に関する研究を行い、その研究が行動経済学の誕生とノーベル賞受賞につながる。近年は、人間の満足度(幸福度)を測定しその向上をはかるための研究を行なっている。著作多数。より詳しくは本文第2章「自伝」および年譜を参照。

「2011年 『ダニエル・カーネマン 心理と経済を語る』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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