NOISE 下 組織はなぜ判断を誤るのか? [Kindle]

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  • ■裁判官、保険会社の保険金支払査定者、医師などプロフェッショナルでも、同じ案件、同じ患者でも異なる結論を出すことをエラーと定義する。
    ■エラー(誤差)には、バイアスとノイズの2つがある。
    ■バイアスを取り除いても、ノイズが残る。
    ■専門用語が多く、下巻になると上巻に何が書いてあったのか覚えていない。再度読み直しかと思ったら、下巻の最後にまとめがあったので、ここを読んで再度理解した。
    ■「機会ノイズはなくすことが不可能だと思うが、ガイドラインは窮屈。」こういう話が、この本を読むと意味が分かってくる。

  • 上巻では私達の判断になぜノイズが混入するのかがつまびらかにされた。では、そのノイズと私達はどのように向き合っていくべきなのか。
    下巻では「判断ハイジーン」と著者が命名する方法でノイズを抑える試みがなされる。手洗いがメタファーにあがる判断ハイジーンは、なるほどそれなりに手間はかかりつつも実践する価値がありそうなものだ。
    興味深いのはノイズ抑制によって発生する事象で、ノイズを除去する=ルール化すると考えると、ノイズ抑制を行うことで明確な抜け道ができてしまう。また、過度なノイズ除去は創発も抑制してしまうのではないか、という懸念もあげられる。様々な理由からノイズの除去が一筋縄ではいかないが、かといって放っておいていいものでもない。やっかいな代物である、ノイズというのは。

  • 下巻ではノイズを改善するための具体的な方法論が述べられています。どれも今すぐに会社などで導入できそうな実践的なものばかりです。ノイズを取り除く方策のコストと効果を見極めよ、というアドバイスは素晴らしく現実的です。

    一方で、ノイズの存在を認める、つまり過去の判断がでらためだったことを認めるという前段階の方がハードルが高そうだと思いました。

  • ・自分の判断に主観的な自信があるということは、その正しさを保証するものではない(痛烈)
    ・個々の性格は個性として大事にしたらいいが、それとプロフェッショナルとしての判断を混同してはダメ
    ・バイアスの及ぼす悪影響を考える時は指紋鑑定員の話を引用する
    ・採用や評価においてこの本の知識は確実に転用できる

    「求めるべき人材は自分の最初の考えに反するような情報も積極的に探し、そうした情報を冷静に分析し自分自身の見方と客観的に比較考量して、当初の判断を変えることを厭わない人、進んで変えようとする人である」

  • 本書は、ノーベル経済学賞を受賞したダニエルカーネマンの著書で、人間の意思決定のばらつきを取り扱っています。

    人間の意思決定は、ノイズ(ばらつき)とバイアスに影響されています。
    バイアスについては、前著のファスト&スローで解説されており、本書では、ノイズについて解説されています。

    私達の身の回りには、様々な判断のばらつきが転がっています。
    人事評価、医師の判断、裁判の量刑‥同じような事案の裁判でも、裁判官により刑期が異なったり、同じ裁判官でも時間や天気により刑期が異なったりするそうです。

    上巻では、どんな時にばらつきがあるのか、下巻ではばらつきの原因とその対策を解説してくれています。

    判断のばらつきを抑えるには、

    複数の独立した判断を統合する。
    統計的に考える。
    判断を構造化する。
    評価基準を設ける。

    等があるそうです☺

    大事な判断には、バイアスもノイズも除いた正しい判断をしたいと思う一方、そこがまた人間味があるところなのかも、と思ったりも…

  • 上巻ほどには面白さを感じませんでした。裁判や医療では再現性のある判断というものがなされてほしいですが、ビジネスなんかはある意味ノイズを楽しみたい面もあったりします。

  • 個人的まとめ
    下記の記事の力を借りて
    https://www.hayakawabooks.com/n/n99d2e4a9685f

    ▼「NOISE」とは?
    ・意思決定が失敗する理由はバイアスだけではなく、それと同等か、それ以上に影響力の大きな要因=“ノイズ”がある
    ・ノイズ:意思決定や判断時に生じる「ばらつき」
    ・重い量刑を科すことに対して、「あの裁判官は黒人に偏見がある(バイアス)」と、「あの裁判官は軽犯罪に対してもきびしい判決を出す(ノイズ)」
    ・判断を射撃に例えると、以下の通り
     a.すべての射撃が的の真ん中に射抜く→正常な判断
     b.すべての射撃が的の左側の一箇所に集まる→バイアスのかかった判断
     c.すべての射撃が的全体にずれる→ノイズのある判断
     d.すべての射撃が的全体の左側にずれてかつばらつく→バイアスもノイズもある判断
    ・判断のあるところには常にノイズが発生する

    ▼NOISEの要素
    ①レベルノイズ:きびしい裁判官」と「甘い裁判官」のばらつき
    ②パターンノイズ:囚人の保釈審査官は、午前中と昼食後の審査が甘く、昼前と夕方は審査がきびしい
    ③機会ノイズ:判断者の個性や個人的な事情が含まれるノイズ。きびしい裁判官も、高齢女性の軽犯罪には(自分の母親を思い出して)温情を見せる
    →パターンノイズの比重が大きい

    ▼NOISEをなくすには?
    ・よい判断と相関する「高い一般知性」「衝動にとらわれずに熟考する認知スタイル」「開かれた思考態度」を持つ人材が判断をする
    ・相談できる第三者を持つこと
    ・判断を機械(AI)に委ねる
    ・アルゴリズムにバイアスが混入することはあり得るが、人の判断にはそれ以上のバイアスと、加えてノイズが入る。だから機械の方がマシ。
    ・「ノイズ検査(本書の付録)」「判断ハイジーン」「媒体評価プロトコル」を用いる

    ▼「判断ハイジーン」
    ・「ハイジーン」は「衛生管理」を意味し、「判断ハイジーン」は、手洗いといったウイルス感染症対策のように、特定できないノイズという「敵」の発生を未然に防ぐためのもの
    ・判断ハイジーンの6原則
    ①判断の目標は正確性であって,自己表現ではない
    ②統計的に考える
    ③判断を構造化する
    ④直感は最後に一度だけ
    ⑤複数の独立した判断を統合する(群衆の知恵)
    ⑥評価は基準に対する相対的な尺度で

    ・「媒体評価プロトコル」:選択肢の評価を構造的に行う手法。インタビューでいう、半構造化面接ではなく構造化面接。「群衆の知恵(複数人の独立した判断の統合)」を活用。

    ▼客観的無知
    ・「さまざまな偶然の要素が入り込むので先のことはわからない」ということ
    ・客観的無知とノイズによって将来予測は大幅にぶれる
    ・カーネマンによればこのような社会科学における25,000件の調査研究(対象は800万人以上、期間は100年)では、「予測の平均的な相関係数は0.21」

    【思ったこと】
    ・出てきている事例や研究が、答えが明確だったり答えのレンジが決まっているものが多かった印象。例えば、群衆の知恵で出てきた正解の数字を当てる例など。機械(AI)に委ねるのはやはり答えのレンジが限定されていて、尚且つ問いも明確な場合?

  • 人間や人間に構成された組織の判断において、判断の偏りやミスは必ずある。上巻ではその実例について述べられていたけれど、下では一歩踏み込んで、ではそのミスを誘発するノイズやバイアスをどうやって防ぐかが語られる。

    人間はミスをするということは昔からわかっていることであり、対策にも同じくらい長い歴史がある。でもねぇ、実際に言われてみると妙に納得するんだけど、その対策は評判悪いんだよね。ノイズを減らすとはすなわち、ガイドラインやアルゴリズムに頼るということでさ。それはつまり、いわゆるお役所仕事のさらに徹底したものということになるからだ。

    お役所仕事、評判悪いよね。でもそもそも人情自体がノイズなわけだから、それを減らそうとすること自体はまぁそういう結論になることもわかる。また、ただノイズを減らしたアルゴリズムやガイドラインに徹したらいいかといえば、そもそも人間が作ったガイドラインにバイアスがかかっていたりして、なかなか一筋縄ではいかない。

    それでも著者は、少しでもノイズやバイアスを減らすべく、提案を行ってくれている。統計的な部分は、ちょっととっつきにくくはあったんだけどさ。問題意識として持っていないとけないことだし、このあたりの認識は魔法を求めるのではなく、たゆまぬ努力こそが求められるんだろうなあ、なんてことを思った。

  • やっぱり「ファスト&スロー」読んでいれば大きな学びはないかも。

    自分の判断に自信があって、自分の結論とは違う筋書きを想像できないとき、他人も自分と同じ結論に達していると決めつけてかかりやすい。その場合に相手が理解できないといったマインドが生まれるんだなと思った。

    「超予測者」は両国の紛争の確率を聞かれた時、両国の今を調べるのではなく、過去の国境紛争が武力衝突に発展したケースはどれくらいか調べる。そうやって基準率を探し予測の精度をあげている。は凄く共感した。

    反対意見もどんどん取り入れて考えをアップデートし続ける。永遠のベータ版。にも共感。

  • 判断における個人差・恣意性の問題点についての論考である。ノイズの発生しにくいルールを作る努力をすべきだ。ということが主論である。分量が多いため、かなり飛ばし読みをした。

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著者プロフィール

心理学者。プリンストン大学名誉教授。2002年ノーベル経済学賞受賞(心理学的研究から得られた洞察を経済学に統合した功績による)。
1934年、テル・アビブ(現イスラエル)に生まれへ移住。ヘブライ大学で学ぶ。専攻は心理学、副専攻は数学。イスラエルでの兵役を務めたのち、米国へ留学。カリフォルニア大学バークレー校で博士号(心理学)取得。その後、人間が不確実な状況下で下す判断・意思決定に関する研究を行い、その研究が行動経済学の誕生とノーベル賞受賞につながる。近年は、人間の満足度(幸福度)を測定しその向上をはかるための研究を行なっている。著作多数。より詳しくは本文第2章「自伝」および年譜を参照。

「2011年 『ダニエル・カーネマン 心理と経済を語る』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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