映画を早送りで観る人たち~ファスト映画・ネタバレ――コンテンツ消費の現在形~ (光文社新書) [Kindle]

著者 :
  • 光文社
3.93
  • (49)
  • (79)
  • (47)
  • (6)
  • (1)
本棚登録 : 666
感想 : 85
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・電子書籍 (295ページ)

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 結構耳が痛い話がちらほら!
    自分自身は、映画は『基本』飛ばさない派ですが、『基本』といったように、経験はあります。
    結構、共感性羞恥が酷くて、主人公が恥をかくシーンが耐えられないときがあるんですよね……。映画館だったらもちろん飛ばせませんが、動画配信サイトではやったことがある……という懺悔。
    ストレスから逃げたい、感情の消費を抑えているというところでは、自分に当たっているといったところでしょうか。

    現在、32歳。Z世代とは、世代が違いますが、タイパを気にする気持ちは本当に分かります。
    世の中には、面白いという話題の作品、必見といわれる作品が情報としてどんどん出てくるのに、すべて網羅するにはあまりにも時間が足りない!

    コンテンツに振り回されているという自覚はわりとあります。グサグサ。
    作者は、映画をとばしたり、早送りする人たちに理解を示そうとする結論の持っていきかたをしていますが、(それでも、と疑問を最後には投げかけていますが)、自分自身はひとつの映画それぞれにもっと心を砕いて、鑑賞したいなと思うようになりました。
    ありがたい話です。

  • 筆者の主張が最後まで未練たらしいというか、倍速否定派に鞍替えしたんだけど、倍速派の意見も分からざるを得ないというような感じで続くのが、まどろっこしく感じた。
    両面から論じているのは良い。どちらも主張はあって良いと思う。
    終章で書かれていた、歴史を振り返るところで、テレビで映画を見るなんてとか、スマホの小さい画面で見るなんてとか、そういう反対意見も色々あったけど、時代の変化で受け入れられてきたよねっていう話があって、倍速やスキップもその一種なのではということですごい納得した。全ては時代の変化とニーズに合わせた結果。
    個人的には、倍速視聴はするけど、スキップはモノによる。話題についていくためというよりは、収集癖のために、残された人生でいかに多くのコンテンツを消費できるか、そういうモチベーションな気がする。一方、作品を浅くしか理解出来てないのも確か。楽しければよい、と割り切って消費したい。

  • SNSで取り上げられていたので、読んでみました。

    多方面からの考察が良くできた良書でした。

    私は自称シネフィルで、倍速で見るなら、途中で見るの止めるか、見なきゃいいじゃん。と読む前から思ってるオールド・ジェネレーションな者です。

    速読や演劇との違いなどの記述で、この行為に何となくイラッとする感覚がどうしてなのかが、腑に落ちた部分もありました。

    見たい部分しか視聴しない。自分が好きなものしか見たくない。というあらかじめ自分の嗜好に沿った情報しか並べられてない状況しか知らない世代って、怖いと思ってしまった。

    他人は自分とは違う。という認識薄いんだろうな。

    すごく簡単に言うと、視聴する側のセンスや感度が落ちてるんだな。と思った。
    勿論、ネットでの配信全盛期になって、質はともかく映像の量が増えたのは事実だけど。

    あとは、お金と時間が全くない。むしろ直接の要因としては、こちらの方が強そう。

    映像って、自覚してるよりずっと情報量が多いから、疲れてたりするとそんなに咀嚼出来ない。
    そこを分かってるか、分かってないかで、する行動パターンが違いそう。

    あとは、消費行動で「観たい」のではなくて、「知りたい」だと倍速再生しがちだと。
    「鑑賞」したい人と「消費」したい人の違いでもあると。

    コミュニケーションツールとして使うだけだから、というのも別に昔からあるけど、いちいち見たくもないドラマや映画の話降ってくる人って、センスとか嗜好が自分とは違う・合わない。と感じてたから、こういう行動が理解出来ない自分が居ました。

    LINEやSNSで四六時中繋がってる現代は00年代までとは違う。とも書かれていたけど、それだけSNS隆盛なら、自分の嗜好に合うコミュニティ複数に所属すればいいだけ。って思うのも年寄りの発想なんだろうか。

    他人に寄せすぎようとする行動自体に、イラついてるんだな。読んでて、自分ではそう感じました。

    あえて「見ない」と言う選択肢も入れた方が、生活の質が上がりそう。

    効率良く見る為の手段として
    倍速再生するんじゃなくて、寧ろ如何に映像を見ないかとか、見る物の精査を極める。とかの方向に行った方が、多分幸せになれそうな気がするな。
    倍速再生には、基本反対の身としては。

    もし、自分がクリエイターだったら、倍速してたら、全く理解できない。作品を作りたいって思うな。むしろ倍速推進派に見て欲しくないっていう隠れ意図含んで。

  • 昔の作品に比べて間合いとか行間とかから読み取らせる作品が減っているとは感じていた。
    また、あらすじとか最後まで倍速で流し見して、気に入れば最初から観るスタイルは自分の中で衝撃的で。
    タブレット環境やSNSの波及、共感至上主義からくる視聴者の性質の変化に合わせた結果、そうなるのは納得はできるけど情緒は置いてけぼりになるなぁと寂しくなる。
    同じ理由で本も『趣味人の趣味』になるんだろうか。

  • 2024.03.16 Audibleにて

    「映画を早送りで見る」から、こんなに広げられるの凄いな

    1意見として読む分には面白いかな
    映像を作る側、携わる側からの意見って印象だった
    私も否定はしないけど、理解はできないかな
    なんか、私たち人間じゃん!って思う
    情報処理能力なんて、人工知能に任せとこうやっていうな

    コンテンツとしてにしても、なんか、そこまでしないと人との会話って難しいもんなんかな?
    若い頃なんて、共通の話題なくても、箸ころがっただけでも笑えるっていうか、なんでも面白い時期な気がするんだけど
    年齢いっても、会話に入れんの、時々ラッキーとか思ったりする。
    いつでもオンモード疲れるじゃんね。
    とりあえず、「へぇ」って言っときゃいいやんって思うの私だけ?

    見たり聞いたりしてて、感情とか考察とか、沸き起こってこんのかな。差別とかないっていうから、感情どこかに置いてきたのかな?
    でも、差別ないといいつつ、いじめはなくならない事実。世知辛い。

    私は、「鬼滅の刃」見てないんだけど、それは、ちょっと見てアニメっぽくないなって言うのと、人気があったからなんだけど、この本聞いて、「情報過多」だったのかなって思った。なんか、見てて疲れたんだよね。
    私はコンテンツというより、感情ありきで見る目的だから、自分の感じるのとは余計な情報があると疲れる。
    子供の頃の、国語の問題みたいな感じかな。なんで、読み手が読みたいように読んじゃダメなんだって言う。解釈押し付けんなよっていう気持ち悪さよね。
    そこ、妙に納得したし、そこに気付けなかった自分が少し悔しかった。
    自分の天邪鬼な部分が強いと思ってたからな~もうちょっと、見たくない気持ちについて、考えてみれば良かったなって。

    この本ってさ、あれよね、早送りする人は読まないんだろうなーって、
    読んで欲しいし、読んだ上でどう感じたか聞いてみたいけどなぁ

    きいえるうちは、あれこれ考えたことあったんだけど、忘れちゃった。
    やっぱり、メモ取るの大事よね~

  • Audibleで聞きました
    聞けば聞くほど趣味なんだから好きにしたらええやんという気持ちになりました。
    4章くらいまでは倍速が良くない様に言っているように感じました。
    倍速と通常速度で異なる視聴体験があることを調べた実験とかが書いてあれば、なるほどと思ったかもしれませんが特にそういうことはなく、一部の人がどういう方法で視聴しているか、そうするのはなぜか考察するという内容でした。

    • ギガゴさん
      何この本ヤバそう笑
      個人的にはコメディ映画は倍速で見ると面白く、法廷映画やミステリ映画は倍速で見るほど理解度が薄くなる。
      倍速は製作者からし...
      何この本ヤバそう笑
      個人的にはコメディ映画は倍速で見ると面白く、法廷映画やミステリ映画は倍速で見るほど理解度が薄くなる。
      倍速は製作者からしたら冒涜とも言われるけど、本当に面白かったら倍速しないでもう1回見たいっていう気持ちになるから、単に合わなかったんだね、ってことで終わるんよなー
      2022/11/28
    • だちおくんさん
      コメディ映画はやったことなかった!
      ジェットコースターみたいになりそうだね!
      今度やってみよう笑 
      お気に入りを見つける究極の時短方法だね!
      コメディ映画はやったことなかった!
      ジェットコースターみたいになりそうだね!
      今度やってみよう笑 
      お気に入りを見つける究極の時短方法だね!
      2022/11/29
  • タイトル以上に、いろんなことを考えさせられる本で、とても面白かった。
    メディア論、インターネット論、コミュニケーション論、若者論、いろんな顔を持つ本書。
    インターネットがもたらした即時性が、私たち人間にもたらしたものって、なんなの?って考えさせられた。

    そもそも、なぜ早送りをしてしまうのか?
    サブスクによる無料で見られる動画の「消費」、時間がない中効率的な「話題作り」、不要なものを「取捨選択」、といった複数の話題を、豊富なインタビューで、さまざまな観点から分析している。

    読んでいると段々とこの先の社会が不安になってくる。

    コンテンツの多さ、時間のなさに疲れる人々…。
    話題作りのために消費される映画やアニメ、ドラマたち。
    Z世代たちは常に発信しており、楽しそうであるが、楽しいこと、好きなこと、快感だけを追い求める姿は、少し怖い。

    傷ついたり、予想外のことを嫌う人が全てではないにしろ、そんな人が増えていけば、世の中が画一化するだけではないだろうか。
    誰かを傷つけるイレギュラーを許さない社会。
    誰もが自分の好きに生きられる社会って、そんなにいいものでもないのかもしれない。

    この時代の早送りをする人たちに一定の共感は示しつつ、それでも、早送りに拒否感を拭いきれない筆者に同意せざるを得ない。

  • 私自身、映画を早送りで見るなんて…と反感を抱く側の人間だったが、この本を読んで、早送りする側の考えも知る事で、知見を広げる事ができた。

    この本を読んだ後では私はしないけれど、倍速視聴する側にも言い分があって、それも必然だなと感じた。

    コンテンツとして消費するか、芸術として見るかの違いであって、そういえば私も恥ずかしながらAVは適当な絡みは早送りして、必要なシーンだけ搾取していたなと思い返した。

    単に映画の話だけでなく、昨今のアニメやラノベが、どのように構成されているかも気づけて得る事の多い本だった。

  • 映画を早送りで見る人たち。
    僕は映画を早送りで見たことがないけれど、アニメや YouTube の動画は今でも早送りで見たり、次飛ばししたりしていることが(残念ながら)ある。だから、この本に書かれていることは自分は無視してはいけないものであった。
    本書の内容はとてもよく、最後の結論への着地とそれまでの思考過程はみごとであった。
    時代の変遷というか、そういうものを感じるとともに、自分もその波で変化したりしているのだなぁ、とそのことに少し無自覚でいた自分にとってはたまに突き刺さる文言もあった。しかし、やはり映画は早送りで見たいとは思わないという筆者の文言にはうなづける。

  • 職場で接する大学生たちのいまの感覚を理解したくて読みました。
    調査力、分析力が半端ない。とても面白く、職場でも共有しました。おすすめです。

全85件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1974年、愛知県生まれ。ライター、コラムニスト、編集者。横浜国立大学経済学部卒業後、映画配給会社のギャガ・コミュニケーションズ(現ギャガ)に入社。その後、キネマ旬報社でDVD業界誌の編集長、書籍編集者を経て、2013年に独立。著書に『セーラームーン世代の社会論』(すばる舎リンケージ)、『ドラがたり のび太系男子と藤子・F・不二雄の時代』(PLANETS)、『ぼくたちの離婚』(角川新書)、『「こち亀」社会論 超一級の文化史料を読み解く』(イースト・プレス)、『オトメゴコロスタディーズ フィクションから学ぶ現代女子事情』(サイゾー)、『映画を早送りで観る人たち ファスト映画・ネタバレ――コンテンツ消費の現在形』(光文社新書)、『ポテトチップスと日本人 人生に寄り添う国民食の誕生』(朝日新書)がある。

「2023年 『こわされた夫婦 ルポ ぼくたちの離婚』 で使われていた紹介文から引用しています。」

稲田豊史の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×