- Amazon.co.jp ・電子書籍 (642ページ)
感想・レビュー・書評
-
壮大だった。兎にも角にも壮大な物語。
国家、思想、宗教、都市、戦争、勝利、敗戦、希望、絶望、犠牲、建築、満州、そして地図と拳。
人は限られた時間で夢をみる。
叶えたもの、叶えられぬもの、等しく迎える死。
私は何を思う。死の先に何を思う。死の先に続く時間をみてみたい。天命の先に辿り着きたい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
日露戦争後の、第二次世界大戦へと進む日本と満州/ハルピンで活動した人々の物語。
「燃える土」を求め、満州の李家鎮という町にたどり着く。
時代が移り戦況も変化し、主要人物が命を落とす中で、本作の主人公といえるキャラクターのは”細川”という名前の一人の将校。初登場時は通訳としての立場だが、満鉄に務め、その後は「戦争構造学研究所」というシンクタンクを結成する。独特のカリスマ性で、多くの若き将校や科学者たちを惹きつける。
軍事ものという雰囲気はなく、新たな土地に街を作ること、その地図を作ること、象徴となる空間を街に作ること、そのロマンに心奪われた人々と都市の変遷が中心。石炭を求め開拓した日本軍が、さらに高効率なエネルギーである石油の確保のために奔走する様が描かれる。資源争奪戦争、という面が伺えるが、それぞれの求める答えを得るため、地政学と政治の力学の中に翻弄された人々が実に魅力的。
歴史考証もかなり時間をかけたよう。登場人物の多さには面食らう部分もあるが、個々の人物に信念があり、魅力的。読み応えがあるし、ハルビンの地に行ってみたいと思った。 -
600ページ超でかなり長いんだけど、全然長さを感じず、すごくおもしろかった! 最初のあたり、神話的というか奇想な夢みたいな部分もあって、個人的に、苦手かもと思ったけど、以降そういう部分は少なくなって気にならなくなった。日清戦争後から第二次世界大戦での日本の敗戦後までを、満州を舞台に描いた歴史小説、っていっていいと思うけど、歴史に疎いわたしでもすごくおもしろく読めた。学校で、何年に日露戦争が起きてー、何年に講和条約がー、とかって習っても「事項」とか「単語」としてしか頭に残っていなかったのが、なるほどそういういきさつがあってこうなって、こういう意味があったのか、それが今につながっているのか、っていうのがわかる感じ。
どんなふうに戦争がはじまり、実際どんなふうにどんな思いで普通の人が戦地で戦い、人を殺すのか、っていうのがわかるっていうか。(わかりたくないけど、わかってないかもしれないけど、状況としてそうなるんだなっていう想像がつくというか。)
でも、すごく賢くて冷静で日本の敗戦を予想していた人もいたのは、わたしにはなんだか救いのように思えた。そういう人がいても戦争を止められないっていうのも悲しいけれど。
「地図」や「建築」や、街や都市をつくるということ、についても、普段わたしはほとんど関心ないけど、読んでいてすごく興味深かった。
あと、ちょっと考えたのは、人は純粋に、楽園をもとめて新しい土地をさがしにいって楽園をつくろうとするけど、人が集まるとそこに欲がからんできて争いが起きる、みたいなこと。
ラストもよかった。敗戦ですべてを失ったけれど、さわやかで希望があって。「すべてに謝った」っていう文章になんだかぐっときた。
読んでよかったと思った。
なんだか急にもっと現代史の歴史小説みたいなのを読みたくなってきた。
あと、この著者についてはほぼ知らなかったんだけど、ほかの作品も読んでみたい。(けど、次作は突然クイズの話なのね)。 -
分厚い本でしたが、なんとか読み進めることができ、登場人物をメモしながらつないでいけば読みやすく、つながる度に感動します。
戦争の話だけとは違って、地図の見方や建築に対するこだわりも含まれて、建築好きなわたしは楽しめました。
そこに資本主義が押し寄せてきても、それを阻止する戦いも含まれていて、単純な領土争いではありませんでした。
争いをやめることができなくなってしまった日本人側の立場、中国人でもソ連人でもない元々住んでいた人たちの立場、いろんな角度から想いを巡らせて、多様な考え方を教えてもらった気がしました。
日本人同士や支那人同士の仲間争いは命をかけた心情が表現されてハラハラドキドキします。
最後の二人の再会は記憶に残るシーンでしたが、疑問が残り何度か読みたくなります。
なのでまた読みたいと思います。 -
いや~、ゲームの王国から更に濃密で重厚なストーリー。圧巻です。地図に、建築に、そして戦争にのめりこんでいく人々の熱い生きざまがドラマチックで胸に残ります。歴史がそして過去が記されたもの、いろいろなものがあると思いますが、地図と建築物もその一つ。建築とは何かに対して出した明男の答え「建築とは時間である」は納得です。そして、終盤での細川の言葉「見つかってまずいものがあったら、捨てろ」。これを聞いて、そういえばこの物語、序盤で同じようなシーンがあったよなと、長い時間を振り返ってしまいました。きっと、世界を開くのは拳ではなく、人の生き続ける力なんでしょうね。
-
壮大すぎる。