太陽の子 日本がアフリカに置き去りにした秘密 (集英社学芸単行本) [Kindle]

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  • 「1970年代、地下資源を求めてアフリカのコンゴ(当時ザイール)に進出した日本企業の従業員と現地女性との間に1000人以上の子供が産まれ、その多くが日本人医師や看護師によって殺されたらしい」、という報道が2010年頃にフランス、イギリスのメディアからネットにあげられました。当時アフリカ駐在員として南アフリカ共和国に赴任していた著者は関係者への取材を開始し、その実像に迫ります。
    日本企業がその時代、コンゴに進出していたこと、そして当時の従業員と現地女性との間に生まれた子供達が現在も数多く暮らしていることを突き止め、彼らへの取材がスタートします。子供たちの多くは40代。彼らが産まれる直前、あるいは生後間もない時期に父親たちは日本へ帰っていました。「自分の父親に会ってみたい」という素朴な気持ちに著者は寄り添います。当初「嬰児殺し」の真偽を確認することが目的であった著者ですが、日本人の父親を持つ多くの子供達の「父親に会いたい」という気持ちを叶えようと取材対象は現地で布教活動をしている日本人シスター、当時進出していた日本企業の後継会社広報、赴任していた日本人医療関係者、コンゴ大使館など多岐に及びます。そして見えてきた「嬰児殺し」の報道の裏側…。
    著者が真実に迫っていく過程の描き方が大変丁寧であると同時に、コンゴという国がこの40年間に歩んできた非常に厳しい実情、そこで父親が不在となった子供達が生きるために直面した日本では考えられないような厳しい現実も描かれており、「コンゴに残された子供達の実情」を軸に、非常に幅広い内容のノンフィクションでした。取材後半で「父親の消息を知りたい」という子供達の気持ちを叶えることはすなわち、彼らの父親たちが日本で彼ら以外の家族との暮らしを営んでいる事実を伝えることであり、それは本当に子供たちにとって幸せな事なのかどうか、葛藤に苦しみながら取材を続ける著者の気持ちに共感を覚えながら読み終えました。

  • わずか50年前にこのような事が、日本人により行われていたのは衝撃でした。軍隊も大企業も大学も体質は、同じに感じました。

  • 日本鉱業が70年代にコンゴでの鉱山開発をしていたときに駐在員と現地人との間に生まれた孤児を取材していく。
    その内容は事実だと思われるが同時に報道された医者が子供を殺していたということは偽りのように思え安堵した

    当時も今もいかに過酷な生活なのかがしっかりと分かる内容


  • コンゴの資源に焦点を当てたルポは、現地の状況を生々しく伝え、考えさせられる内容。ただ、コンゴ人と日本人の子供たちの視点が均等に扱われていないと感じる。特に、父親に会いたがる子供たちに焦点を当てがちで、会いたくない子供たちの声が不足している。日本鉱業が人道的な対応を表明したことは評価でき、従業員が外部の人と恋愛したことを企業に対応させるのは難しいだろう。やはり全責任は父親にある。父親の取材ができなかったことがこの書籍の内容をグラつかせてしまっている。しかし、この本を通じて現地に残り続けている田邊さんと佐野さんの活動もしれたし、父親に会いたがってる子に対し、父親は向き合うべきだと感じられたので、記者の活動は素晴らしいものである。この本を通じて、私も何か行動できないか考えている。それにしてもBBCやフランス24の影響力はほんと怖いですね。。

  • 物心ついたときには父親はいなかった。周りの子と違って肌が白かった。イジメられた。母親から父親は日本人だと聞かされた。母は父を愛してた。日本人のような名前は父親がつけた。日本人の父親に会いたい。僕の51%は日本人だ。僕を日本人だと認めてくれ。

    アフリカの資源大国で最貧国の一つ『コンゴ民主共和国』ここに「日本人の父親とコンゴ人の母親から生まれ、コンゴに置き去りにされた子どもたちの会」というのがある。かつてコンゴの鉱山開発企業に赴任した日本人従業員と地元の女性との間に生まれた子どもたちだ。その数は50〜200人とも言われる。その後鉱山会社は不採算のためコンゴを撤収するが日本人の父親も帰国した。稼ぎ手をなくした母親と子どもは誰もが困窮に陥り辛酸をなめた。これだけでも日本人父親の無責任ぶりを攻めたくなるが、ことはそれだけではなかった。フランスの報道が流したショッキングなニュースがあった。日本人とコンゴ人の赤ん坊が日本人医師により秘密裏に殺されていたと報道していたのだ。この報道に違和感を覚えたアフリカ特派員の著者(三浦英之)が調査を開始していく。コンゴの「日本カタンガ協会」代表の田邊好美、そして「アスンタ」と呼ばれる現地の日本人シスター「佐野浩子」の協力を得た三浦は丹念に少しずつ真実に近づいていく。残された子どもたちの証言、父親に対する感情、日本企業、日本大使館への聞き取り、当時の現地従業員、日本人従業員の証言。果たしてフランスの報道は虚偽なのか、事実なのか。日本企業の責任は?子どもたちは日本人の父親と会えるのか?
    ミステリーのように伏線が少しずつ回収され事態は意外な方向に展開していく。著者が受けたトラウマをバックに真実の探求を続ける渾身のルポルタージュ。

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