- Amazon.co.jp ・電子書籍 (266ページ)
感想・レビュー・書評
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文明が崩壊し、荒廃した世界。アメリカのある地域から、ひたすら道を南下する父と息子。
核戦争かなにかが起こったかのように、日が差さず、暗く淀んだ世界。数少ない生き残りの多くは、食糧を奪い合い、カニバリズムに走る人々もいる。
少年とその父はスーパーマーケットのカートを引き、時折食糧を見つけ、生き延びる。時折他者と出会い、拒絶し戦う父と、救いを求める息子。そして海にたどり着く。
とにかく暗くて救いのない作品の中、他者に手を差し出すことを厭わない息子はナイーブすぎるも唯一の眩しさ。
キャラクターに名前がないのも特徴的。記憶も希望も薄れていく父の感情描写が印象的。世界に感情を分かち合える人がいなくなったとき、”美しい”という感覚は存在するのだろうか?と疑問がわきました。
エンタメ要素には欠けるので、面白かったかと言われると微妙です。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
読み進むのがこわい。しかし途中ではやめられない。結末がこないでほしい。章立てもなくて すすんでいくしかない。今だからこそ この世界を破滅させてはいけない
おそろしい傑作! -
わかった
何度も登場するこの言葉。子どもは本当によく口にする。少なくともうちではよく聞いた返事だった。
なので、とても先に楽園が待っているとは思えないこの旅路のなかで少年がこの言葉を口にする度に、胸が締め付けられた。
★
空には暗雲がたれこめ、気温は下がりつづける。目前には、植物も死に絶え、降り積もる灰に覆われて廃墟と化した世界。そのなかを父と子は、南への道をたどる。掠奪や殺人をためらわない人間たちの手から逃れ、わずかに残った食物を探し、お互いのみを生きるよすがとして――。
世界は本当に終わってしまったのか? 現代文学の巨匠が、荒れ果てた大陸を漂流する父子の旅路を描きあげた渾身の長篇。ピュリッツァー賞受賞作。
解説:小池昌代